化学物質に反応して多くの症状を引き起こす、いわゆる化学物質過敏症。発症メカニズムなど実態は未解明な部分が多い一方、症状だけでなく周囲に理解されず苦しむ人は多い。発症した東京都内の人の歩みを伝えるほか、公明党の地方議員や国会議員らが当事者の声を聴き、対応を行政に求めてきたことを紹介する。 ■東京都60代女性「苦しむ人がいる事実知って」 東京都内で夫と暮らす60代女性のAさんは2022年秋、自身に大きな異変を感じた。居住自治体にある児童館のスタッフとして、子どもたちが使用する備品のおもちゃをアルコール消毒していたところ、突然動悸のような症状が発生し、休憩しても治まらず早退した。その日を境に、アルコールのにおいを嗅ぐだけで心臓がバクバクして息苦しくなるように。腹痛や頭痛の症状も現れる。なぜ、どうしてなのか見当もつかない。 発症する場面は徐々に増えていく。香りのある柔軟剤や化粧品を使ったりすることが困難になった。雑誌や本をめくった際に漂う、かすかなインクのにおいでも体調を崩すようになった。病院を転々とし、ある医師から耳にしたことのない病名が伝えられた。「化学物質過敏症だ」 症状はなくならず、やむを得ず児童館を退職。それ以降、再就職を試みたが、どの職場もアルコール消毒を実施しており、同様の症状に襲われるため、仕事を続けられない。体質的に特別の配慮が必要になるため、理解できない人から心無い言葉を浴びることもあり苦しんだ。ある企業での面接時には、事情を伝えると「そういう体質の人は無理です」と冷たい一言が。「誰にも理解してもらえない」。Aさんの心は傷ついた。 一方、理解をしようとする人にも出会ってきた。ある児童館の上司は「Aさんが仕事を続けられるようにしたい」と、ノンアルコール除菌薬を導入し、配慮してくれた。 今年に入ってから、紙パック容器に入った飲料品といった商品の印字に使われるかすかなインクのにおいにも、体が反応するように。スーパーでの買い物が苦しくて夫に頼まざるを得ないなど、生活上の制限は増え続けている。 「ずっと健康だったのに突然、こんな“奇病”に悩まされるとは……。誰にでも発症するかもしれない、化学物質過敏症の存在や苦しむ人がいる事実をたくさんの人に知ってほしい」。そう切実に祈りながらAさんは毎日を送る。 ■公明、各地で周知啓発訴え 政府は以前から化学物質過敏症に関する研究を進めているものの、発症メカニズムや物質と症状の因果関係など解明されていないことが多く、科学的知見に基づく実態は分かっていない。客観的な診断基準や治療法の確立に至っていないのが現状だ。環境省の担当者は「苦しんでいる人が早く良くなってほしいが、どうすれば良いか……」と課題と向き合う心情を明かす。 未解明な現状だが、各地の公明党地方議員は当事者の声を聴き、悩んでいる人たちがいることの周知啓発を議会で主張してきた。公明党の提案により、理解を広げるためのチラシやポスターの作成、ホームページでの周知を実施した自治体は少なくない。 一方、国会でも公明党や中道改革連合の議員が取り上げ、国に対応を求めてきた。今年5月の衆院環境委員会では、中道の庄子賢一氏が同症に関する省庁連絡会議の立ち上げを提案し、「原因究明と同時並行で今やれることはないのか検討してほしい」と迫った。 これに対し環境相が、「科学的に不確実であることをもって対策を遅らせてよいとは思わない。科学的知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じる必要がある」と答えた。この答弁に「一つの希望」(庄子氏)を見いだしながら、当事者との歩みは続く。