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(東日本大震災15年)どう伝える「経験と教訓」/女性防災リーダー、自治体職員の視点から/仙台市主催の防災未来フォーラム
東日本大震災の経験や教訓を防災・減災につなげようと仙台市は14日、「仙台防災未来フォーラム2026」を開催した。これには地域団体や企業、大学など176団体が参加し、これまでの防災の学びや活動の模様が報告された。このうち女性防災リーダーと自治体職員の発表にスポットを当てながら、災害伝承の課題と次世代へ体験を伝える具体的な取り組みを紹介する。=東日本大震災取材班
■防災・減災も男女共同参画で
自然災害の犠牲者は女性が多い。阪神・淡路大震災では男性の死者数2713人に対し、女性は3680人。東日本大震災では男性5971人に対し女性7036人(2011年4月時点)だった。
その背景として「女性は社会の文化・慣習、ジェンダーの視点から困難を抱えることが多い」との分析がある。この問題意識からNPO法人「イコールネット仙台」(油井由美子代表理事)は防災活動に取り組み、女性のニーズを掘り起こす支援に当たってきた。
同法人のセッションでは地域で防災活動を進める6人の女性防災リーダーが実践を報告した。
「せんだい女性防災リーダーネットワーク」の大内幸子代表は「震災当時、避難所運営は男性主体で女性リーダーはいなかった。女性の役割も炊き出しに固定されるなど疑問が残った」と指摘。
その上で町内会長などを補佐し防災計画づくりや住民の避難誘導に当たる「仙台市地域防災リーダー(SBL)」に女性が増えることで「発言の機会が増え、女性の気付きが避難所運営マニュアルに反映されるようになった」との実感を話した。
「いわぬま女性防災リーダーの会」の加藤博子代表は「女性防災リーダーが市に提言書を提出したことで防災の担当課へ女性職員の配置、避難所への段ボールベッド設置が実現した」と発表した。
油井代表理事は「防災には多様な視点が必要だ。女性の視点を伝え、男性と共に地域を災害から守っていきたい」として、防災分野における男女共同参画の推進の重要性を訴えた。
■震災対応「自分ごと」に捉え
フォーラムでは「警察・自治体による災害教訓伝承の課題」も発表された。警察出身者らでつくるNPO法人「災害時警友活動支援ネットワーク」(竹内直人代表理事)によるもの。
「警察、消防、自治体関係者の中には直前まで住民の避難誘導に当たり津波の犠牲となった人もいる。多くの住民を救助できず、署員2人が殉職したことは本当につらい」。震災当時、宮城県気仙沼警察署長だった佐藤宏樹氏は自責の念を抱えながら語った。
「震災対応の経験は忘れ去りたい悪夢だが、語り伝えていかなければならない」と強調。津波到達予想時刻の前に住民が完全待避できる避難計画の策定、警察・消防・自治体の職員が災害を「自分ごと」として捉え、防災情報を更新し続けることの必要性を訴えた。
公務員組織には宿命的ともいえる人事異動がある。例えば災害時、緊急援助隊として活動する機動隊も3年ほどで部署が変わる。3・11当時、県警機動隊特別救助班長だった永野裕二氏は「異動後、直ちに隊員をオレンジ(国際救難色)に染め上げなければ機動隊は弱体化する」と指摘した。
■3.11の現実を「口から心に伝えたい」/市職員自主勉強会の鈴木由美氏ら
大震災の発生から15年、被災3県では自治体職員として当時を知らない世代が約半数になっている。仙台市では2011年4月以降に入庁した職員が半数を超える。
同市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」は、次の災害に備えようと12年1月から災害対応業務を体験した職員に聴き取り調査している。「災害エスノグラフィー調査」という手法で2~3時間かけて当時のことを丁寧に聴取。教訓や他の災害にも生かす知恵を探り、震災対応の未経験者に追体験・共有をめざす取り組みだ。これまで109人から聞き取った。
フォーラムでは、発起人の市職員、鈴木由美氏らが5人の体験談を朗読した。その一つは、津波で家族を亡くした職員の話。「家が流された。でも私たちに泣いている暇はなかった。仮面をかぶって黙々と役場の職員として片時も休むことなく……」「ある人の言葉が離れなかった『あなたたち職員はライフラインだ。市民の命をつなぐ』」
鈴木氏は語った。「伝えたいのは被災地の現実だ。公式の記録に出てこない汗と涙と苦悩、体験者の思いが詰まったストーリーだ」。そして「人の口から、人の心へ。体験と教訓が100年後の人たちにも伝わるよう語り続ける」と誓った。