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市民目線の行政窓口/待たない、書かない、行かない/静岡・裾野市

公明新聞2025年9月5日付 7面

 静岡県裾野市で、2023年度から「日本一市民目線の市役所」をめざして進めてきた改革が、今月で節目を迎えた。住民ができるだけ「待たない、書かない、行かない」で済む手続きのDX(デジタルトランスフォーメーション)化により、庁舎の混雑緩和や窓口での手続き時間の短縮などの効果が上がっている。

■手続き改善へDX進む/混雑緩和や時間短縮に効果

 市民目線のサービス改善を掲げる裾野市は、「DX方針」を策定した上で、23年度から今年度にかけて集中的に施策を実施。「待たない、書かない」で済む窓口の改革や、役所に「行かない」で手続きできるオンライン申請の推進を実現してきた。

 窓口改革の柱は▽窓口予約・発券システム▽「おくやみコーナー」▽「書かない窓口」の三つ。このうち今年1月に導入された「書かない窓口」は、職員が書類発行に必要な事項を来庁者から聞き取り、申請書を作成していく。来庁者は本人確認と署名のみで手続きを完了できるようになった。

 23年10月に始めた「待たない」の予約・発券システムは、事前に市ホームページで窓口の予約ができる仕組み。予約なしで来た人も庁舎にある発券機で予約できる。遺族が市役所で行う手続きのほとんどを済ませられる「おくやみコーナー」も同12月に開設された。

 一方、「行かない」のオンライン申請に関しても対応可能な手続きの種類を大幅に増やしてきた。公共施設の利用や高齢者向けバス・タクシー利用助成券の申請などはオンライン上で完結することが可能になった。また、申請件数の多い住民票や税証明などに関する発行手続きもオンライン申請に追加した。

 改革推進に当たっては、職員が利用者として実際に手続きしながら改善点を探る「窓口利用体験調査」を継続的に実施。その都度“市民目線の意見”を集約・反映させてきた。その一つとして、庁舎1階のレイアウトを変更し、住民票の発行や年金・介護の申請などをまとめて受け付ける「手続きゾーン」を設置。個別ブースで福祉的な相談に応じるエリアも設けた。

 市は改革の進捗を検証しており、例えば、昨年の繁忙期(ゴールデンウイーク中の平日3日間)に窓口で手続きした来庁者の平均滞在時間が21分と前年比でほぼ半減した。市民向けアンケートにも高い評価が寄せられ続けている。

 今月8日からは、住民基本台帳などに関わる情報システムを国が運営する共通基盤「ガバメントクラウド」に移行し、行政手続きのさらなる効率化を図っていく。これにより、計画した一連のDX化が完了する。

■“縦割り”打破して利用しやすく

 市議会公明党は改革を一貫して後押し。三富美代子議員は22年2月定例会で「書かない窓口」の導入などを要望してきた。市の担当者は「役所がよく言われる“縦割り”の打破を意識し、市民が利用しやすい行政サービスに努めていく」と述べた。