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(東日本大震災15年)帰還から4回目の春、双葉町の今を歩く/福島県
東京電力福島第1原発事故による全町避難で、一時は“居住者ゼロ”となった福島県双葉町。2022年8月、避難指示の一部解除により、住民の帰還が始まった。JR常磐線「双葉駅」周辺には町営住宅が整備され、診療所やスーパーもオープン。新しいまちづくりが進んでいる。住民帰還から4回目の春を迎える町を歩き、復興の今を伝える。=東日本大震災取材班 文=西村碧、写真=江田聖弘(ドローン撮影)、鈴木俊明
■つながりが街を彩る
JR仙台駅から特急列車で1時間15分。双葉駅で降りると西口に町営「駅西住宅」(86戸)がある。そこに暮らす知人の若宮紀章さん(56)を訪ねた。若宮さんは東日本大震災の後、あしなが育英会の職員として仙台市に赴任。宮城、岩手の両県で震災遺児を支えてきた。
22年、復興のまちづくりを進める一般社団法人「ふたばプロジェクト」が開催した町営住宅の工事見学会に参加。その時、開かれた懇談会で「一日も早く双葉に帰りたい」との住民の思いに触れた。町営住宅が移住者も入居できることを知った若宮さんは「双葉を応援したい」と移住を決断。24年6月に入居し、現在、管理組合の副組合長を務める。
「町内外の子ども、若者、お年寄りがつながることで街に彩りが広がれば」と若宮さんは願っている。
駅東口には旧駅舎が残り町民や駅利用者の交流スペースになっている。そこにはふたばプロジェクトのスタッフが常駐し、町の魅力と情報を発信している。町を歩くと目を引くのが「壁画アート」。「アートの力で人々の心に火を灯す」との思いで描かれたという。
町では若者の姿をよく見かけた。小春日和の青空の下、大学生グループが資材を運ぶ。声を掛け、カメラを向けると笑顔で応じてくれた。
ランチを取ろうと歩みを進めると地域活動拠点FUTAHOME(ふたほめ)に行き着いた。震災前、ブティックだった建物をリノベーションしたものだ。1階ではハンバーガーショップ「じょーじのはっぴーきっちん」が営業中。ハンバーグは福島県産の麓山高原豚の超あらびき肉を使い、ジューシーでコクのある味わい。若松佑樹店長(41)は「良質な福島の食材で心を込めて作っています」と丁寧に焼き上げていた。
店内は町民やボランティア、学生たちの憩いの場に。お互い気軽に話し掛け、会話が弾む。神奈川県からインターンシップで訪れていた女子学生に撮影の協力をお願いすると、隣席の女性客が「かわいく撮ってあげてね」と声を掛け、和やかな空気が広がった。
店を出て2分ほど歩くと消防団の屯所へ。震災で停電し、電動式シャッターが停止。救助活動に向かうためポンプ車が突き破って出動した跡が残る。時計の針は2時46分で止まり“あの日”の記憶を今に伝える。
■芽吹く新しいコミュニティー
ふたばプロジェクトの土屋省吾事務局次長(60)は「東京にないものが双葉にはたくさんある。その一つが誰にでも笑顔であいさつする町民です」と語る。
復興へ歩む町には、新しいコミュニティーが芽吹いていた。