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自民との連立政権に区切り/公明が中道改革勢力の軸に/斉藤代表に聞く

本日無料公明新聞2025年10月12日付 1面

 公明党は10日、自民党との政策協議で、同党に求めていた「政治とカネ」を巡る問題の対応について、明確かつ具体的な協力が得られなかったため、自公連立政権はいったん白紙として、これまでの関係に区切りを付けることを決めました。政策協議の経緯や今後の自公関係、公明党の進むべき方向について斉藤鉄夫代表に聞きました。

■(協議の経緯)「政治とカネ」で隔たり。清潔政治の党是貫く

 --自民党との政策協議にどのような姿勢で臨んだのか。

 昨年の衆院選、今年の都議選と参院選での厳しい結果を受け、その総括に当たり党幹部が全国を回りました。多くの人の声を聴く中で、自民党の「政治とカネ」の問題に対する国民の政治不信は非常に強く、例えば、政治資金パーティーを巡る収支報告書の不記載議員に対する推薦が公明党の清廉なイメージを損ねたのではないかとの指摘を受けました。そのあり方を見直すことを含め、党の総括文書には「まさに今、党の存亡の危機にあり、今後の党再生は、これまでの延長線上にはない」との認識を明記しました。

 そうしたことから自民党との政策協議に当たり、これからも連立を組むのであれば、不記載問題に関する全容解明や、けじめのための具体的な行動、政治不信の根底にある企業・団体献金の規制強化がなければならないとの強い決意で臨みました。

 --協議の経過は。

 まず、4日に自民党の高市早苗新総裁と直接会った際、こうした「政治とカネ」を巡る問題に対する姿勢などの懸念を率直に伝えました。7日の政策協議でも、高市総裁に具体的な対応を強く要請しました。その中で、こうした懸念の解消が図られなければ、連立政権をつくることはできないと伝えました。

 一方、公明党内でも9日、緊急で党全国県代表協議会を開き、地方議員の代表から意見を聴きました。連立政権にとどまるのか、解消するのか、さまざまな意見は出ましたが、その前提として「政治とカネ」の問題解決に向けた自民党の明確な姿勢が必要であり、「安易な妥協はすべきでない」との声が大勢でした。

 これを受けた10日の政策協議で、自民党側の見解を聞いたところ、企業団体・献金の規制強化は「これから検討する」という不十分な回答。また不記載問題についても、新たに明らかになった事実に対する説明責任など全容解明に向けての具体的行動が示されませんでした。これでは政治への信頼回復はおぼつきません。

 --自民党の見解を受けた公明の対応は。

 公明党にとって「クリーンな政治」は党是であり、「政治とカネ」の問題解決は何としても断行すべきものです。公明党との意見の隔たりが大きい自民党から明確かつ具体的な協力が得られず、改革が進まないのであれば「次期臨時国会での首相指名選挙で高市氏の名前を書くことはできない」と伝えました。

 この協議後、高市総裁は「一方的に連立離脱を伝えられた」と記者団に述べられましたが、そんなことはありません。懸念が解消されなければ連立を組むことはできないと明確に伝えています。企業・団体献金の規制強化は、昨年から問題提起をしてきましたが、自民党はその都度「検討する」「調査する」を繰り返すばかりで、具体策を出してこなかった。その上で、今回も「検討する」というのでは、われわれは納得できません。

 これ以上、政治日程の停滞が許されない中で、公明党は連立政権への参画に一度、区切りを付けることを決断しました。これまで26年間、自公両党で知恵を出し合い、幅広い民意をくみ取って、合意形成を図ってきました。これまでの協力関係に対して、自民党の皆さまに心から感謝を申し上げます。

■(今後の国会対応)与党で培った経験や責任、党理念に基づき是々非々で

 --国会対応について、今後はどのような姿勢で臨みますか。

 これまで公明党は連立与党の一員として、さまざまな政策を推進してきた経験と大きな責任があります。政府・自民党と協力し合って進めてきた予算や法律、制度などについては、継続性の観点からも引き続き協力していきます。

 また今後も、当然ながら、何でも反対するような野党になるわけではありません。党の理念に基づいて、政策ごとに賛成すべきは賛成する「是々非々」の姿勢を貫いていきます。

 多党化が進む政治状況にあっても、公明党は政治を混乱させるのではなく、責任ある中道改革勢力の軸として政治の安定のために徹していきます。

■自民との選挙協力、党同士は白紙に

 --自民党との選挙協力については。

 国政選挙における、自民党との党同士の協力はいったん白紙にします。公明党が擁立する衆院小選挙区候補に対する自民党からの推薦は求めず、公明党から自民党候補への推薦も行いません。それでも、地域ごとに、人物本位、政策本位で応援できる地域も少なくないと思います。

■(党の方向性)公明らしさ発揮を追求。日本の課題解決へ全力

 --今後、野党ということになれば、公明党の政策実現力に影響が出るのでは。

 たとえ野党になったからといって政策が実現できないわけではありません。児童手当の創設や非核三原則の実現などの実績が物語るように、野党でも政策実現は可能です。さらに、長年与党として積み上げた知見や経験を持つ野党は公明党だけです。多党化の時代だからこそ、今後は、与野党の連携の軸となって、国民生活を守る政策と衆望に応える改革を実現し、存在感を発揮したいと思います。

 --公明党の今後の方向性は。

 まず何よりも「大衆とともに」との立党精神に立ち返り、「公明らしさ」をどうやって発揮していくかを追求していきたい。

 世界は今、分断・混迷の時代に突入しています。極端な右傾化やポピュリズムが台頭し、多党化の潮流が加速しています。まさに大きな転換期であるとの大局観に立って、人間主義に立脚した良識ある中道改革の党として、日本のために役割を果たしていきたい。日本が抱える難題を解決するためには、国民の政治に対する信頼回復はもとより、対立を超えた責任ある政治が不可欠です。

 その大きな柱となるのは、例えば▽東アジアおよび世界の平和と安定を図る外交・安全保障▽少子高齢化に対応した社会保障と税の改革▽日本経済を強くする成長戦略▽科学技術力を生かした新たなエネルギー政策の推進--などではないでしょうか。こうした政策の実現へ取り組んでいきます。

 今、公明党は党再生に向け、新たな一歩を踏み出したところです。激動の時代にあって、公明党が果たすべき使命は何なのか。公明議員は、それを自ら問い続けるとともに、国民のため立党精神を胸に結束して進んでまいります。