整備士不足などで計画運休が相次いでいるドクターヘリだが、将来、操縦士も絶対的に不足する事態が懸念されている。背景には、ヘリコプターの操縦士の多くを50代以上が占めており、操縦士資格の新規取得も容易ではないことなどがある。公明党は国として養成の取り組み強化を急ぐよう訴えている。 ■機長の7割が50代以上/ベテランの大量退職迫る 「現在は必ずしも操縦士が不足している状況ではないが、5年後、10年後を考えると不安が大きい」。航空事業者から、ドクターヘリなどヘリコプターの操縦士について、こんな声が上がっている。 国内のヘリ操縦士の数は、この20年間ほぼ横ばいで推移しているものの、年齢構成(2025年1月時点)を見ると、全体1335人のうち、50代以上が634人で4割超を占める。特に確保への懸念が高まるのが、ドクターヘリの機長だ。全日本航空事業連合会が航空事業者に行ったヒアリング調査では、同機長の7割が50代以上に達しており、ベテランの大量退職が目前に迫っている。 同機長には、自家用および事業用の操縦士の資格取得に加え、「機長としての1000時間以上の飛行」などの厳しい要件が課されている【表参照】。かつては、農薬散布などを通じて、報酬を得ながら飛行時間を積み重ねることができたが、近年はこうした業務が、ドローンなどの無人航空機に代替されたことで、実務を通じて飛行時間を稼ぐ機会が激減している。 そのため、ドクターヘリのような高度な操縦士を養成するには事業者が自費で訓練飛行を実施せざるを得ないが、飛行コストは、燃料費や維持費などを含めると高額になるという。 同連合会の大塚洋理事長は「ドクターヘリや消防防災ヘリは命に直結する公共性の高い社会インフラだ。持続可能な体制づくりのためには、操縦士の養成を民間事業者にのみ負わせるのではなく、国や自治体が養成に関与し、支援することが必要だ」と語る。 ■資格の新規取得は壁高く ヘリの事業用操縦士の資格を新規で取得する壁は高い。国の航空大学校にはヘリの専門課程が存在しない。このため、国家資格取得に向けては、自衛隊や海上保安庁などでの内部養成を除くと、主に民間養成機関で訓練を受けることが必要だ。 その費用は、原則自己負担。150時間の飛行経験が求められる事業用操縦士の資格取得で1500万~2000万円程度もかかるという。大塚理事長は「奨学金制度の創設など、操縦士になりたい人が夢を諦めずに済む環境を整え、人材の裾野を広げる行動が不可欠だ」と強調する。 こうした事態を重く見た政府は25年6月、国土交通省や厚生労働省、消防庁など、省庁を横断した「関係省庁連絡会議」を設置し、国全体で養成体制のあり方について協議を重ねている。国交省の藏智彦・乗員政策室長は「今夏をめざし具体策を取りまとめ、命を守るヘリの運航体制の確保に取り組みたい」と話す。 ■公明、航空大学校の活用訴え ドクターヘリの持続的な運航体制の構築をめざし、操縦士確保の重要性を訴えてきたのが公明党だ。 谷合正明参院会長は26年3月の参院予算委員会で、操縦士資格の取得で個人負担が重くのしかかっている現状を指摘。「国が責任を持って直接パイロットを養成する体制へ抜本的に転換すべきではないか」と訴え、航空大学校にヘリ課程の創設などを提案した。 また、党ドクターヘリ・ドクターカー配備推進プロジェクトチーム(PT、座長=宮崎勝参院議員)は25年10月、ドクターヘリの運航確保について政府に提言【写真】。操縦士や整備士などの人員を安定的に確保できるよう十分な予算措置を求めるとともに、現場の事業者の意見を反映した裾野拡大策を着実に進めるよう要望していた。