青森県黒石市は今月から、クマ被害の軽減へハンターの報酬を増額する。地元猟友会から「資金面で活動の継続が困難だ」との声を公明市議が議会で取り上げて実現した。このほか市は、箱わなの増設や、捕獲検知システム「わなベル」の導入などによりクマ対策を強化する。
今月1日、過去最速でツキノワグマ出没注意報が発表された青森県。昨年はクマの出没が1年間に計3333件を記録し、捕獲数は全国5位の1246頭に上った。このうち、黒石市では過去最多の90件の出没を確認し、41頭捕獲。リンゴ園での食害や、紅葉の名所「中野もみじ山」での出没により観光にも打撃を与えた。
黒石市で駆除に当たるのは南黒猟友会(佐藤孝文会長)。約30人いる会員のほとんどが仕事を抱え、平日の日中はわずか3人で対応している。箱わなのエサ交換も同会の役割で、20基以上のわなを回るのに車で約100キロも移動。ほぼ毎回、出動する木川武光さん(79)、佐々木幸逸さん(70)は「会員の高齢化もあり、人材不足が否めない」と話す。
■遠隔確認できるわな設置で負担を和らげ
「命の危険も伴う中で、対価が低すぎるのではないか……」。昨秋、公明党の工藤俊広市議は木川さんと佐々木さんから活動状況を聴きながら、報酬引き上げが急務だと痛感した。市は2025年4月、前年のクマ出没多発を受けて時給を898円から1500円に引き上げていた。しかし、物価高騰の影響で弾薬やガソリン、エサの費用が上昇し、ハンターの負担は増え続けるばかり。「支出が多く活動を続けていくのは大変だ」との言葉を工藤市議は受け止め、25年9月定例会と同12月定例会でクマ被害対策を迫った。「猟友会メンバーの報酬加算を検討すべきだ」と訴えたほか、クマの捕獲を検知するシステム「わなベル」の早期導入を促した。
これを受け市は、クマ被害防止へ対策を強化。今月から国の「鳥獣被害防止総合対策交付金」を活用し、時給を500円増の2000円へ引き上げた。また市独自で「鳥獣被害対策協議会補助金」を新設し、成獣1頭につき2万円、幼獣(体長80センチ未満)に1万円の捕獲報酬を支給する。
このほか、見回りの負担を削減するため「わなベル」を9基用意。これは株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック(青森県平川市)が開発した機器で、既存のわなに設置すれば、捕獲情報がメールなどで通知される仕組みだ。市内の東西の端など、移動距離が長くなりやすい地点を中心に設置するとしている。
市農林課は、狩猟免許の更新費用への半額補助や箱わなの増設に加え、「狩猟免許の新規取得、装備品購入へ3分の1程度の補助も始める予定」と方向性を示している。
先日、工藤市議と懇談した木川さん、佐々木さんは「報酬が上がり、資金面での悩みが軽くなった」と謝意を伝えた。工藤市議は「クマ被害を最小限に抑えられるようさまざまな対策を推進する」と応じた。





