今年7月、福島県沿岸部を縦断する「ふくしま浜通りサイクルルート(浜サイ)」(海側=全長約180キロ)が、日本を代表する自転車道「ナショナルサイクルルート(NCR)」に指定された。自転車旅を通じて、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みを体感できる「ホープツーリズム」(被災地学習旅行)としての新たな魅力の創出、国内外からの誘客促進と観光振興へ大きな期待が高まっている。=東日本大震災取材班 ■絶景やグルメ楽しみ、震災遺構で教訓学ぶ NCRは「日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルート」として国土交通省が認定する制度。安全で快適な走行環境や官民連携の取り組み体制--といった五つの指定要件を満たしたルートが選ばれ、国の観光プロモーションや財政支援を受けられる。 これまでに、瀬戸内海を渡る「しまなみ海道サイクリングロード」(広島県と愛媛県)など全国6カ所が指定。今回の第3次指定では、「浜サイ」を含む計6カ所が加わった。 浜サイは、いわき市から新地町までの「海側ルート」【地図参照】と阿武隈高地を巡る「山側ルート」(上級者向け)からなる。「海側」は、震災後に建てられた防潮堤の上を通る「いわき七浜街道」(全長約53キロ)を走る。白砂青松の海岸線と防潮林の松並木を一望できる唯一無二のサイクリングルートだ。北上すると、今年5月に開園した県復興祈念公園が見えてくる。東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)や震災遺構・請戸小(浪江町)が隣接し、地震・津波・原発事故の複合災害の記憶と教訓を学ぶことができる。 また、復興拠点市場「浜の駅松川浦」(相馬市)では、福島県沖で水揚げされた魚介類「常磐もの」の浜焼きなど、ご当地ならではの季節の味覚に出会える。 ルート上には、距離や分岐点が分かる路面表示や案内看板が設置され、迷わずペダルをこげる。休憩・宿泊施設「サイクルステーション」や発着点となる「ゲートウェイ」4カ所も設けられている。周辺施設にはレンタサイクルもあり、自転車がなくても気軽にサイクリングできる。今年4月からは、JR常磐線(いわき駅-原ノ町駅間)で自転車を解体せずにそのまま乗車できる「サイクルトレイン」の本格運用も始まった。 県と沿線15市町村、自転車・観光関係者らでつくる「ふくしま浜通りサイクルルート推進協議会」は、初心者や観光客が気軽に体験できる地域ごとの周遊コース(10キロ未満)を年度内に設定する方針だ。 ■観光振興へ公明推進 「防潮堤の上から望む太平洋のオーシャンブルーは絶景。標識も分かりやすく、安心して楽しめた」。今月2日、いわき市で開かれたNCR指定記念のライドイベントで、富岡町役場の男性職員は、笑顔を見せた。 この職員をはじめ、参加した自治体関係者ら約30人は、ゲートウェイの一つ「いわき新舞子ハイツ」を発着点に、塩屋埼灯台などを巡る約16キロを約2時間かけて走行。参加者はレンタサイクルを利用し「気軽に乗れて便利」と語り、心地よい潮風を受けながら浜サイの魅力を体感した。 この日、ロードバイクを持参して参加した公明党の真山祐一県議は、浜サイ推進協議会アドバイザーでNCR審査委員の髙橋幸博さん(アーチ・ヒーロー北海道代表)と懇談。髙橋さんは「NCRの指定はゴールではなく通過点。その土地や人の温かさに触れ、浜サイ効果を地域に波及させる取り組みが重要だ」と語った。 * NCRは、中道改革連合の赤羽一嘉副代表が国交相(当時、公明党)時代の2019年に創設。浜サイの指定を巡っては、赤羽氏が21年4月、いわき市の観光業関係者との懇談で、復興加速策として「浜通り全体でNCRをめざしてはどうか」と提案。これに真山県議が呼応した。 同年6月、党福島県議団(今井久敏代表)が、広域サイクルルートを整備し、NCR指定を国に働き掛けるよう内堀雅雄知事に要望。議会では真山県議がサイクルツーリズム施策を強く訴えてきたほか、自らロードバイクでルートを試走しながら県や地元自治体と連携。浜サイ推進協議会にオブザーバーで参加し、NCR指定に向けた自転車行政を強力に推進してきた。 25年6月の与党「第14次復興加速化提言」には、公明党の主導で「NCR指定をめざし整備が進む、浜通りサイクルルートを生かした滞在コンテンツの充実・強化」が盛り込まれるなど、党のネットワークで後押ししてきた。 真山県議は決意する。「かつて立ち入りが制限されていた地域を走れるようになったこと自体が復興の一歩だ。サイクルツーリズムの推進で福島の魅力発信に努めたい」 ■「感動の資源」世界に発信/超党派「自転車活用推進議員連盟」会長代理の赤羽一嘉衆院議員 地震、津波、原発事故という未曽有の複合災害に見舞われ、大変な中で前を向いて頑張る福島を「観光立国としてよみがえらせたい」との思いを強く抱く中、2019年に国土交通相に就任。自転車活用推進法に基づき、サイクルツーリズムを通じた観光施策を推進するため、NCRを創設しました。 このたび、真山祐一県議の尽力でNCRに認定された浜サイには、自転車を通じて被災地の復興の姿を学べる「ホープツーリズム」など、世界に類を見ない感動の資源があります。 今後もサイクルツーリズムを通じた浜通り地域の魅力発信に力を注ぎ、福島再生に全力で取り組んでいく決意です。