自民、中道改革連合、公明などの与野党で構成する「選挙運動に関する各党協議会」は14日、選挙期間中のSNS(交流サイト)利用の適正化に向けた法案を作成することで合意した。選挙におけるSNSの存在感や影響力が急速に高まることによる弊害が指摘される中、対策の行方が注目されている。 ■偽・誤情報の拡散が深刻化/投票行動ゆがめる懸念も 日本では、2013年の公職選挙法改正を機にインターネットによる選挙活動が解禁され、SNSを用いた投票の呼び掛けができるようになった。その後、スマートフォンやSNSの急速な普及とともに、SNSが選挙に与える影響が大きくなっている。 実際、資金や強固な組織を持たない候補者でも広く有権者にアピールできるチャンスが生まれたほか、これまで政治に無関心だった若年層などに対して政治への関心を高める役割を果たすなど、有権者が投票先を決める重要な情報源として位置付けられている。 一方で、選挙時のSNS利用で偽情報(フェイクニュース)や誤情報が急速に拡散される事例が相次ぐ。近年の選挙では人工知能(AI)技術を悪用した偽の音声や動画が選挙期間中に拡散され、候補者が誹謗中傷にさらされるケースが多発。有権者の意思決定をゆがめるリスクが指摘されている。実際、各種世論調査では「偽情報が投票行動に影響を与えるかもしれないという懸念を感じる」などとの答えが多い。 閲覧数に応じて広告収入が増えるSNS特有の仕組みを背景に、注目を集める発言をした投稿者が収益を得る「アテンション・エコノミー」がもたらす弊害への対応も重要な論点の一つに挙げられている。 これまで、インターネット上での情報発信による権利侵害に対する法整備が進められており、25年4月施行の「情報流通プラットフォーム対処法」では、誹謗中傷など権利侵害に当たる投稿に削除申請があった場合、原則1週間以内に判断・通知するようSNS事業者に求めた。 また、総務省は近年の国政選挙の際、偽情報や悪質な誹謗中傷に対して適切な対応を取るよう事業者側に要請を重ねている。 ■事業者に影響軽減義務付け こうした中、協議会ではこれまで、SNSなどを運営する大規模プラットフォーム事業者や有識者らから意見を聴取した上で議論を重ね論点を整理。具体的に4項目で合意に至った【表参照】。 まず、事業者の責任を明確にしている。偽の情報によって「選挙の公正の確保に及ぼす悪影響を軽減するための措置」を取り、対応状況の公表を義務化することで一致した。 ■AI表示やメール制限緩和 選挙運動の際にAIを使って生成した動画や画像の投稿については、AIが作成した旨の表示を投稿者に義務付ける。 一方、選挙運動用電子メールの利用制限を緩和する方針が盛り込まれた。現在、SNSのメッセージ機能を使って特定の候補者への投票を呼び掛けることが可能だが、電子メールではできない。そこで、電子メールでの選挙運動も可能にする。 このほか選挙運動に関連して、ウグイス嬢に代表される車上運動員については、選挙運動費用収支報告書に住所を全て記載しなくてもいいように変更する方針が確認された。 協議会では、27年春の統一地方選に間に合わせることを念頭に条文化を進め、今国会中の法整備をめざしている。 ■公明、収益化の停止を主張 協議会での議論で公明党は、事業者による影響軽減措置に関して、政府が今後策定するガイドラインに収益化の停止を盛り込むよう主張している。また、公職選挙法で定める選挙活動の自由を妨害する行為への対応の必要性も訴えている。 協議会で公明党の実務者を務める石川博崇参院幹事長は、「民主主義の根幹をなす選挙における課題解決は極めて重要で、進歩著しいSNSへの対応は喫緊の課題だ。一日も早い合意形成が得られるよう全力を尽くしたい」と述べている。