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(被爆80年)8・9平和継承活動=上/若者が原爆写真展ガイド/長崎市
長崎市は、あす8月9日で原爆投下から80年の節目を迎える。被爆者の平均年齢は86歳。平和の継承という喫緊の課題に直面する中、次世代を担う若者に焦点を当てた、新たな継承活動の様子を上、下の2回リポートする。
■「自分ごと」で平和語る
「これは、原爆投下翌日の爆心地周辺を写したパノラマ写真です」「ここに写っているのは、被爆し避難する親子です。服装に注目してみてください」--。
「被爆80年 ナガサキ原爆写真展」が長崎市立図書館で7月23日から今月4日まで開かれ、会場には小学生から大学生までのガイドが、来場者に精いっぱい説明する姿があった。写真展の初日は、午前中だけで来場者が100人を数える盛況ぶり。案内を受けた60代の女性は「説明がとても分かりやすかった」と絶賛。「子どもたちが平和のために行動する姿が感動的だった」と目を潤ませていた。
被爆の実相を伝えるこの写真展は、平和継承活動に取り組む公益財団法人「長崎平和推進協会」の写真資料調査部会(松田斉部会長)が主催した。今月5日から22日までは、市内の「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」に場所を移し、長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」の実物大写真や、人工知能(AI)でカラー化した原子雲の写真など、約60点を展示している。
■「緊張したけど思い伝えられた」
写真資料調査部会は、戦争や平和を「自分ごと」として捉え、語れる人材を育もうと、今年5月以降、小学生から大学生までを対象に、ガイド役として「原爆写真展ユースボランティア」を募集。応募した61人の若者が登録された。会場に連日、日替わりで10人ほどが常駐する。
ユースボランティアのメンバーは、写真展開催に向け、写真資料調査部会が開いた事前研修会に参加。展示写真の場所を実際に巡る野外調査で“当時”に思いをはせ、松田部会長による講話で平和を学び、準備を進めた。
実際にガイドを体験した中学3年の女子生徒は、小学校からの平和学習を通し、「自分にできることはないか」と、思い切って応募したという。「緊張したけど、自分の思いを伝えられて良かった」と笑みをこぼした。
公明党長崎市議団(向山宗子団長)は、平和の語り部育成を議会質問で取り上げ、推進してきた。写真展の会場でユースボランティアや写真資料調査部会の草野優介さんと懇談し、草野さんは「写真は世代を問わない重要な継承ツール。来年も開催できれば」と話した。
これに対し、向山団長は「平和へ行動する子どもたちの存在はありがたい。若い世代が、興味を持って平和学習に参加できるような機会を創出したい」と応じた。