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2040年見据えた、がん医療は/人口減だが患者増える/厚労省見通し、「放射線」「薬物」に需要

公明新聞2026年3月20日付 3面

 65歳以上の高齢者人口がピークを迎える2040年ごろに向けて、持続可能ながん医療提供体制の構築が課題となっている。厚生労働省は、都道府県に対し、地域の実情に応じてがん医療の均てん化(格差の是正)と集約化に向けた検討を進めるよう求めている。同省の基本的な考え方を紹介するとともに、東京大学大学院医学系研究科の中川恵一特任教授に語ってもらった。

■均てん化・集約化に向け「都道府県協議会」で検討

 日本の総人口が減り続ける中、がん患者は40年ごろまで増え続ける。厚労省の資料によると、40年のがん患者数は25年から3%増加した105・5万人と推計された。がんの三大療法別に40年の需要を見ると、25年と比べ、放射線療法は24%、薬物療法は15%増加する一方、手術は5%減少する見通しだ【グラフ参照】。

 療法別の需要は、都道府県ごとや、複数市町村を単位とする「2次医療圏」ごとに異なる。このため、厚労省は都道府県に対し、需要を予測・把握することを要請。その上で、都道府県がん診療連携拠点病院とともに「都道府県協議会」を運営し、地域の実情に応じたがん医療の均てん化・集約化に向けた検討を進めるよう求めている。

 昨年8月に公表された厚労省検討会の取りまとめによると、特に集約化の検討が必要な医療について「症例数が少ない」「専門医などが不足している診療領域」「高度な医療技術が必要である場合」「高額な医療機器や専用設備を用いる技術」などが挙げられた。均てん化の検討が必要な医療については「がん予防や(患者の苦痛を軽減する)支持療法・緩和ケアなどは、身近な診療所・病院で提供されることが望ましい」とされた。

 都道府県協議会での協議事項として、「都道府県内で役割分担する医療機関について整理・明確化すること」「放射線療法に係る議論の場を設け、将来的な装置の導入・更新を見据えた計画的な議論を行うこと」などが示された。厚労省は、28年度までに都道府県が策定する地域医療構想との整合性を図るよう呼び掛けている。

■高性能装置で治療短く/東京大学大学院 中川恵一特任教授

 日本人のがんは、生活習慣の欧米化に伴って大腸がんや前立腺がん、乳がんなど欧米型のがんが増えている一方で、手術向きの胃がんは減っている。厚労省の推計では、放射線療法の需要が最も増加する見通しだ。

 放射線療法は、手術と同様に局所に対する治療だが、放射線を照射してがん細胞を死滅させるため、体にメスを入れる必要がない。患者への負担を抑えられるため、高齢化や、がんの種類の欧米化に伴う需要増に対応できる医療体制を構築するメリットは大きい。

 日本の現状は、諸外国と比較すると、放射線治療装置の配置が分散しており、非効率になっている。患者数が減少している地方では、高額な装置を更新できない事態が生じており、一定の集約化は避けられない。

 その代わりに、通院回数が少なくて済む治療の導入を進めるべきだ。例えば、前立腺がん治療の場合、東京大学病院では、CT(コンピューター断層撮影)をベースにした放射線療法を実施しており、ほとんどが5回の通院で完了する。

 さらに少ない通院回数で済む装置も登場している。MRI(磁気共鳴画像)とリニアック(放射線治療装置)を合体した「MRリニアック」を稼働している東北大学病院では、土曜日に2回通院するだけだ。入院して全身麻酔を要する前立腺全摘手術と同じ効果が得られている。

 健康保険の対象になっており、高額療養費制度の適用により、患者の支払額は抑えられる。「MRリニアック」は世界で90台以上が臨床稼働中だが、日本は3台にとどまる。がん医療の集約化が迫られる中だからこそ、こうした高性能な装置の中核都市への配置を進めるべきだ。

■地方議員に期待、体制整備の後押しを

 厚労省は、がん医療の均てん化・集約化に向けた検討を都道府県の協議会で進めるよう要請しており、地域の実情を知る都道府県議が果たす役割が重要になる。放射線治療装置の効果的な配置に加え、集約化で病院までの距離が遠くなる患者へのサポートなど、公明党の議員には各都道府県で質の高いがん医療を提供し続けられる持続可能な体制の整備を後押ししてもらいたい。

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