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(今夏の平均気温、平年の+2.36度)異常な暑さ、来年以降も?/“数年に一度”になる可能性/国立環境研究所 一ノ瀬氏が指摘
朝晩に秋風を心地よく感じる季節を迎え、改めて思う。今年の夏は、とにかく暑かった。それもそのはず、6~8月の日本の平均気温は平年と比べて2.36度も高く、1898年の統計開始以降で最高だった。“最も暑い夏”は3年連続の出来事だ。異常な暑さは来年以降も続くのだろうか。国立環境研究所の一ノ瀬俊明シニア研究アドミニストレーターに取材した。
今夏の暑さは記録ずくめだ。6~8月の平均気温の記録を塗り替えたほか、群馬県伊勢崎市で41・8度を観測するなど歴代最高気温の1~4位を独占。全国914地点のうち、延べ30地点で40度以上を観測し、過去最多を更新した。
気象庁担当者は「130年近い統計で断トツの1位であり、明らかに異常な高温だ」と指摘する。原因については、温暖化で気温が底上げされていることに加え、海水温の上昇でチベット高気圧が強まり偏西風が北に押し上げられたほか、太平洋高気圧が張り出すなど、不都合な要因が重なった【イラスト参照】との認識を示した。
気になるのは、こうした異常な暑さが来年以降も続くのかどうかだ。一ノ瀬氏は「過去にあったことは当然、これからもあると考えていたほうがいい。予測は簡単ではないが、数年に一度は今年と似たような状況になる可能性がある」と警鐘を鳴らし、異常な暑さを日常として“適応”していく必要性を指摘する。
■適応に向けた街づくり進めよ
暑さへの適応策について一ノ瀬氏は、日傘の使用や着衣の工夫など個人レベルの取り組みは自然と進んでいるとした上で、「行政は、高齢者をはじめとする暑さに弱い人や、暑さ対策にお金を掛ける余裕がない人のための街づくりを進めるべきだ」と強調。街路樹の下で人が休める場所を作ったり、風通しのいい空間を確保したり、気化熱で周辺の温度を下げる効果がある舗装材を使用することなどを提唱する。
ただ、こうした取り組みは予算がかさみ、自治体側に利点がないと採用されない。そこで一ノ瀬氏は、自治体が暑さ対策を盛り込んで公共インフラを設計すると国から優遇される仕組みの構築を訴える。また、在宅ワークの普及拡大や暑さに応じた勤務時間の変更なども提案し、「夏に行われているスポーツイベントや選挙などを涼しい時期にずらすのも一つの方法だ」とも述べている。
■国は熱中症対策を推進
2024年の熱中症による死者数は計2160人(確定値)に上り、地震や水害による年間の犠牲数を上回る。うち85%は高齢者であり、対策を促すため政府は、21年度から熱中症のリスクが高まった際に注意を呼び掛ける「熱中症警戒アラート」を運用する。
また、危険な暑さへの適応策として国土交通省は、同省の地方整備局が発注する土木工事を対象に、真夏の現場作業を休む「夏季休工」の導入を検討する。
暑さを踏まえた労働環境の改善に関して政府は今年6月、職場での熱中症対策を義務化。熱中症の恐れのある労働者を早期発見し、速やかに医療機関を受診させる手順を定めることなどを義務付けている。
■公明、冷房の適切利用へ電気・ガス代補助を実現
公明党は、国会質問や政府への提言を通じて熱中症対策を推進してきた。
例えば、熱中症による救急搬送の約4割が室内で発生していることを踏まえ、“電気料金を気にして冷房を使わない”といった事態を避けるため、今年7~9月に電気・ガス代の補助を実現。標準的な家庭で計3000円程度の負担減に。
熱中症警戒アラートよりも一段高い基準で、2024年から運用が始まった「熱中症特別警戒アラート」の創設にも寄与した。
全国の公明地方議員も、同警戒アラートが出た際に開放される、冷房が効いた休憩場所「指定暑熱避難施設」(クーリングシェルター)の指定拡大を進める。
岡本三成政務調査会長は「今後も異常な暑さへの適応を進める対策の充実を図り、国民の命と健康を守っていく」と述べ、「気候変動対策にも、さらに力を入れる」と強調した。