医療用の放射性同位元素(ラジオアイソトープ=RI)を含む「放射性医薬品」による「核医学治療」への期待が高まっている。内服や注射で、がん治療ができ、患者の負担が軽いからだ。一方、RIの安定供給などが課題となっており、公明党はRIの国産化を一貫して訴え、政府を動かしてきた。
■全身に広がる腫瘍でも効果的
放射性医薬品による治療は、内服や注射で投与するだけで、薬剤が腫瘍へ到達し、その内部からピンポイントの放射線治療を行う。体にメスを入れる手術や外部から放射線を当てる一般的な放射線治療に比べて、より全身に広がった腫瘍でも患者負担が少ない効果的な治療が可能だ。
同医薬品は、がん細胞に集まりやすい物質と、放射線を出すRIを組み合わせたもの【図参照】。患者の体内に取り込まれると、腫瘍などの病変部位に集まって放射線を出すことで、がん細胞を死滅させる。これにより、病変以外の臓器の機能を保つことができる。
がん細胞に集まりやすい同医薬品の仕組みは、がんの有無や位置を調べる検査にも活用されている。検査も治療も共通のメカニズムで行われることから、横浜市立大学付属病院の高野祥子講師は「検査の段階で、治療の効果や副作用を予測することが期待される」と話す。
同病院では、消化器や肺などに発生する希少がん「神経内分泌腫瘍」や、前立腺がんなどに対する核医学治療を行っている。神経内分泌腫瘍については、手術できない患者向けの治療薬が2021年に承認された。前立腺がんでは、転移があり、ホルモン治療が効かない患者向けの治療薬が25年に承認された。
■患者から微量の放射線/専用病室が必要だが不足
治療薬の投与直後は、患者から微量の放射線が出るため専用病室で数日間の入院が必要となる。ただ、治療の普及に伴い専用病室は全国的に不足している。国は22年の規則改正で、一般病室に防護策を追加した「特別措置病室」を規定した。
同病院では、4部屋の特別措置病室を運用している。高野講師は「特に、放射性物質が含まれる尿の管理が重要だ。当院は過去に専用病室を持っていた経緯があり、排水処理設備が残っていたのでスムーズに導入できた。設備や放射線を管理できる専門人材の面で、導入のハードルは高い」と指摘する。
また、同病院核医学診療科の石渡義之部長は「患者のニーズは大きい。できる限り患者を受け入れているが、待機期間が生じている状況だ。新薬の登場も見据え、病室の確保など体制整備は急務だ」と話していた。
■輸入頼り、供給に不安
放射性医薬品による治療への期待が高まる一方、原料となるRIは海外の原子炉で作られ、日本は大半を輸入に依存している状況だ。
例えば、年間65万件以上の画像診断に使われる「テクネチウム99m」については、現地の原子炉の計画停止や空輸トラブルなどで幾度も供給不安に見舞われてきた。前立腺がんの高い治療効果が確認され、世界で研究開発が加速する希少な「アクチニウム225」も、ほぼ全量を輸入に頼る。
■公明、国産化へ政府を動かす
こうした実情から、公明党は21年5月の参院決算委員会で、国内の原子炉を活用したRIの国産化を提案。その後も政府に働き掛けてきた結果、内閣府原子力委員会は22年5月、党の主張を反映した製造・利用に向けた行動計画を決定した。
計画では、日本原子力研究開発機構の研究用原子炉「JRR-3」(茨城県東海村)でテクネチウム99mの原料「モリブデン99/テクネチウム99m」、高速実験炉「常陽」(同大洗町)でアクチニウム225を製造する目標などを掲げ、取り組みが進められている。
日本医用アイソトープ開発準備機構の諸岡健雄理事は「放射性医薬品の実用化に向けては、製薬企業、原子力などの研究機関、医療機関、行政など多くの関係者の協力が不可欠だ。関係者が一堂に会して今後の方向性について議論する組織体が必要だ」と指摘する。
昨年5月の参院決算委員会では、公明党の秋野公造、三浦信祐の両参院議員が、RIを作るための原料となる放射性物質の確保や、行動計画の改定などを政府に要請。これを受け、原子力委員会は今年4月、専門部会を設置。RIを開発・製造する企業や医療現場への支援、行動計画の改定などを議論する。
三浦氏は「放射性医薬品が一日も早く患者に届くよう、国を挙げた取り組みを強力に推進する」と決意している。





