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対話で国際協調築く/公明、平和創出ビジョンを発表/党ビジョン策定委員長 谷合正明参院会長に聞く

公明新聞2025年5月18日付 1面

 公明党は13日、対話による国際社会の協調と平和を築くための「平和創出ビジョン」(9日発表)を石破茂首相に提出し、その実現を訴えました。15日には、各国の元首脳らでつくる国際人道グループ「エルダーズ」にも渡しました。2025年からの10年間を視野に、「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設や核廃絶、AI(人工知能)など17分野にわたる提言を掲げています。ビジョンの意義やポイント、平和を追求する公明党の取り組みについて、党平和創出ビジョン策定委員会の谷合正明委員長(参院会長)に聞きました。

■人間の安全保障基軸に/中満国連事務次長「意義の深いこと」

 -ビジョンを策定した背景と意義は。

 世界の安全保障環境は、この10年の間に大きく様変わりしています。

 ロシアによるウクライナ侵略や核の脅威の高まりに加え、新たな感染症の流行、気候変動といった複合的な危機に直面しています。日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増しています。

 そこで公明党が戦後80年、被爆80年、国連創設80年の節目に、10年先を見据えた総合的な取り組みを提示したのが「平和創出ビジョン」です。昨年8月、党内に策定委員会を設け、広島、長崎、沖縄をはじめ全国に広がる党のネットワークを生かして一緒に策定への議論を重ねてきました。

 -国際社会の安定にどう貢献しますか。

 地球規模の課題解決には多国間の協調が不可欠ですが、国際秩序の根幹は揺らいでいます。日本は70年以上にわたる国際協力を通じて築いた信頼を生かし、今こそ平和外交を主導する役割を果たさなければなりません。

 ビジョンでは、公明党が掲げる<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義の理念を基盤に、「人間の安全保障」を基軸に据えています。安全保障上の危機を和らげるだけでなく、法の支配を支え、国際社会の安定にも資するものです。

 ビジョン策定に際しては、国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)から「国際秩序が大きく変動している重要な時期に平和創出ビジョンを発表するのは意義の深いことだ」との評価が寄せられ、石破首相も党の提言に期待感を示しました。

■常設の協力機構を創設/対立国含む多国間の信頼醸成へ

 -ビジョンの副題には「対立を超えた協調へ」と掲げています。

 その中核として、対立する当事国が集う常設の対話枠組み「北東アジア安全保障対話・協力機構」創設を提唱しました。

 紛争を未然に防ぐには対立する当事国を含む多国間の対話による信頼醸成が欠かせません。このため、公明党は欧州安全保障協力機構(OSCE)を参考に議論を深め、国会質疑で枠組みの構築を政府に求めたほか、今年1月の日中与党交流協議会や4月の党訪中で、中国側に構想を伝え、意見交換を進めてきました。

 まずは災害対策など共通課題をテーマに議論を始め、将来的に国際機関への発展をめざします。

 -重点課題に核廃絶やAIを挙げています。

 核廃絶に向けては、唯一の戦争被爆国としての役割を明示。非核三原則を堅持し、核保有国による核兵器の「先制不使用」の合意や非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」の誓約を促していきます。また被爆者や戦争を直接体験した世代は、高齢化で急速に減少しています。次世代への平和の心の継承に向けた取り組みにも一層力を入れます。

 一方、AI関連技術については、人権や民主主義、安全保障などで深刻なリスクをはらむ一方、規範づくりが追い付いていません。軍事利用の規制とともに、平和利用を積極的に推進します。

■「平和の党」の行動貫く/党推進委を新設、具体化めざす

 -「平和の党・公明党」の取り組みは。

 公明党は、現実を直視しながら平和への歩みを着実に進めてきました。例えば、沖縄返還協定が審議された1971年の国会で「非核三原則」を国是とする付帯決議を実現させました。

 国連平和維持活動(PKO)協力法(92年成立)を巡っては、「一国平和主義」を乗り越え、世界の平和と安定に日本は積極的に貢献すべきだとの立場から、自衛隊が現地で紛争に巻き込まれないよう“歯止め”をかける「PKO参加5原則」を明記させました。読売新聞の世論調査(2018年)で、平成時代で日本社会に最も良い影響を与えた政治的出来事のトップに同法成立が挙がるなど、自衛隊による国際貢献は高く評価されています。

 15年の平和安全法制では、平時から有事まで隙間のない安全保障体制を整備。22年に改定された国家安全保障戦略には、公明党の主張を反映し、第一に外交力が明記されました。また、地雷除去支援にも貢献してきました。独自の政党外交も展開。直近10年間だけでも延べ30カ国を訪れ、各国との信頼を築いています。

 -今後の動きは。

 党内に「平和創出ビジョン推進委員会」を新設し、具体化を進めます。さらに、これまで連携してきたNGO(非政府組織)や若者団体との対話も継続し、ビジョンを深化させながら、国民と共に平和への潮流を起こしていきます。

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