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第27回参院選 党総括<要旨>
■選挙結果
2025年に行われた都議選と参院選は、12年に1度、これら二つの大型選挙が近接するいわゆる「巳年の選挙」であり、いずれも、公明党にとって大変厳しい戦いとなりました。こうした中にもかかわらず、公明党に対して、真心からのご支援をいただいたすべての皆さまに、まずもって、心からの感謝を申し上げます。
6月22日に投開票された都議選では、公明党は、20選挙区に22人の公認候補を擁立。首都圏また全国から、まさに党の総力を挙げて選挙を戦い、現職から新人への世代交代を図った北多摩3区、中野区、豊島区をはじめ、前回にも増して極めて厳しい戦いに挑む中、劣勢をはねのけて18選挙区で19人が当選することができました。一方で、残念ながら新宿区と大田区の2選挙区で、3名の公認候補が惜敗する結果となりました。
都議選から11日後の7月3日に公示、20日に投開票を迎えた第27回参院選では、公明党として「7選挙区で完勝、比例区で現有7議席以上」を目標に掲げましたが、選挙情勢は、序盤から「新興勢力の台頭」という都議選のトレンドがさらに増幅する流れとなり、定数3のみならず、定数4の選挙区でも、次々と公認候補が圏外にはじき飛ばされる危機的情勢に直面しました。
結果として、投票率が前回より平均で6・46ポイント上昇する中、兵庫、福岡、大阪、東京の4選挙区で議席を獲得した一方、約2万5000票(22年参院選比)を増やした神奈川をはじめ、埼玉、愛知でも現職の公認候補が惜敗。比例区の得票は521万569票、獲得議席は4にとどまり、結果として、公明党の獲得議席は計8議席となりました。目標であった改選14議席の維持はかなわず、公明党として、この選挙結果は「敗北」であり、痛恨の極みであると認識しています。
この選挙を通じて、参院公明党の議席は、非改選(13議席)を合わせて計21議席となり、自民党の101議席と合わせても、与党の議席は122議席にとどまって過半数(125議席)に届かないことから、参院でも少数与党の国会運営を強いられる状況にあります。
その上で、今回、比例区で獲得した521万569票は、22年参院選(比例区)と比較して約97万票、24年衆院選(比例区)と比較して約75万票の大幅減となりました。こうした得票減に象徴される選挙の敗因について、現場の声を踏まえて適切に分析を行うべく、参院選直後からこの8月31日まで、党幹部が全国各地を回り、党の方面本部ごとの「方面別懇談会」などを開催し、代表の議員・職員の皆さまから、現時点のご意見やご指摘、ご要望を伺ってきたところです。
■現状認識・敗因
方面別懇談会などで寄せられた現場の声や有識者らからのご指摘、ご意見を真摯に受け止めつつ、今回の参院選の結果を、党として分析を行いました。特に顕著だった傾向は、一つ目に、自民党支持層や無党派層であっても、従来は、選挙で公明党を選択していた有権者から、十分な信任を得られなかった、ということ。二つ目は、昨年の衆院選に引き続き、特に40代、50代といった現役世代、また10代から30代の若年層においても、党の支持が伸び悩んでいる、ということ。これら支持層と年齢層の二つの側面から、改めて課題が浮き彫りになりました。
背景として、マスメディアは、今回の新興勢力の躍進について「『多党化の時代』を本格的に迎えた」(毎日新聞25年7月22日付)などと報じていますが、日本のみならず、これまでインフレに突入した諸外国では、物価高の痛みが生活者を直撃し、格差が拡大する中で、財政規律を重んじる与党に対して、選挙で強い逆風が吹き、多党化へと移行する傾向にありましたが、こうした世界的現象が日本でも本格化したと考えています。
加えて、与党のみならず既成政党に対して、また従前の政治手法や政治体制に対して、国民の皆さんの拒否感が増大していると感じています。この点を巡っては、公明党としても、物価高で生活者が困窮しているにもかかわらず、政治とカネの問題で揺れ続ける自民党との距離感、例えば、不記載議員への推薦が清廉な公明党のイメージを損なったのではないかなどの観点を含めて、このあり方を見直すべきではないか。また、1999年以来、四半世紀近く政権を担ってきた公明党として、自公連立政権が果たした役割のみならず、課題も真正面から直視し、しかるべき反省の上に立って、国民のニーズに応える責任ある政治を前に進めていくべきではないか。あるいは、SNSにおける外国勢力の認知戦による選挙への介入が民意に少なくない影響を与えたのではないかなど、さまざまな指摘がなされており、いずれも重く、また真摯に受け止めつつ、着実に今後の党改革へ生かしていかなければなりません。
本来であれば、結党以来、大衆福祉を掲げ、現場の地方議員を先頭に、庶民に寄り添い続ける公明党として、格差拡大や物価高への対策をはじめインパクトのある政策を巧みに打ち出し、選挙戦に勝てるだけの運動や広報宣伝を通じて、こうした課題や逆風をはね返すだけの支持拡大を図るべきでありましたが、都議選と参院選が近接する厳しい選挙スケジュールであったこともあり、反転攻勢に転ずるだけの「地力」を発揮することができませんでした。また、今回の選挙で、新興勢力が「失われた30年からの脱却」や「既存政治からの転換」など明確な争点設定を行い、一定の共感を集めた一方で、わが党は、争点形成力と発信力の両面に課題を抱えたまま、その訴えが十分に有権者に届かず、今回の選挙結果を招いたことは、ひとえに、党の戦略および戦術に主たる敗因があり、党執行部として責任を痛感しています。
なお、消費税の軽減税率については、物価高対策の観点から目玉政策として公約に掲げるべきとの意見もあったことも踏まえ、党内で闊達な議論が行われました。その上で、「少子高齢化、人口減少が進む中、国民の将来不安を払拭するためには、社会保障制度の持続可能性の確保が何より重要である」との社会保障と税の一体改革の基本的な考え方を踏まえつつ、他方で、わが国の消費税率10%は、導入している主要国で最も低い税率であるものの、軽減税率8%は最も高い水準である実態があることから、最終的には「軽減税率について、財源を確保しながら、福祉的な観点から税率を深掘りし、恒久的な措置にしていくことが必要」との結論に至り、重点政策における「当面の重要政策課題」として掲げました。これは、軽減税率を導入しつつも、財源を含めた責任ある政策のあり方を追求する福祉の党・公明党として、適切な方向性であったと認識しています。一方で、さまざまな議論や調整を重ねる中で、見解の集約に時間を要し、結果として野党の争点設定に後れを取ったとのご指摘については、真摯に受け止めています。今後とも政策の説明責任を一層徹底し、「福祉の党」として、国民の不安に寄り添いながら、責任ある政策実現に取り組んでまいります。
以上の現状認識と反省を踏まえつつ、これまでにない大胆な「党改革」へとかじを切らなければなりません。公明党として、何より深刻に受け止めるべきは、一昨年の統一地方選、昨年の衆院選、そして今年の都議選、参院選と、選挙に挑むに当たって掲げた目標を達成できない結果が連続している、という厳しい現実です。
従って、「まさに今、公明党は、党の存亡の危機にあり、今後の党再生は、これまでの延長線上にはない。よって、新しい局面をつくり出す党改革が不可欠である」。これが、党の現状認識を表す、最も適切な言葉であろうと思います。
■党改革の方向性
では、今後、どのように党再生を図っていくのか。党改革について、現時点でわが党として考えている三つの方向性をお示ししたいと思います。
⑴ブランディング・広報宣伝体制を抜本的再編および強化
第1に、より幅広い国民の皆さんが、公明党の姿勢や政策を理解し、共感していただけるように、政党としてのブランディング、広報宣伝、そして、政策決定のプロセスやアピールに関する構造的課題を解消するために、党本部および党機関紙委員会の体制と予算配分のあり方を抜本的に見直します。
これまで、わが党は日刊紙の「公明新聞」を軸として、情報発信を行ってきました。公明新聞が果たす役割は極めて大きく、これからもその価値は何ら変わることはありません。
これに加えて、近年は、党公式TikTokによるショート動画の展開や、今年からスタートした有志による「公明党サブチャンネル」においては、これまであまり表にしてこなかった党内議論や舞台裏など、いわゆる「攻めた」内容に踏み込むことで、発信力を大きく向上させることができたと考えています。
また、政策については、若者や現役世代の声をAI(人工知能)も活用して集約・分析し、公約に反映させる政策アンケート「We Connect」を実施したことによって、「奨学金減税」が目玉政策の一つとして公約となりました。さらには、寄せられた声に応えるためのさまざまな政策実現に必要となる財源をいかに生み出すのか、議論を重ねる中で、新たな公約として「政府系ファンド」の創設を掲げ、大きな反響をいただくことができました。加えて、近年、民間事業者が選挙の際に提供し、10代から40代の若年層が大半を占める数百万人の有権者が利用する「投票マッチング」において、公明党は、昨今の国政選挙では、マッチング率で上位に位置していることが指摘されています。つまり、公明党の政策内容そのものは、実は、支持率で伸び悩んでいる若年層のニーズに、十分応え得る内容であることも明らかになってきました。
しかし、一方で、今回の参院選に向けた広報宣伝活動や選挙運動を通じても、こうしたマッチング結果が投票行動に直結したとは言えず、最終的には、参院選の得票を十分に押し上げるまでには至りませんでした。すなわち、公約に掲げた政策内容と、有権者に映っている党のイメージの間に、相当に大きな乖離があり、公明党として、ブランディングなどの戦略および戦術に極めて深刻な課題を抱えていると認識しなければなりません。
この点については、さまざまな点から指摘がありますが、何より、有権者のニーズを踏まえ、公明党を他党と差別化するブランディングと目玉政策およびキャッチコピーの策定、さらには機関紙やSNSなど党媒体による発信、といった広報宣伝に関する一連のオペレーションを党の各部局で分担していることで、体系的な取り組みにならず、共感層を十分に拡大できなかったことが、主たる敗因の一つであると考えています。
こうした反省点を踏まえ、頼まれて応援される党としての側面に加えて、より幅広い有権者に選ばれる党としても、さらなる成長とアップデートを図ることが必須であるとの観点から、党全体の人員と予算の配分を適正化し、勝てる体制をつくり上げます。特に重視する点は、いま申し上げた、ブランディング、目玉政策とキャッチコピーの策定、広報宣伝活動に横串を通し、戦略的、体系的に行う体制を整備するべく、まずは年内をめざして、党の機構改革に着手します。その中で、広報宣伝にかかる人員と予算については、デジタル分野へシフトさせることも早急に検討し、メインの「公明党チャンネル」、また「公明党サブチャンネル」を強化する体制を構築します。併せて、国会議員はもとより、地方議員に向けたSNS講習を適時実施し、有権者との信頼関係を築く双方向のコミュニケーションを一層活性化させていきます。
その中で、特に政策立案にかかわる部分については、若い有識者の皆さんから提案を受ける「リバースメンター制度」の採用や、現場の声を踏まえた地方議員の参画など、公明党らしい、もう一つの政策立案のエンジンを構築するとの観点から、これらの実現に向けて取り組みを加速させます。また、中央および地方の党組織における意思決定機関に女性議員の参加枠を設けることで、より多様性豊かな公明党をめざし、さらにアップデートを加速させます。
加えて、民主主義の基盤とも言える情報空間が決して健全とは言えない現状において、党としても、既に導入しているファクトチェックに加えて、明らかなデマにスピード感をもって対応する体制も、併せて強化する必要があると考えています。=4面に続く