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「電子処方箋」でどうなるか

公明新聞2025年9月19日付 3面

 「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」を進める観点から、薬の処方箋をデジタル化した「電子処方箋」の運用が2023年1月から始まり、徐々に普及が進む。電子処方箋はどんなもので、どう使うか。まとめてみた。

■紙原本の持参が不要に/マイナカードでOK、重複投薬など防げる

 電子処方箋を利用する流れはこうだ。まず、電子処方箋に対応している医療機関の窓口で、顔認証付きカードリーダーに、健康保険証として利用登録したマイナンバーカード(マイナカード)を置く。画面上に表示される「過去のお薬情報の提供」に同意した後、処方箋の種類を選択する画面では「電子処方箋」を選択する。診察後、薬局でマイナカードをカードリーダーに置いて受け付けを済ませれば、薬を受け取ることができる。

 当面、電子処方箋を選んでも、医療機関では6桁の引換番号が記された紙の「処方内容(控え)」が渡される。この引換番号を訪問前に薬局に伝えておけば、薬を受け取るまでの待ち時間を省略できる。

 電子処方箋の場合、従来のように紙の処方箋の原本を薬局に持参する必要がない。そのため、一定の要件を満たした患者が、同じ処方箋を最大3回まで使って受け取れる「リフィル処方箋」を利用する場合、従来の紙の処方箋だと、薬を処方してもらう度に持参する必要があるが、電子処方箋ではマイナカードを持参すればよいので紛失の心配もなくなる。

 また、家族が患者に代わって薬を受け取る際も、引換番号と家族であることを証明するものを薬局で提示すればよいので、患者本人からわざわざ処方箋の原本を受け取る必要はない。

 処方歴を十分に把握していなくても、電子処方箋を利用する際は、医療機関や薬局では、専用サーバーを通じて、処方歴などが共有されるので、薬の重複や飲み合わせの悪い薬の併用も防ぐことができる。普段と異なる医療機関や薬局でも、処方歴を踏まえて、処方・調剤してもらえるので安心だ。

 患者自身も、マイナンバーの個人向けサイト「マイナポータル」を使えば、過去5年分の薬のデータをいつでも確認することが可能だ。

■薬局の負担軽く

 薬局にとっても電子処方箋を導入する意義は大きい。紙の処方箋に代わり、患者の処方情報をデータで取得できるため、薬の準備にかかる手間を省ける。

 また、処方内容に疑問や不明点がある場合、薬剤師は医療機関に問い合わせる「疑義照会」が義務付けられているが、電子処方箋ではあらかじめ、処方意図などの医師からの伝達事項が付記できる機能があるため、薬剤師が疑義照会する負担が軽減するとともに、医療機関との情報連携の質の向上にもつながっている。

 全国で調剤薬局を運営する株式会社アインファーマシーズの担当者は「電子処方箋により、患者への服薬指導など薬剤師が行う本来の業務に専念することができるようになっている」と語っている。

■被災地では

 災害時にも、電子処方箋が役立った。昨年、能登半島地震が発生した石川県のある地域では、道路の寸断などで被災者に処方箋を郵送することが困難な状態だったが、通信インフラは回復していたため、オンライン診療を行った上で、電子処方箋を発行し、被災者が住む地域の電子処方箋対応薬局で調剤を受けることができた。

■薬局の8割が導入済み/医療機関は1割程度。政府、普及へ新目標

 政府は当初、25年3月までに全ての医療機関・薬局に電子処方箋を普及させる方針だったが、薬局は8割で導入が進む一方、医療機関は1割程度にとどまっている。このため、今年7月、30年度までに全ての医療機関で電子処方箋を普及する新たな目標を掲げた。

 今後、医療機関が電子処方箋を利用しやすい環境を整備するとともに、導入を阻害する要因の解消に向けた新たな対策、周知広報の強化、効果検証などを実施していく方針だ。

■公明も推進

 公明党は、関係団体との意見交換や国会質疑などを通じて、電子処方箋の普及を後押ししてきた。昨年の衆院選重点政策では医療DXに向けて、「オンライン診療電子処方箋の普及」を掲げ、推進している。