長期金利の上昇が著しい。それに伴い、日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金【別掲参照】の利率も上昇。月々の支払額が当初の見込みより大きくなり、返還中の人の生活が圧迫されていくなど、影響が懸念されている。 都内在住の女性Aさん(31)は、第二種奨学金を利用して私立大学を卒業した。卒業後は映像制作会社で働きながら、奨学金返還を進めている。 今年、Aさんの元に一通の封書が届いた。奨学金の利率が上がると予告する通知だった【写真】。これまでは利率が“ほぼゼロ”だったというAさんだが、見直し後は1%超に変更される。 「こんなに変わるのか!」。「利率見直し方式」を選択しても、5年前に通知を受け取った前回の見直し時は気にしなかったが、今回は違った。支払額の増加分ほど自身の給料は決して増えていない中、「もっと上がると、生活が苦しくなるかもしれない。『金利のある世界』のマイナス面に触れた思いがした」 ■現役学生、将来の支払額が不透明 影響を受けるのは、いま返還中の人だけではない。適用利率は卒業など貸与終了時に決まる仕組みであるため、市場金利が大きく変動する中、現役学生は将来の支払額を見通しにくくなる。将来設計にも影響を与えかねない。 都内の私立大学3年の男性Bさん(20)も第二種奨学金を利用する一人。家庭の経済事情から「奨学金なしで進学するのは無理だった」ため、月5万円の貸与を受け、週3回程度、焼き肉店でアルバイトもしている。 Bさんの入学時から現在まで、奨学金の利率は利率固定方式で約1・8%上昇している。この利率で返還総額を試算してみると、入学時の利率の場合より20万円以上高くなっていた。「ぜんぜん額が違う!」と驚きを見せたBさんは「これまで金利が上がったとニュースで見ても重みが分からなかった。『たかが数%で』と思っていたけれど、実際に計算するとめっちゃ重い」と話す。「今後さらに利率が上がるかもしれないと思うと不安だ」とも語った。 JASSOのホームページでも利率別の返還額が例示されている。月10万円を4年間借りた場合、適用利率0・5%では総額約505万円だが、3・0%になると同645万円まで跳ね上がる。 大学院まで進学する場合など、さらに貸与額が多ければ、より大きな影響を受けることになる。 ■公明、不安払拭へ「先手」/平木氏、利率上限「3%」維持訴え 奨学金の返済負担増を巡り、若者の不安払拭へ国会質問で「先手」を打ったのが公明党だ。 6月22日の参院予算委員会で平木大作国会対策委員長は奨学金の利率について、年3%の上限が設けられていることに言及。「現在返済中の人、これから奨学金を活用して学ぼうという人にとってセーフティーネット(安全網)になっていて重要だ」と意義を強調した。 その上で「マーケットに連動して上がってしまうと、奨学金の活用をちゅうちょすることが起こり得る」として3%の上限維持を主張。高市早苗首相から「利子負担の軽減に関する仕組みは維持する」との答弁を引き出した。 ■機構の「第二種奨学金」、「見直し方式」では市場の影響 JASSOの第二種奨学金は有利子で、卒業後は在学中の貸与総額に利子を加えた額を返還する。JASSO「奨学金事業に関するデータ集」によれば、2024年度の貸与件数は約62万件。同年度末時点で同奨学金を返還中の人(猶予中を含む)は310万人に上る。 利率の算定方法は2種類あり、利用者が選択できる。「利率固定方式」は一度決定した利率が返還完了まで適用され、将来的に市場金利が変動しても影響を受けない。一方、おおむね5年ごとに見直しが行われる「利率見直し方式」の場合、市場金利が上昇すると、より高い利率が適用されることになる。 第二種奨学金は、国債発行で調達した資金などを原資とする「財政融資」を活用しており、同奨学金の利率はJASSOが国から借り入れた財政融資資金を償還する時の利率と同率で設定される。 数年前は「利率固定方式」「利率見直し方式」ともに0%近辺だったが、金利の上昇に伴い上昇【グラフ参照】。26年6月で貸与終了を迎えた人の場合、固定方式で年2・922%、見直し方式でも同1・900%に達している。