“日本はじまりの地”が世界遺産に--。先月26日、韓国で開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、飛鳥時代の遺跡群「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県橿原市、桜井市、明日香村)の世界文化遺産登録を決めました。歓喜に包まれる現地を歩きました。 晴天に恵まれた8月上旬、向かったのは、日本初の本格的都城であった藤原京の中心地・藤原宮跡(橿原市)。かつて壮麗な宮殿がそびえたこの地は、周囲に高い建物がなく、万葉集に詠まれた大和三山を望む緑豊かで開放的な場となっています。大極殿などの位置を示す朱塗りの列柱(レプリカ)を眺めていた地元の70代男性は「この見慣れた風景が世界遺産になったと思うと感慨深い」と目を細めます。 続いて、当時絶大な権力をふるった蘇我馬子の墓とされる石舞台古墳(明日香村)へ足を運びました。総重量約2300トンの巨石30個を積み上げた日本最大級の横穴式石室は、内部に入って巨大な石組みに触れることができます。建築の労苦に思いをはせていると、来訪者にアンケートを行う親子の姿が。夏休みの自由研究で東京から訪れたという小学生の男の子は「どうやって大きな石を積んだのか。自由研究の発表を頑張る」と笑顔で語っていました。 このほか、明日香村には、大化の改新の舞台である飛鳥宮跡、壁画「飛鳥美人」で有名な高松塚古墳、天文図などが描かれた壁画があるキトラ古墳など数々の史跡が残っています。 こうした遺跡や景観が今日まで守られてきた背景には、古都保存法(1966年制定)の存在があります。同法は橿原市など対象自治体の一部エリアで土地開発を規制しています。歴史的風土が村全体に広がる明日香村では、明日香法(80年制定)に基づき、村全域を規制。明日香法では、歴史風土に調和した営農環境の整備や住宅・道路の改修などを国が財政支援することも定められており、歴史の保存と暮らしを両立させ、原風景を守る基盤となっています。 ■地元の経営者「恩返しが使命」 世界遺産登録を受け、街頭には横断幕が掲げられるなど地域一帯が祝賀ムードに包まれるとともに、構成資産の保全に汗を流してきた地元住民にも喜びが広がっています。 明日香村で金属加工業を営む辻正道さん【写真】もその一人です。「村への恩返しが自分の使命」と語る辻さんは、美しい史跡や里山を気持ちよく訪れてもらおうと、地域の若者たちと共に草刈りなどに従事してきました。本業である金属加工技術を活かし、青龍など四神をあしらった記念メダルの製作にも励んでいます。「住民や観光客も含めて、みんなが笑顔になれるよう、これからも活動していきたい」と力を込めていました。 自治体の取り組みも進んでいます。「飛鳥・藤原」の歴史を学べる県立万葉文化館には、VR(仮想現実)体験コーナーが新設されており、高松塚古墳の石室内を再現。古墳の内部にいるような臨場感を味わえ、鮮やかな壁画を間近で観察できます。 また、明日香村では、歴史的景観を損なわずに円滑な移動手段を確保するため、ガイド付き電動小型自動車「グリーンスローモビリティ」の運行が始まっています(8月は運休)。さらに古民家を活用したカフェ「明日香スタンド」、レストラン併設型の宿泊施設「ブランシエラ石舞台テラス」などが誕生し、歴史空間に溶け込む滞在環境が整えられています。 現地でガイドを務める男性は「登録はゴールではなくスタート。世界中から訪れる人々を温かく迎え、歴史の魅力を語っていきたい」と決意していました。 ■公明、一貫して後押し 公明党は、日本の古代国家形成の軌跡を未来へ継承していくため、「飛鳥・藤原の宮都」の保存や世界遺産登録を一貫して後押ししてきました。 多くの遺跡が集まる明日香村の歴史的風土の保存については、元公明党国会議員の森本晃司氏(故人)が長年にわたり推進。議員勇退後も、同村の観光協会でボランティアガイドを務めました。党奈良県本部(代表=大国正博県議)も、国会議員と協力して取り組んできました。 世界遺産登録に向けては、党内に「明日香村の保存・整備プロジェクトチーム(PT)」を設置。元公明党衆院議員の漆原良夫氏や北側一雄氏、中道改革連合の浮島智子衆院議員らが地方議員と連携しながら現地を調査し、課題を把握しました。そして、遺跡の修復管理支援や世界に向けた価値の発信などを政府へ強く働き掛けてきました。 登録が決まった後も、オーバーツーリズム対策を進めつつ、周遊観光の推進で地域経済の活性化を応援しています。 ■官民一体で魅力高める/奈良・明日香村、森川裕一村長 世界遺産登録が決まった瞬間、村民をはじめ、関係者の皆さまが喜ぶ姿を見て、心からホッとしました。熱心に応援していただいた公明党の皆さまに感謝しています。しかし、登録はあくまで村を良くするための手段です。村民が地域に「誇り」を持ち、ここで生きることに満足感を得られる村にしたい。そして村を離れた若者が戻って活躍しようと思える地域をつくりたい。それが私の目標です。 一方で来訪者の増加に伴うオーバーツーリズム(観光公害)などへの対応は不可欠です。公共交通の利用を促して渋滞を抑制するなど、村民の生活を守りつつ質の高い観光を楽しめる体制整備を進めます。民間企業との新たな特産品作りも動き出しています。今後も官民一体となり、豊かな村づくりに力を尽くします。