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公明再生への視点/選挙ドットコム 鈴木邦和編集長が語る
先の参院選の厳しい結果を受け、公明党サブチャンネルでは、国内最大級の政治・選挙サイトである「選挙ドットコム」の鈴木邦和編集長が出演。今後の党のあるべき姿などについて語り、好評を博しています。こうした中、11日には党として総括を発表しました。党再生への視点について、鈴木編集長に聞きました。
■(参院選の総括)“危機”示す正確な分析/一層踏み込んだ改革必要
--公明党参院選総括の受け止めを。
自民党支持層や無党派層からの信任不足や、既成政党に対する国民の拒否感など選挙の敗因を正確に分析しており、現状を「党存亡の危機」と位置付けた点からも、結果を真正面から受け止めた内容と評価しています。
一方で、今後の方向性については、選挙から2カ月という短期間で議論されたこともあって、物足りなさを感じます。
公明党は支持母体である創価学会と、その友人のもとで支持を拡大してきましたが、票が目減りしていることは明らかです。今の活動の延長線上での支持拡大だけでは足りず、これまでとは違う人に、いかに支持を広げていくかが党として問われています。
しかし、今回掲げたブランディング戦略や「サポーター制度(仮称)」などでは不十分だと思います。党の立て直しには、より踏み込んだ構造的な改革が求められているのではないでしょうか。
--新たな支持層の拡大に向けて何が必要か。
創価学会との関係性を正しく認識してもらうことです。大前提として、創価学会が公明党の支持母体であること自体は何ら問題はなく、そのことを卑下したり、ネガティブに思ったりする必要はありません。
しかし、支持層をさらに広げていくためには、多くの国民から公明党は「自分たちの代弁者」と見なされる政党になるべきです。そのためには、過去に公明党が採用してきた「国民会議」のような幅広い候補者の擁立を一部取り入れるといった点も検討していいのではないでしょうか。
■(高いマッチ率)無党派層、若者のニーズが党の中道的立ち位置に合致
--公明党の政策は多くの有権者には受け入れられていないのか。
決してそうではありません。むしろ若い世代の無党派層に対して、政策が最も受け入れられているのは公明党だと言えます。
選挙ドットコムでは、質問に回答して、自分の考えに最も近い政党を見つけられるオンラインツール「投票マッチング」を提供しています。先の参院選では約400万人が利用し、そのうち8割弱が無党派層で、40代以下が7割を占めました。その結果、マッチング率が最も高かったのは公明党で17・74%でした【グラフ参照】。
さらに注目すべきは、今回の選挙に限らず、近年の大型選挙で公明党は一貫して高いマッチング率を誇っていることです。投票マッチングを行う度に政党の順位が入れ替わる中、既成政党で常に上位に位置しているのは公明党の他にはありません。
■大衆に立脚した政治姿勢に共感
--その背景は。
公明党が最も中道な政党である点に尽きます。マッチングの結果から見て、無党派層や若者は、各政策分野において保守に偏り過ぎず、リベラルにも行き過ぎず、一番のボリュームゾーンである中道的な考えに集まる傾向があります。その考えに合致しているのが公明党の政策と言えます。
実際、中道リベラルな選択的夫婦別姓の実現をめざす一方、外交安全保障やエネルギー政策では現実的な路線の政策を志向する点を踏まえても、理念や政治的な立ち位置が無党派層や若者のニーズに最も合っている証しでもあります。
何より、公明党が常に高いマッチング率を誇るのは、公明党の大衆に立脚した政治姿勢が、無党派層や若者に受け入れられており、普遍的なものの表れとも言えます。公明党がブレずに掲げていく姿勢は間違っていません。
■(今後の戦略)コンテンツ増やし発信強化/女性支持の高さを強みに
--今後の課題は。
発信力を高める党の戦略転換が不可欠です。公明党に関するユーチューブ上の動画はわれわれの分析ツールによると、ほとんどが中立的な「内容」となっています。それは大手メディアが取り上げたものなどが大半を占めており、そもそもの絶対数も少ないからです。よりポジティブな内容の動画を増やすためには、コンテンツを増やすことはもちろん、公明党議員のネットメディアへの出演や切り抜き動画の活用、議員や支持者による動画投稿を増やすことが重要です。
また、インフルエンサーをはじめ党外の第三者に公明党について語ってもらうことも有効でしょう。
特にユーチューブのアルゴリズム(計算手順)は、支持者が動画の再生回数を重ねることで、そこから先に広がっていきます。その意味では、公明党はユーチューブ上で“勝てる”基盤があり、もっと伸ばせる余地があります。
--情報発信で意識すべきことは何か。
台頭するネットメディアでは、曖昧な情報はかえってマイナスになり、信頼を失う傾向が強く、真実を正確に伝えることが重要です。例えば、公明党と創価学会の関係など、誤解を恐れず正確に情報を提供した方が長期的には有権者から信頼されます。
機関紙である公明新聞の役割は大きく、党員・支持者向けの発信を続けるべきですが、党全体としては新しい支持層獲得のため、新たな発信チャンネルや手法を開拓する必要があります。
■変革のチャンス
--議員活動については。
公明党は一貫して女性の支持が高く、同性候補がいることで間違いなく投票行動に影響を与えるだけに、女性候補のさらなる増加は必須。しかし、従来の政治活動のモデルは男性中心で、女性が同様に活動を続けるには負担が大きいのが現状です。
女性候補を増やすためには、従来の活動モデルを見直す必要があるでしょう。例えば、子どもを持つ女性議員の政治活動は軽減してフォローする体制を設けるなど工夫すべきです。
党が変わるチャンスであり、日本政治にとっても党改革の成否は重要です。
すずき・くにかず 1989年生まれ。東京大学工学部卒。2012年政治サイト「日本政治.com」起業。東京都議会議員などを経て現職。現在は、自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の仕事にも従事。
■サブチャン 熱い議論が好評
マジで言っていいですか!?--。鈴木編集長は党サブチャンネルで、伊佐進一前衆院議員と“忖度なし”で討論。公明党への率直な評価を述べています。
鈴木編集長は今後の議席をシミュレーションすると公明党が「10年後に消滅の危機」だと指摘する一方、「公明議員は仕事ができる人しかいない」「政策的に正しい」と評価。党再生に向けて、アピールのあり方などアドバイスを送っています。