1970年代から80年代にかけて流行した「ディスコ」は時代を経て、再びシニア世代を中心に人気を集めています。東京都目黒区の主催で行われたダンスイベント「メグロダンスコネクション」の一環で企画された「シニアディスコ」の会場を訪れました。
今月1日、同区の複合施設「めぐろ区民キャンパス」に懐かしくもエネルギッシュな音楽が響き渡ります。ミラーボールの輝く会場で踊るのは、かつてディスコを楽しんだシニア世代です。参加人数は約50人に上り、マイケル・ジャクソンやABBA(アバ)といった往年のダンスナンバーに青春時代を思い出しながら、1コマ30分を2回、リズムに合わせて体を揺らします。
曲ごとに決まった振り付けはないものの、前方で軽やかに踊る参加者に合わせ、周囲が吸い寄せられるようにそろいのステップを踏みます。腕を振り上げるタイミングが同時になるなど、自然と一体感が生まれていました。
区内在住の久保田多鶴子さん(63)は、「シニアディスコ」に初参加しました。「若いときはよく六本木のディスコに通ってました」と当時を振り返ります。踊り終わった後、「あの頃を思い出して、身も心も若返った気持ちです!」と明るい表情で話していました。
このイベントは、新しい友人づくりの場にもなっています。この日が初対面の60代女性の“3人組”は「近くで踊っていて自然と意気投合しました」と語り、「毎日でも通いたい」と笑顔がはじけます。最後は「またここで会いましょう!」と、再会を約し合っていました。
■転倒リスク減や脳への刺激など--フレイル予防にも期待
「シニアディスコ」を踊ることは体にどのようなプラスの影響をもたらすのでしょうか。運動による健康効果の研究に携わる筑波大学体育系の辻大士助教に聞きました。
約7万人の男女を3年間追跡した研究で、ダンスはフレイル(虚弱)の予防に優れた効果を期待できる結果が出ています。理由は三つ考えられます【図参照】。
一つ目は、指先から体幹まで全身の機能をフル活用するためです。筋力とバランス能力の向上に加え、歩行や方向転換など移動能力も含めて総合的に使うことで転倒リスクの軽減を期待できます。
二つ目は、ステップや振りを考えたり覚えたりする上、リズムに合わせて踊ることで、脳へあらゆる刺激が与えられるためです。記憶力や集中力を養えるだけでなく、注意力や判断力の維持・改善にも役立つでしょう。
三つ目は、他者との交流による社会的なつながりをつくれるためです。例えば、演目中にその時のテンションに合わせ、近くの人とハイタッチしたり、笑顔で顔を見合わせたりすることで、人と人との結び付きはより強まります。普段、家にいることが多く孤立しがちな人にとっては、外出のきっかけにもなります。
特にこうした効果は、男性において顕著に表れました。
その上で、毎週踊る必要はありません。たとえ不定期の参加でも、一人で黙々と運動を続けるより、要介護状態に陥るリスクを低くするというデータもあります。「みんなに会える」という気持ちが背中を押し、継続のきっかけになるからです。また、イベントに参加すれば1時間はおのずと体を動かし続けます。一人だと疲れた時点でやめてしまいがちですが、みんなと一緒の場では運動量も多くなります。
■現地で「見る」だけうつ傾向を3割減
中には当時のディスコを懐かしんで踊りたいと思いながら、体の状態によってはかなわない人もいるかもしれません。しかし、その場にいるだけの“観戦”であっても心の健康にプラスの作用をもたらします。
最近の研究でスポーツを年に数回でも現地観戦する人もしくはテレビやインターネットで毎週観戦する人は、全く観戦しない人と比べると「うつ傾向」が3割低かったのです。これを踏まえ、ディスコも同じような効果を期待できるといえます。
なぜなら、「見る」ことで味わう感動やドキドキといった心理的な反応に加えて、同じ趣味を共有する友人と会うことも相まって、うつリスクを下げるからです。





