夢の宇宙“ガチてい談”が実現!--。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙開発に携わる内山崇氏と、中道改革連合の伊佐進一衆院議員、公明党静岡県本部顧問の新妻秀規前参院議員に、宇宙の可能性を熱く語り合ってもらいました(紙面で紹介し切れない内容は公明新聞電子版で読めます)。 ■内山、新妻両氏、飛行士試験に挑んだ“ネジが外れた人”同士の強い絆 --3人とも、宇宙への関わりがとても強いですよね。特に、内山さんと新妻さんは、宇宙飛行士候補者選抜試験を共に受けた“戦友”だと聞きました。宇宙との出合いと原点を教えてください。 内山崇氏 きっかけは、小学校5年生の時にTVで繰り返し見たスペースシャトル「チャレンジャー号」事故でした。悲惨な事故ではあったのですが、世界の最先端技術を目の当たりにし、「宇宙」への憧れが芽生えたんです。大学卒業後は、日本版スペースシャトルHOPE(宇宙往還機)プロジェクトに参画したいと思っていましたが、予算凍結により断念するも宇宙開発の現場に飛び込み、宇宙飛行士選抜試験の挑戦や、宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV)」の開発・運用に携わるようになったんです。 ■伊佐氏、はやぶさ帰還を強力に推進 新妻秀規・前参院議員 僕は幼少期に家族で行ったプラネタリウムに魅了され、星座が好きになりました。その後、天文学者のカール・セーガンが監修した宇宙ドキュメンタリー番組「コスモス」に熱狂。重工業メーカーに就職後、米国のボーイング社への出向時に宇宙開発の熱気に触れ、友人の一言で宇宙飛行士選抜試験に挑戦し、その時に内山さんと出会ったんです。 内山 宇宙飛行士をめざす方は“ネジが外れた人たち”が多くいる印象ですが、新妻さんもその一人でしたね(笑)。 新妻 学生時代、ラグビーに「首の骨を折ってもいい」と思って取り組んできましたが、宇宙飛行士にもしなれたら「死んでも本望だ」と本気で思ってました(笑)。 伊佐進一・衆院議員 まともなの僕だけやん(笑)。僕は、親と見に行った映画「宇宙戦艦ヤマト」やホーキング博士の宇宙物理学に魅せられました。大学在学中に周囲の「ものづくりへの異常な情熱」を前に「優秀な研究者たちを支える側になろう」と、役人として科学技術庁(当時)に入りました。 内山 宇宙開発には予算が必要なので、政治家や官僚の方たちの理解が欠かせないんです。 伊佐 官僚時代、小惑星探査機「はやぶさ」について「帰ってこーへんやん」と予算が削られそうになり、何度も財務省に突撃し直談判。最後は「予算を付けるからもう来るな」と言われ、計画を死守しました。 ■「はやぶさ2」が高速探査に成功。日本が誇る技術力の高さ証明 --先日、JAXAは、地球から約1億キロ離れた小惑星「トリフネ」の近くを高速で通過して観測する「フライバイ探査」に成功したと発表しました。その舞台裏についてはどうですか。 新妻 本来の大仕事を終えた「はやぶさ2」が、余生とも言える寿命の中で挑んだミッションなんですよね。秒速5キロ(時速1万8000キロ)という超高速で通過しながら、「トリフネ」をピンポイントで至近距離から撮影に成功。「北海道から沖縄の一円玉を射抜くような超高精度」(JAXA)と言われる技術に、日本のものづくりの技術力の高さを感じました。 ■「人」が決定的に不足。力を貸してほしい 伊佐 僕はいち早く、この話題を自身のユーチューブチャンネルで紹介。単なる科学探査にとどまらず、「地球に衝突する小惑星の軌道をずらす」という地球防衛(プラネタリーディフェンス)の視点からも重要です。まさに映画「アルマゲドン」の世界観ですね。 ■数字で測れないロマンがある。「有人宇宙輸送」の夢の社会へ 内山 最近は宇宙開発でも「お金(利益)になるのか」「どんな目に見える成果があるのか」という効率や実利を強く求められがちです。しかし、科学探査の本質は「なぜ地球にだけ人類が存在し、私たちはどこから来たのか」という、人類共通の飽くなき探求心にあります。みんなその答えを知りたいじゃないですか。宇宙に行きそれを突き止める挑戦には、数字では測れないロマンがあります。 --内山さんから、若者に伝えたいメッセージはありますか? 内山 今、日本の宇宙開発は「宇宙戦略基金」という資金面の強力な後押しもあります。しかし、決定的に不足しているのが「人」です。ロケットや衛星を作る技術者、データを解析する人材、プロジェクトをまとめる人材が足りません。宇宙だからといって特別な理系エリートである必要はなく、他業界でのプロジェクトマネジメント経験や、情報技術(IT)の知見を持つ異業種からの参入を喉から手が出るほど求めています。私の夢である日本から人を宇宙へ送る「有人宇宙輸送」の実現、その社会実装へ、ぜひ皆さんの力を貸してください。(この後、話題は「こうのとり」やアルテミス計画、宇宙技術のビジネス活用などにも。続きは、公明新聞電子版から。ぜひご一読ください) --内山さんが長年携わってこられた「こうのとり」も、日本の宇宙開発を語る上で欠かせない金字塔ですね。 内山 ありがとうございます。「こうのとり」が国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。開発が始まった1990年代当初、日本はまだ独自の有人宇宙技術や大型補給船の経験がなく、米国からは「日本なんかに大事な米国の物資を運ばせるわけがない」と、完全に〝塩対応〟だったんです。 新妻 世界から見れば、当時の日本の実力はその程度の評価だったわけですね。そこからどうやって信頼を勝ち取ったんですか? 内山 愚直に技術を証明するしかありませんでした。97年に技術試験衛星「ETS-VII(きく7号)」でランデブ・ドッキング技術を確立するなど、実績を積みました。そして決定的な転機が訪れます。2000年代、米国がスペースシャトルの引退を決定し、「宇宙ステーションの維持はどうするんだ」となった時、「日本が開発を進めている『こうのとり』にお願いしよう!」と見事なまでに手のひらを返してきたんです(笑)。 伊佐 米国からの技術者の投入もすごかったですよね。 内山 ええ。そこからは開発、製造、そして運用まで全て日本で行い、1号機から9号機までパーフェクトにミッションを成功させました。今では世界中が日本の技術を頼りにしています。そして、さらに次世代の補給機「HTV-X」へと進化しています。 新妻 「HTV-X」は、単なる「荷物運び」で終わらない工夫があると聞きました。ものづくりの観点から見ても、非常に興味深いです。 内山 まさにそこが日本の強みです。「こうのとり」は物資を運んだ後、不要なものを積んで大気圏で燃え尽きていましたが、「HTV-X」はISSから切り離された後、最大で1年半ほど宇宙空間にとどまることができます。その期間を利用して、さまざまな企業や研究機関が宇宙空間での「技術実証」を行える軌道上プラットフォームになっているんです。一度の打ち上げで二度も三度もおいしい、非常にスマートで日本らしい設計ですね。 --月面探査をめざす「アルテミス計画」など、今後はさらに、地球から200万キロメートル以上離れた「深宇宙」への挑戦が本格化します。国際的な競争と協調はどうなっていくのでしょうか。 新妻 アルテミス計画は、月の周りにステーションを作り、月面、そして火星をめざす壮大な国際プロジェクトです。ただ、米国の政権交代によって計画の優先順位が変わったりと、方針が揺れることもありました。日本の産業界も着実に準備を進めていますから、先行きが不透明になると現場はヤキモキします。しかし、人類が月・火星をめざすという大きなベクトルは変わりません。重要なのは、日本が国際的な合意形成の中で「ブレないハブ(中心)」として役割を果たすことです。 伊佐 政治・外交の視点から言えば、宇宙開発の最大の価値は「国際協力と平和の象徴」である点です。ISSはそもそも、冷戦終結後に旧ソ連の優れた宇宙技術が軍事目的で拡散するのを防ぐため、東西陣営が手を取り合って始まったという歴史があります。地上でどれほど国同士がいがみ合い、紛争が起きていようとも、宇宙ステーションのクルーたちは同じ釜の飯を食い、命を預け合っているんです。 内山 本当におっしゃる通りです。ISSの現場では、米国、ロシア、ヨーロッパ、日本も、政治的な対立とは無縁で、完全に一つのチームとして働いています。そこで、うまく機能しているのが、日本独自の「リーダーシップ」なんですよ。 新妻 日本人宇宙飛行士がISSの船長(コマンダー)を務めた時の話ですね。 内山 はい。大国同士の宇宙飛行士が少しギスギスしそうな時でも、日本の船長が「とにかく、夕食はみんなで集まって一緒に食べようぜ」と音頭を取ります。そうやって同じ食卓を囲むことで、和やかな空気と信頼関係を醸成したんです。中立的な日本人が間に入ることで円滑に回る。この日本の「調停役」としてのコミュニケーション能力は、今後のアルテミス計画でも極めて重要な役割を果たします。 --深宇宙へのロマンの一方で、最近は「宇宙技術が私たちの生活にどう役立つのか」というビジネス活用も進んでいますね。 伊佐 そこが今、一番エキサイティングな分野です。宇宙産業は今、一部の専門家や大企業だけのものではなく、無数のスタートアップが参入するビジネスの主戦場になっています。例えば、アフリカで公衆衛生に取り組む日本のベンチャー企業があります。コンゴなどでマラリアを媒介する蚊を駆除するために殺虫剤をまくのですが、無差別にまくと環境破壊になります。そこで彼らは、人工衛星のデータを使って「水たまりレベル」で川や湿地の分布を解析し、ピンポイントで効率よく対策を行っているんです。 新妻 身近な一次産業でも劇的な変化が起きています。先日、私が住んでいる静岡県沼津市の漁協に伺った際、漁師の方々が当たり前のように「衛星データを使って潮目を読み、そこへ一直線に向かう」と話されていました。経験や勘に頼るだけでなく、宇宙からのデータを使うことで、燃油を大幅に削減し、効率よく魚を捕っているんです。 伊佐 農業でも、衛星から田んぼの生育状況を監視して収穫量を予測したり、原油備蓄基地のタンクの蓋の高さから原油価格の変動を予測するような金融ビジネスまで生まれています。 新妻 さらに、日本の「地方創生」の起爆剤としても宇宙が注目されています。北海道大樹町や和歌山県串本町だけでなく、福島県南相馬市でも「宇宙港(スペースポート)」を造ろうという構想が熱を帯びています。南相馬や浪江町にはロボットテストフィールドなど最先端の研究施設が集積しており、ロケットの打ち上げ拠点を造る地力は十分にあり、公明党の県議・市議も奮闘しています。宇宙産業が東日本大震災からの「復興の力」になるはずです。公明党のネットワークを生かしながら、この挑戦を力強く後押ししていきたいですね。 うちやま・たかし 宇宙ステーション補給機「こうのとり」フライトディレクタ。2009年初号機~20年最終9号機まで、ISS輸送ミッションの9機連続成功に貢献。JAXA08年度宇宙飛行士選抜試験に挑戦し、最終候補者10人に残る。著書は『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』(SB新書)。