イラン情勢の緊迫化による原油高騰が止まらない。11、12日に開かれた米国とイランの停戦協議は合意に至らず、事態の長期化が懸念される。今後の日本経済に与える影響や政府が講じるべき対策とは何か。エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表取締役に聞いた。
--原油高騰が続いているが。
松尾豪・エネルギー経済社会研究所代表取締役 日本は原油輸入の9割を中東に依存している。この問題は長年にわたり議論されてきたが、調達先の分散化が進まないまま、イラン側がホルムズ海峡の通航権を掌握するという、事実上の封鎖が現実となってしまった。
先の協議が不調に終わったことを踏まえ、米国はホルムズ海峡の“逆封鎖”という奇策を打ち出したが、これにより海峡を通航できない国が増え、世界に出回る原油の量が減少し、さらなるエネルギー価格の高騰につながる恐れがある。
今後、仮に海峡が開通したとしても、ミサイル攻撃を受けたエネルギー施設などの復旧には3~5年の時間を要するとみられる。供給不足の長期化は避けられないだろう。
■調達コスト増加し電気・ガス値上げも
--国民生活、事業者への影響は。
松尾 足元では既に石油製品の値上げが出始めている。ホルムズ海峡の代替ルートを活用しても、時間やコストが今まで以上にかかるため、物価高への影響は長期化を見越すべきだ。
輸入ルートについては、ホルムズ海峡から日本まで通常片道平均で20日だったのに対し、ホルムズ海峡を通らないアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港やサウジアラビアのヤンブー港ルートは約30日、米国経由では最長60日以上かかる。輸送期間の長期化に加え、タンカー不足による船賃高騰も重なって、調達コストが跳ね上がるとともに、国際的な争奪戦も激化することが懸念される。
これにより高い原油が輸入されれば、第2波の値上げが押し寄せる。プラスチック、樹脂、合成繊維、電子機器の基板などの価格高騰に加えて、6月以降には電気・ガス料金も段階的に上昇することが予想される。
■政府補助金頼みは不十分、燃料など需要抑制も必要
--政府の対応をどう見るか。
松尾 ガソリン補助金などは、国民生活への急激な負担増を緩和する意味では重要だが、事態の長期化を見据えた持続的な政策とは言えず、不十分だ。
今後は、国民に燃料の節約を呼び掛け、消費抑制へかじを切ることが必要になるだろう。節約への議論をしないまま、財政支出を増やせば円安はさらに進み、インフレが加速することが懸念される。一方、限られた財源で社会を維持するため、必要な分野に絞って集中的に補助することが重要だ。例えばスーパーなどに商品がない状況を招かないよう、物流事業者に対する支援は考えなければならない。補正予算の編成なども含め、需要を抑えながら、国民生活の維持に必要な分野に優先的に補助していくべきだ。
■日本、アジア諸国が共同で精製・備蓄を
--中長期的な対策は。
松尾 日本の製油所の余力を活用し、東南アジア諸国と共同で精製・備蓄する枠組みの構築も考える必要がある。国内製油所の利用率は他国と比べて低い一方で、新興国では設備や資金が不足し製油能力は乏しいため、産油国から原油を受け入れ日本で精製・備蓄し、共同管理する取り組みも検討してほしい。
足元の原油高への対応とエネルギーの安定供給確保に向けた構造転換への政策が問われている。





