“地域医療に不可欠な命のインフラ”として活躍するドクターヘリの持続可能な運航に向け、公明党の竹谷とし子代表は16日、藤田医科大学病院(愛知県豊明市)を訪れ、関係者から直面する課題などを聴きました。谷合正明参院会長、党ドクターヘリ・ドクターカー配備推進プロジェクトチーム座長の宮崎勝参院議員らが同行しました。 ■救命体制の先行き不安 愛知県では2024年2月から、同病院の機体を含め計2機でのドクターヘリ運航が始まり、救急医療体制が大きく向上しています。年間の要請件数は約500件から700件超に増加し、年間約50件起きていた重複要請による「不対応事案」は解消されました。また、専門医の派遣など、適切な医療を受けるためにも活用されており、救える命を守る大きな期待が寄せられる分、存続への不安感も募っている実態があります。 竹谷代表らとの懇談で、愛知県内などのドクターヘリの運航を担う中日本航空株式会社の平井克弥氏は、存続に欠かせない操縦士や整備士を巡る課題として①育成する場がない②経験を積む仕事がない③経験が必要な仕事が増えた--ことを挙げ「三重苦に陥っている」と指摘。同社では現在、操縦士や整備士のほか、気象情報の確認など医療チームの迅速な出動をサポートする運航管理担当者は一定数確保できている一方、人材の高齢化が進み、先行きが不安だと語っていました。 学校法人藤田学園の伊藤隼也氏は、更新時期を迎える機体への対応を巡り、円安の影響で高額になるとして「国の財政支援が必要だ」と要請しました。関係者からは、災害時を想定した訓練の充実や、ドクターヘリ操縦士の要件緩和などを求める声が挙がりました。 ■公明、存続へ対応急ぐ 竹谷代表は、地域医療の確保だけでなく、高齢化や医療過疎化に対する地方創生の観点からもドクターヘリの存続は重要だと強調。その上で、地域によっては、整備士の不足などで運休が相次いでいる現状も踏まえ「公明党として現場の声を基に直面する課題解決に力を尽くしたい」と決意を述べました。また、持続可能な体制整備に向け、課題点を洗い出して改善への取り組みを共有するため、厚生労働省や国土交通省など関係省庁が協議する場をつくるよう政府に働き掛けていく意向を示しました。 ■(現場の声) ・整備士・操縦士不足、養成機関が少ない ・円安の影響で更新期のヘリ機体価格上昇 ・災害時の出動を想定した訓練環境の充実 ■(解説)全都道府県で整備するも一部地域で運休相次ぐ ドクターヘリは2022年に全都道府県で導入され、現在計57機が配備されています。事業開始以来、ドクターヘリによる診療人数は増える傾向にあり、日本航空医療学会によると、24年度は2万1873人に上っています【グラフ参照】。 ドクターヘリは救急現場へ直行し、治療しながら病院へ急行できる点が特長です。厚生労働省によると、地上での救急活動に比べて救命率が約3割向上しています。 大規模災害時での活動もドクターヘリの重要な任務です。24年の能登半島地震では、道路が地割れや土砂崩れで通行できない中、84人の患者を空から搬送しました。 ドクターヘリは、1995年の阪神・淡路大震災を契機に政府で検討され、99年に始まった試行的事業で初めて運航されました。2001年から正式な運航がスタート。07年には「ドクターヘリ特別措置法」が公明党の推進で制定され、全国的な配備が義務化されたことで各地で導入が大きく進みました。 一方で近年、国による基準でドクターヘリへの同乗が定められている航空整備士の不足などにより、一部地域で運休が相次いでいます。 背景に、養成機関である航空専門学校の入学者数の減少があります。コロナ禍を境に大きく減っており、24年度の入学者数は17年度に比べ半減しています。操縦士についても深刻な不足が懸念されています。機長の高齢化と大量退職、実務で飛行時間を稼ぐ機会の激減といった課題が挙げられており、人材育成への支援が急務です。 さらに、長引く物価高騰の影響で機体価格や燃料費、整備部品などの材料費が増加しており、民間運航会社の経営圧迫による事業撤退リスクや、機体の更新断念に伴う全国的な運休・減便の危機にも直面しています。 政府は25年度補正予算で、ドクターヘリの運航体制を確保するため「ドクターヘリ運航体制緊急支援事業」として約22億円を計上。しかし、持続可能な運航に向けた一層の支援が求められます。