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(識者の視点)衆院選後の日本政治/国際協調の自立的外交を/日本総研国際戦略研究所特別顧問 田中均氏

公明新聞2026年2月22日付 1面

積極財政の中身示せ

 先の衆院選は、自民党の戦略勝ちだった。減税など野党的な争点を自ら取り込み、“争点つぶし”を徹底的に行った。さらに、高市早苗氏の「初の女性首相」、「決める政治」という刷新感を前面に出したイメージ選挙が奏功した。

 強固な政権基盤を得た高市首相が掲げる政策には、危機管理投資・成長投資など、実現への期待感もある。ただ単なるイメージだけで政治は行えないのも事実だ。

 例えば「責任ある積極財政」。特に「責任」の部分が重要で、十分な財源を示すことなく、消費税減税を乱暴に進めれば、マーケットから見放され、円安・長期金利の上昇を招く。インフレ・物価高は国民生活を直撃し、日本の国家財政への信頼も失墜しかねない。

 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、防衛予算拡充だけでなく、アジアや周辺国との関係改善への外交努力も重ねるべきだ。安全保障上、米国との関係は重要だが、トランプ政権の戦略は、自国第一主義、他国との取引重視に変質しており、もはや戦後の体制である米国のリードの下での国際協調体制は崩れている。

 欧州は、米国依存低減へ自国の国防能力を上げるとともに、インドや中国、南米との関係を強化し、防衛策を講じている。一方、高市政権は米国へ一層依存していく姿勢を示している。米国が変質していることを肝に銘じ、アジアとの関係を“てこ”に、米国に物申せる自立的な外交を進めるべきだ。

■穏健な抵抗勢力必要

 一般的に、政権基盤が非常に強くなると、首相や政府が重要な政策を乱暴に実行しがちだ。そうした危機感から、私は、強硬右派といわれる高市氏に歯止めをかけるためには穏健な抵抗勢力が必要だと考えて中道に期待した。しかし衆院選の結果、中道は誰も予想できなかったような大敗となった。

 中道を立て直すには、政党としてのアイデンティティーを磨くべきだ。高市政権に対抗する「平和を守る勢力」として軸足を明確にしてはどうか。公明の強みである国民目線も大事にしてほしい。

 また国会では、単なる批判・追及ではなく、国際協調重視の外交を求めたり、放漫財政への危惧をただすなど、具体的で責任ある対案を示す専門性の高い議論を展開し、存在感を示すべきだ。そのためには、能力のある若手や中堅議員の積極的な登用も重要だ。短くても心に刺さる「パンチライン」とイメージ戦略を構築できなければ、どんなに良い政策も国民に届かない現実を直視すべきだ。

 1947年生まれ。元外務審議官。小泉純一郎首相(当時)の訪朝や日朝平壌宣言など多くの外交案件を主導。