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(東日本大震災13年9カ月)町の魅力と復興の姿を発信/福島・浪江の「なみえアベンジャーズ」

公明新聞2024年12月11日付 3面

 東日本大震災東京電力福島第1原発事故によって全町避難を余儀なくされ、一時は“住民ゼロ”となった福島県浪江町。2017年3月に町東部で避難指示が解除され、町の復興の進展に伴い町民の帰還や移住が進んでいる。こうした中「町民みんなをヒーローに」と町に住む若者有志が立ち上がった。その名は「なみえアベンジャーズ」。戦隊姿で町の魅力と復興のまちづくりを発信する“青春グラフィティ”をお伝えする。=東日本大震災取材班

■“戦隊”で地域を盛り上げ

 先月23、24の両日、浪江町で「十日市祭」と「東北五大やきそばサミットinなみえ」が開かれ、約1万人が訪れた。会場を「なみえアベンジャーズ」が盛り上げた。

■大堀相馬焼、タマネギなど特産品、焼きそば、「水素タウン」をアピール

 「大堀相馬焼の特長をよく理解し、その良さを若い人にPRしてくれるのでうれしいね」。大堀相馬焼協同組合の半谷貞辰理事長(71)は「大堀相馬焼ウーマン」の活躍に拍手を送る。大堀相馬焼ウーマンは同町出身の34歳。震災前は観光に関わる仕事をしていた。「器には作り手の人柄が表れる。作者の思いと、震災も乗り越えた伝統工芸の心意気を伝えたい」と力を込める。

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 町は震災後、ブランドタマネギ「浜の輝」の生産に乗り出した。大玉で甘みが強く生でも食べられる。浪江町タマネギ生産組合の松本善郎代表(67)は「ヒーロー姿で作業を手伝う若者が話題になり、農家も元気をもらっている」と「オニオンウーマン」を評価。“中の人”は他県から移住してきた19歳の“農業女子”。「未熟者ですが新しく生まれ変わりつつある町のために頑張る」と決意する。

 2019年からエゴマの栽培・加工を営む緒形亘さん(32)は戦隊「なみえアベンジャーズ」の第1号「エゴマン」として奔走する。

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 町は復興への「なみえ水素タウン」構想を掲げ、太陽光発電による水素製造・供給や燃料電池車の導入を進めている。町が連携協定を結んでいる住友商事の現地駐在員として奮闘するのは澤村なつみさん(32)。「水素を身近なエネルギーとして町民に感じてもらい、ゼロカーボン社会の実現に貢献できれば」と意欲を燃やし、週末は「水素ウーマン」に変身する。

 「なみえアベンジャーズ」の発起人、前司昭博さん(43)は震災前から“ご当地グルメ”「なみえ焼きそば」をアピールするまちおこし団体「浪江焼麺太国」で活躍してきた。情報を発信し、住民帰還につなげようと町に住む若者と戦隊を結成。焼きそばの麺にちなみ「極太マン」と名乗る。

 このほかアベンジャーズには「焼きそばマン」、筋肉自慢の町職員「マッスルマン」、県外から移住してきた「移住マン」、漁師の「しらすマン」、農家の「ニンニクウーマン」が集結。現在、10人のメンバーが「真面目にふざけて町おこし」を合言葉に、浪江に暮らす人が輝く「全町民ヒーロー化」へ挑んでいる。