妊娠したものの流産や死産を2回以上繰り返す「不育症」。国内患者は推計35万~50万人に上り、公明党のリードで検査費の助成などが進むものの、病態の認知は進んでいない。不育症の約7割は、医学的な原因が特定できないのが実態だが、本人も周囲も知らないがゆえに「働いていたから流産した」などと誤解しやすく、苦しむ患者も多い。 ■「周囲の一言で不安大きく」 「上司が良かれと思って『仕事を少し抑えたら?』と気遣ってくれた言葉から、働き過ぎたせいで流産したのだと、自分を責めてしまった」。埼玉県在住のAさん(32)は、2度目の流産の時を振り返る。当時、不育症の知識がなく、周りにも理解する人はいなかっただけに、「周囲の悪意ない一言で不安が大きくなった」という。 Aさんは、自治体の助成制度を使い検査した。原因特定には至らなかったが、医師の指導の下で治療に取り組み、現在は待望の第1子の出産を2カ月後に控えている。「症状を正しく理解し、最善を尽くせる治療法があると分かっただけで、希望が持てた」と笑顔を見せる。 ■患者調査「中学・高校では知識得られず」 同症の病態について認知度が低い状況は、岡山大学の中塚幹也教授が先月公表した調査結果からも明らかだ【グラフ参照】。 専門外来を受診した女性85人に質問したところ、流産・死産を経験して初めて不育症を知った人は7割に上り、中学や高校では不育症に関する知識を得られていないことが判明した。9割の人が「早く知っておきたかった」と回答。うち半数は「学校教育のうちに知りたかった」としている。周囲の理解不足から、不育症について嫌なことを言われた経験がある人は7割もいた。 ■孤立防ぐ心のケアが重要 「不育症女性の多くは、医学的根拠のない理由で自分を過度に責め、強い罪悪感を抱きやすい。患者はもとより、職場や地域などでの不育症への理解が乏しいからだ。正しい知識を広く伝えていく必要がある」。そう話すのは、不妊・不育症患者をサポートするNPO法人Fineの野曽原誉枝理事長だ。 不育症患者が、一人で悩みを抱え込みがちな現状も指摘し、「相談窓口の拡充や不育症の経験を持つ人が相談に当たるピアカウンセリングの実施など、孤立の防止に向けて、心をケアする施策により一層力を入れることが重要だ」と強調する。 ■公明が国と地方で推進/検査・治療支援や相談窓口 不育症を巡っては公明党が、2009年に国会で初めて取り上げ、患者らの切実な声を聴きながら支援を推進してきた。12年に一部治療で保険適用を実現して以降も、政府提言などを通じ、保険適用範囲の拡充を訴え続け、染色体の異常を調べる血液検査などが保険適用されるようになった。 保険適用外の先進医療には、検査費用の7割を助成する国の「不育症検査費用助成事業」を21年度に新設できた。自治体でも公明議員の訴えで、検査・治療への独自助成が広がっている。 患者に寄り添った心のケアも国と地方で推進。不育症を含む母子の健康に関する相談窓口は、25年4月時点で全国600カ所を超えている。 伊藤孝江党女性副委員長(参院議員)は「一人で悩む不育症患者を生まないためにも、正しい知識を広く周知する取り組みが重要だ。国と地方で連携し、学校教育や地域社会などでの普及啓発を進めていく」と話す。 ■教育現場で情報提供・啓発を/岡山大学の中塚幹也教授 不育症女性は一般女性に比べて5・5倍も抑うつ状態に陥りやすいという研究データがあり、流産や死産を繰り返すことが精神面に深刻な悪影響を与えていると言える。 今回の調査は比較的認知度の低い不育症女性の実態を明らかにするために実施し、患者のほとんどが不育症の知識を早く知りたかったと後悔していることが分かった。特に中学や高校などの学校教育のうちに知るべきだとした人が多い点は重要だ。 こうした当事者の切実な声に応えるためにも、性感染症や避妊など、妊娠しないように教えることが中心の従来の性教育から脱却し、人間関係や性の多様性などを含めた「包括的性教育」の実施が求められる。 また、若いうちから将来の妊娠・出産に備えて正しい知識を身に付ける「プレコンセプションケア(妊娠前ケア)」において、不妊症だけでなく不育症の知識も組み込む必要がある。 地域の実情に合わせ、教育現場などでの情報提供・啓発の取り組みに期待したい。