熊本地震の発災から3週間が経過した被災地では、猛暑や断水が続く中、避難生活が長期化していることから災害関連死の防止が大きな課題になっている。関連死が多数発生した2016年の熊本地震や24年の能登半島地震などの教訓をどう生かすか。熊本大学病院災害医療教育研究センターの笠岡俊志センター長に聞いた。 --現状の受け止めは。 現在、38人が亡くなり、そのうち1人は災害関連死の疑い、1人は地震との関係を調査中だ。関連死が228人となった2016年の熊本地震は避難者数が最大約18万人。今回は1万人弱で規模は違うが、関連死という観点では避難者数に対する関連死者数を注視する必要がある。 震度7の地震が真夏に発生するのは過去に例がない。猛暑と断水という環境の中での避難生活は過酷で、心身への影響が懸念される。避難生活で体調を崩し、関連死につながる事態は何としても防ぎたい。過去の事例から、発生1カ月の初期対応が大事だが、半年や1年といった時期に亡くなる方もいた。被災地が以前のように復旧し、被災者が元通りの生活に戻るまでは油断できない。 --真夏の避難生活の過酷さとは。 地震がない日常生活の中でも熱中症対策は欠かせないので、避難生活での体調管理はなおさら心配りが必要だ。 熊本県は避難所となっている学校体育館のエアコン設置率が全国平均よりも低く、現在はスポットクーラーなどで対応しているところもある。体育館へのエアコン設置は全国的な課題で、ぜひ公明党に推進してほしい。 車中泊で暑さをしのぐには、エアコンのためにエンジンをかけ続けなければならない。熱中症対策としても避難所の環境改善は大切で、車中泊や在宅避難者に行き届く対応も必要だ。 ■脱水でリスク増、ストレスに注意 --身体への影響で懸念されることは。 脱水症状となると、血液の粘度が上がって血栓ができやすくなり、エコノミークラス症候群のリスクが高まる。熱中症とともに命にかかわる病気なので最大限の注意が要る。これに限らず、暑さをはじめ、環境の変化やストレスによる体調の異変にいち早く気付くことが、命を守るためには不可欠だ。早期発見、早期対処であれば救命できる可能性は高い。 とはいえ、私が過去の講演で「避難所で体調を崩したらどうするか」と参加者に問うと、「我慢する」と答えた方が多かった。避難所を問わず我慢は禁物であり、体調不良や困り事があれば遠慮せず声を上げてほしい。 ■高齢者見守りで孤立回避も/SOS発信できる仕組みが必要 --関連死を防ぐために必要な支援策は。 24年の能登半島地震でも、関連死は高齢者や持病を持っている人の割合が高かった。熊本県内には高齢の独居世帯が多い。要配慮者と併せ、避難所以外の自宅や車といった人の目が届きにくい場所で避難している方に対し、孤立させないための見守り支援を進めなければならない。 すでに、保健師や福祉関係のボランティア団体が避難者の把握や見守り活動をしているが、ボタン一つでSOSを発信できる仕組みや、オンライン診療の導入で体調変化に気付くことができる仕組みも必要ではないか。 ■メンタルヘルスケア促進すべき --ほかに大事な視点は。 関連死の見過ごせない要因の一つが自殺だ。行政の職員も含め、さまざまなストレスを被災者は抱えている。DPAT(災害派遣精神医療チーム)と連携しながら、メンタルヘルスケアも促していかなければならない。被災者も支援者も、可能な限り食事、運動、睡眠を確保できる生活を心掛けてほしい。持病の悪化を防ぐ観点では、処方薬の服用をやめることのないよう注意してほしい。