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女性用トイレの行列問題解消へ/国交省が初の指針案

公明新聞2026年4月7日付 3面

 駅や商業施設などで、女性用トイレの長い行列に戸惑った経験を持つ人は多いのでは。この長年の課題解消に向け、国土交通省は先月、トイレの設置基準や運用の考え方を示す初のガイドライン(指針)案をまとめた。女性の社会進出といった時代の変化に対応し「待ち時間の男女平等」をめざす指針案のポイントや背景などを解説する。

■待ち時間、男女で「平等」に/駅や商業施設に改善促す

 トイレの行列に対する不満は女性において特に深刻だ。国交省が昨年実施したアンケートによると「利用するために行列に並ばなければならない」ことに不便や不満を感じている人の割合は、駅で女性55・2%(男性35・3%)、大規模商業施設で女性47・4%(男性17・7%)に上る。

 背景には、設置数の格差がある。同省の別の調査によると、小便器を含む男性用の便器の数を1としたときの女性用の便器の数は、駅が0・63、空港が0・66、バスターミナルが0・71など、多くの施設で女性用が男性用の6~7割程度にとどまる実態が浮き彫りになった。

 こうした現状を改善するため、指針案が打ち出した最大の柱は「待ち時間の平等」だ。

 女性は必ず個室を利用し、男性より時間を要する傾向がある。指針案では、こうした男女の性差を考慮。利用者がおおむね男女同数の施設では、原則として「女性用の便器数を男性用(個室と小便器の合計)と同数以上にする」という基準を初めて示した。

 また、女性の社会進出に伴い外出先での利用頻度が増え、男女の便器数に「乖離」が生じている恐れがあると強調。洋式化・温水洗浄便座の普及で快適性が向上し、個室の利用が男女ともに長時間化している現状も指摘した。こうした利用者構成や利用時間の変化などを踏まえ、駅や公共・商業施設の管理者などに対して、中長期的な視点でトイレの設置基準を見直すよう求めている。

 一方、指針案は「誰もが安全で快適に利用できる」環境を重視しており、男性への配慮も忘れていない。

 男性用トイレでも、近年は小用時に小便器ではなく個室を好む人が増えており、回転率の低い個室に行列が発生している。そのため指針案では、男性用トイレ内の「個室と小便器の比率」についても、施設の実態に合わせて検討する必要があるとした。

■「可動式」間仕切りなど工夫も

 指針案には、限られた面積や予算の中で行列を減らすための工夫も盛り込まれた。

 例えば、イベントごとに男女比が大きく変わるスタジアムや劇場などでは、女性用と男性用のトイレの間仕切りの位置を動かして個室数を調整できる「可動式間仕切り壁」の導入を推奨。トイレの入り口にある男女のサインをロールスクリーンなどで切り替える手法も紹介した。

 大規模な駅や商業施設では、電子看板(デジタルサイネージ)やスマートフォン(スマホ)で空き状況を見える化し、空いているフロアへ利用者を分散させる手法が効果的だとした。このほか、化粧目的での個室利用を抑制するためパウダーコーナーの整備なども挙げている。

 トイレの利用環境の改善は、単なるサービス向上にとどまらない。

 民間の調査では、トイレが使いやすいことが施設選びに影響すると回答した人が約7割に上り、商業施設では「トイレ利用が目的で来訪した人の約7割が買い物も行う」といったデータも示された。トイレの行列解消は地域の活性化や施設間の競争を促すことにもつながる重要な戦略と言える。

 今回の指針案は、昨年6月の政府の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)に盛り込まれた女性用トイレの利用環境改善に向けた対策の一環。4月末までパブリックコメント(意見公募)を実施し、5月中に正式決定される見込みだ。