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(大阪・関西万博ルポ)注目浴びるコモンズ館/5施設内に94カ国が出展/予約不要で並ばずに入場
開幕から4カ月が経った大阪・関西万博は、累計来場者数(8月23日時点)が1700万人を超えた。なかなか予約が取れないパビリオンもある中、ほぼ予約不要で並ばずに入場でき、かつ人気を集めているのが、複数の国が共同で一つの建物に出展するCOMMONS(コモンズ)館だ。コモンズA、B、C、D、Fの5施設に94カ国のパビリオンが入っている。コモンズ館で、どのような人々の交流や文化の触れ合いが起きているのか、現地を歩いた。=関西支局・衛藤直幸
■VRなどを活用し特色演出する工夫
7月29、30日と8月3日の3日間、コモンズ全5館を歩き回った。このうち25カ国が入るコモンズDでは、パキスタンのパビリオンの前に長蛇の列が。そこでは、同国特産品のピンク色の岩塩「ピンクソルト」の魅力を紹介。約20センチ大のピンクソルトがいくつも鉄棒に串刺しされた柱が何本も並び立ち、地面にも敷き詰められている。全体の総重量は約12トン。岩塩に囲まれた幻想的な空間になっており、手で触れることもできた。
ピンクソルトは、酸化鉄を含むことで赤みが出てピンク色になり、酸化鉄の含有量が増えるほど色も濃くなるという。現地スタッフは「ミネラルが豊富で、美容効果やリラックス効果などが期待できる」と話す。同パビリオンには、50分に1回の割合でピンクソルトの粒子が噴射される。岩塩を含んだミストを浴びることで伝統的な塩療法を体験できた。
パキスタンのパビリオンに訪れた女性は、輝きを放つピンクソルトに触りながら、「きれいで癒やされる」と笑顔を見せていた。
11カ国が入るコモンズC内のスロベニアのパビリオンでは、映像ディスプレーで景観や自然の美しさなどを表示。さらに、同国の景色をVR(仮想現実)で楽しむことができる。ブース内に固定された自転車のペダルをこぎながらVRゴーグルを着用することで、同国の山道でサイクリングをしているような気分が味わえた。
このVRを体験した小学1年生の男の子は「少し怖かったけど楽しかった」と興奮気味に話してくれた。
ほかにも、国内に温暖湿潤気候や地中海性気候など五つの気候区分が存在するクロアチアのパビリオンでは、延長13キロのパイプとパイプ内を流れる3トン以上の水の温度調節を利用した冷暖房システムで、クロアチアの気候をその場で再現。同国内にある45の気象観測所からリアルタイムで送られるデータに基づき、気候の違いを体感できる。
また、壁に設置されたモニターには、サーモグラフィーで周囲の人の体温やブース内の温度変化が色で表示される。パイプに触れた男の子は「寒っ! 冷たい!」と驚いていた。
■歌とダンスで聴衆巻き込みにぎわう
7月29日の夕方、コモンズDを訪れると施設内のセンターステージに人だかりが。そこでは西アフリカのサハラ砂漠の南に位置する国・ブルキナファソの伝統的な音楽が披露されていた。同国の伝統楽器であるバラフォンやジャンベなどの演奏に合わせ、歌とダンスで会場は大盛り上がり。途中、演者が聴衆を誘い一緒に踊る場面もあった。
同国のパビリオンは、伝統楽器を展示しており、来場者も直接触れることができる。スタッフがブース内で楽器を楽しんでいたところ、急きょ施設内で歌と演奏が始まり音楽イベントに発展した形だ。
同国の伝統的な歌やダンスは即興が基本で、パフォーマンスと交流を通して人と垣根なくつながっていくのが一つの文化だという。演奏スタッフは今回の即興イベントについて、「万博の成功を祈るメッセージを込めた」と話した。
コモンズBのジャマイカのパビリオンでは、地元産の2種類のコーヒーの試飲会なども行われている。今回、コモンズ館を巡ってみて国籍や年齢を問わず、さまざまな人が文化の多様性を五感で感じている場面を何度も見た。予約不要で待ち時間がほとんどなく、たくさんの国を周遊するような感覚に浸れるコモンズ館。閉幕まで2カ月を切る中でぜひ訪れてほしいと切に思う。