豪雨に伴う河川の氾濫や住宅浸水、道路冠水などの被害を抑えるため、埼玉県越谷市は現在、雨水をため込む水田の貯留機能を生かした「田んぼダム」の活用を進めている。今年6月からは、情報通信技術(ICT)を用いた「スマート田んぼダム」の実証実験を開始した。 ■増水時に雨水貯留を一括操作 「田んぼダム」は大雨が降った際、水田自体を雨水の一時的な受け皿として活用する。たまった雨水は、数日かけてゆっくりと河川へ流す。排水路や河川の水量を時間差で分けることで、水害を防ぐ役割を果たしている。 越谷市は2024年から2年間、水田での貯留機能を確認する調査を実施しており、2・8ヘクタールの水田で最大25メートルプール約2杯分の雨水量を貯留できることを実証。貯留機能の向上と農作業の効率化、生産者の負担軽減をめざして今年からICTを活用したスマート田んぼダムの実証実験に移行した。 市は4月末からNTT東日本、農地を借りて現地で稲作を営む株式会社ニイザカファームとの間で、スマート田んぼダムによる地域防災強化・持続可能な農業推進に関する連携協定を締結。2・8ヘクタールの田んぼを活用し、新たに三つの機器を設置してスマート田んぼダムの実験を開始した。 水害が予想される台風接近時や線状降水帯の発生時などに、雨水をためる貯留スペースを水田に確保するため、事前に自動給水ゲートを閉め、水田に張られた水を排水して豪雨に備える。その際、市が生産者の許可を取った上でスマートフォン(スマホ)の一括操作で実施する。また、河川へゆっくり流す機能として新しく設置した排水抑制管が威力を発揮。豪雨時に急激な雨水を管内に貯留させ、通常の排水口よりも水を流す穴が小さく設計されているため、ゆっくり排水路に流せる。 ■平時は生産者が労力使わずスマホ対応 一方、スマート田んぼダムは平時、生産者の労力軽減などに貢献する。水田に24時間体制で水温と水位を自動計測するセンサーを取り入れ、常に水田の状態を確認。生産者はセンサーのデータを通信基地局を経由してスマホで受信できる。自宅や離れた場所からでもスマホで、自動給水ゲートの開閉や水位の自動調整ができる。 市の担当者は「2年間の実証実験を通じ、豪雨時の水害リスクを確実に減らしながら、生産者が負担なく営農を続けられる環境体制を本格的に整えていきたい」と話している。 公明党越谷市議団(瀬賀恭子代表)は、河川が多い市内の水害対策を会派を挙げて推進。水田の雨水貯留機能を活用した水害対策は、20年9月定例会で竹内栄治議員が提案していた。このほど現地を視察した竹内議員は、「集中豪雨による道路冠水や床下浸水などの被害を極小化できる大きな前進」と期待を寄せた。