文部科学省は先月21日、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の作業部会で、「ギフテッド」とも呼ばれる特異な才能を持つ小中学生向けの特例制度の骨子案を示した。ギフテッドの特性や必要な支援について、同作業部会の主査代理を務める上越教育大学大学院の角谷詩織教授に聞いた。
■知的水準IQ130以上が目安/35人学級に1人程度存在
--ギフテッドとは。
角谷詩織・上越教育大学大学院教授 世界各国でいろいろな考えがあり、共通の定義は存在しない。一方で、1972年に米国の教育省が発表したマーランドレポートに基づく捉え方が世界的な共通の理解となっている。具体的には①並外れた才能ゆえに高い実績を上げることが可能な子ども②実際に優れた成果を上げている子どもだけなく、潜在的な素質のある子どもも含む③才能の領域は知的能力全般、特定の学問領域、創造的思考や生産的思考、リーダーシップ、音楽、芸術、芸能、スポーツ--と示している。
ギフテッドは発達障がいと混同されることが少なくない。しかし、ギフテッドの判断基準に含まれるのは才能という概念のみで、困難や障がいという概念は入っていない。一方、発達障がいは脳の機能障害に関係するという違いがある。もちろん、ギフテッドであり発達障がいなどの障がいもある2E(twice exceptional)と呼ばれる子どももいる。
--日本にはどのくらいいるのか。
角谷 潜在的な知的能力の高さ、いわゆる知的ギフテッドの古くからのおよその目安はIQ130以上であり、その割合は3%程度いるとされている。これは35人学級に1人程度いる計算となる。もちろんアインシュタインのような天才もギフテッドの範囲に入るが、そうした人はごくわずかで、ギフテッドの90%以上は天才ではない。
■授業レベル合わず苦痛に/自己実現目的に教育的配慮を
--なぜギフテッドへ支援が必要なのか。
角谷 知的ギフテッドは知的能力が高い一方、激しく繊細で傷つきやすいといった社会情緒的特性も同時にみられることが多い。学校の授業が退屈で、授業のレベルが合わず苦痛を感じ、さらに同年齢の友達となじめずに不登校につながることもある。
日本はギフテッドに対する体系的な支援は確立されておらず、草の根的に広がっている状態だ。周囲から誤解され、見いだされずにいるギフテッドの救済には教育的配慮が必要だ。
--国が検討中の新たな制度については。
角谷 これまで注意を払われてこなかったギフテッドと言われる子どもたちのニーズが公的に認識され、その支援の必要性が認められたという点で大きな意義がある。これまでの教育では学習内容を理解できている子どもは問題ないとされてきた。
一方で、今回の制度は知的ニーズが満たされているかに注目し、個別最適な学びの実現を進めていく。できる人は放っておいてもよい、分からない友達に教えてあげる立場に立たせてあげればよいというのは、その子の新たな学びの機会を奪うことを意味する。
諸外国でもギフテッドへの支援を行っているが、日本の特徴は国力強化や経済発展を第一の目的とするのではなく、あくまでも、第一目的はその人の自己実現としていることだ。特例の背後には、ギフテッドスクールやクラスのような体制を作るのではなく、通常の教育課程の柔軟化とそこでの支援を充実させていくことに重きを置いているという特徴もある。
今後は、ギフテッドへの支援を行う学校や教育委員会、対象活動実施機関、専門機関の間の相談体制を充実させることが大切だ。子ども自身が日常的に最適な教育環境を選べる状態にしていくことが重要である。
すみや・しおり お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人文科学)。同大学助手などを経て2022年から現職。専門は発達心理学、教育心理学。
<解説>
■(文科省が特例制度の骨子案)得意教科は大学で研究も
文科省が示した特例制度の骨子案では、特定の分野で才能を持つ児童生徒の学校での一部の授業を免除し、高校や大学で授業を受けられるようにする。
ギフテッドと呼ばれる子どもたちが抱えやすい学習・生活上の困難を解消し、個々の才能を伸ばすことが目的だ。本来の学年より上の学年に移る「飛び級」とは異なり、同年代の子どもたちとの集団生活を維持しながら、普段は同じカリキュラムで学ぶ。
一方で、得意教科については大学などに移動して研究したり、オンラインでの講義を受講できるようにする。
対象の児童生徒については、知能指数などによる線引きはしない。学校や教育委員会が、日頃の学習の様子を観察し、心理検査やヒアリング結果を基に判断し、本人が希望する場合に対象とする。対象者には学校が個別に計画を作成する。
特例制度については、2030年度にも導入される次期学習指導要領に盛り込まれる見通しだ。





