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解消急がれる「130万円のガケ」
パートやアルバイトで働く人の間では、「年収の壁」を意識して働き方を調整する動きが少なくない。中でも「130万円の壁」は、年収がこの基準を超えると社会保険料の自己負担が一気に生じ、手取りがかえって減る場合があることから、「130万円のガケ」【図参照】とも呼ばれている。働き手の問題にとどまらず、人手不足が深刻化する企業や日本経済にも影響を及ぼしかねないため、解消が求められている。
■社会保険料の自己負担が発生し、手取りが減少
そもそも年収の壁とは、社会保険料や税金の負担が増える年収額のボーダーラインを指す。このうち、手取りの逆転現象が生じるため、働き控えを生じさせている大きな要因と指摘されているのが社会保険に関わる壁だ。
その年収基準は二つある。
一つは「106万円」。一定の要件を満たす短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する基準だ。具体的には、従業員51人以上の企業で週20時間以上働くなどの要件を満たす場合、年収が106万円を超えると社会保険に加入することになり、手取りが減る。
一方で、保険料は会社と折半である上、将来の年金額が増えるほか、病気や出産時の給付といった保障が受けられるメリットもある。
その上で、106万円の壁については制度の見直しが進んでいる。2025年6月に成立した年金制度改革法では、106万円相当の賃金要件(月額8・8万円)を撤廃することが決まった。週20時間以上という時間要件は残るが、現在は従業員51人以上となっている企業規模要件が段階的に縮小・撤廃される。
現在、大きな焦点となっているのが、もう一つの基準である「130万円」だ。
主に会社員などの配偶者に扶養されているパートやアルバイトの人は「第3号被保険者」とされ、年金保険料を納めることなく将来の年金給付を受けられる。しかし、年収が130万円を超えると社会保険の扶養から外れ、勤務条件に応じて国民年金や厚生年金に加入する必要が生じる。
国民年金に加入する場合には、社会保険料を自分で負担する必要が生じる一方、将来受け取る年金額は変わらない。負担だけが増え、手取りが急に減りやすいことが130万円のガケと呼ばれる理由だ。
■「働き控え」が誘発され、企業の人手不足も助長
130万円のガケが、実際の働き方に影響を与えていることは、政府の調査からも見て取れる。
厚生労働省が21年に実施した実態調査によると、配偶者のいる女性パートタイム労働者のうち約2割が、年収を抑えるために就業時間や日数を調整している。
こうした就業調整を行っている人の57・3%が130万円のガケを意識しており、所得税がかかり始めるボーダーラインとして世間の関心が高まった「103万円の壁」を意識していると回答した人の割合を上回っていた。
130万円のガケが働き控えを誘発し、企業の人手不足を助長する大きな要因の一つであると言える。
一時的な収入増で年収が130万円を超えた場合でも、事業主の証明があれば扶養内にとどまれるようにするなど一定の配慮措置は講じられているが、130万円を超えると自己負担が急増する仕組みは変わっていない。
働く意思があっても、制度が就労を抑制している現状は、個人にとっても社会全体にとっても損失だ。
働く時間や収入を増やそうとする意欲をそがないためには、働いた分だけ手取りが増える制度へと見直していくことが求められている。