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(クローズアップNOW)残業しても扶養外れず/「130万円の壁」、4月から新ルール

公明新聞2026年3月29日付 3面

 厚生労働省は、会社員の扶養に入るパート労働者らの社会保険料負担が生じる「年収130万円の壁」対策として、4月から年収要件を緩和し、実質的に上限を引き上げる新ルールを設ける。これまでは残業代を含めた年収の実績などで判定していたが、今後は給与収入のみの場合、原則として残業代を除外して計算することが可能になる。手取り減少を避けるための「働き控え」を解消し、深刻な人手不足の緩和につなげる狙いだ。

■給与収入のみなら要件緩和

 「130万円の壁」は、年収が130万円を超えると扶養から外れ、国民年金や国民健康保険の保険料の支払いが生じる年収の境目のこと。

 新ルールでは、扶養認定の判断基準が年収の「実績」などから「労働契約内容による見込み」を基本とする運用に改められる。具体的には、労働条件通知書などに規定された時給、労働時間、日数などから年収を算出し、繁忙期の残業代や休日出勤による突発的な臨時収入は年収見込みに含めないこととした。

 これにより、残業代を含めた実質的な年収が130万円を一定程度超えても、それが社会通念上妥当な範囲であれば、原則として扶養から外れずに済むようになる。超過額の具体的な上限基準は一律には示さず、最終的には扶養する側の健康保険組合などが判断する。

 政府はこれまで、人手不足による一時的な増収に限り、事業主の証明があれば連続2年まで扶養を維持できる特例措置を講じてきた。4月からの新ルールは、この対応を広げて実質的に恒久化するものと言える。これによってパート労働者らは繁忙期であっても、保険料負担による手取りの減少を気にすることなく、より柔軟に働ける環境が整うこととなる。

 なお、今回の運用改正は給与収入のみの人が対象で、不動産や配当といった他の収入がある場合は従前通り過去の収入実績などで判定される。

■パートら「働き控え」解消へ

 「130万円の壁」を意識した働き控えが近年、社会問題になっている。

 主に会社員などの配偶者に扶養されているパートやアルバイトの人は「第3号被保険者」と呼ばれ、自ら保険料を納めなくても年金を受け取れる。しかし、年収が130万円以上になると扶養を外れ、保険料を自ら負担しなければならない。

 この負担によって手取り額がかえって減少する「逆転現象」が起きるため、多くのパート労働者らが年末にかけて就業時間を調整する要因となってきた。この現象は「130万円のガケ」とも称され、働く意欲があっても制度がそれを抑制している現状は、個人だけでなく社会全体の損失と指摘されている。

 厚労省の調査(2021年)によると、配偶者のいる女性パート労働者の2割が就業調整を行っており、そのうち57・3%が「130万円の壁」を意識している。

 特に近年の物価高騰に伴う賃上げによる影響も大きい。流通や外食、繊維などの産業別労働組合UAゼンセンが今月19日に発表した26年春闘の妥結状況によると、パート組合員1人当たりの賃上げ率は平均6・92%(時給ベースで84・6円)となり、4年連続で過去最高水準を更新した。正社員は5・45%(月額ベースで1万8219円)で、パートの引き上げ率が10年連続で上回っている状況だ。

 賃上げが進む中で、パート労働者らが労働時間を増やさなくても時給アップだけで壁を超えてしまうケースが増えており、早急な対策が求められていた。今回の新ルールが働き控え解消につながるか期待される。

■年収の壁とは?

■社会保険料・税金の自己/負担発生し、手取り減少

 年収の壁とは、会社員や公務員に扶養されるパート労働者などが、一定の年収に達することで社会保険料や税金の負担が生じ、手取り額が減ってしまう年収額のボーダーライン。企業にとっては、働き手が手取りの減少を避けるために就業時間を抑える「働き控え」を招き、深刻な人手不足の要因となっている。

 社会保険料では「130万円の壁」のほか、従業員51人以上の企業に勤める場合などの「106万円の壁」がある。

 所得税が生じる「103万円の壁」は、2025年に160万円、26年には178万円へ引き上げられる見通し。