米国とイスラエルによるイラン攻撃から3カ月が経過しましたが、あらゆる化学製品の原料となるナフサの供給不安が続いています。ナフサ危機がさまざまな産業に与える影響について、当事者の声を聴きました。 ■「長引けば死活問題」 建築の塗装や防水工事などを行う「株式会社ケイサイ」(東京都世田谷区)が、ナフサ危機の影響を受け始めたのは4月上旬。「従来なら発注翌日に届く塗料などが全く入らない。多くのメーカーに問い合わせても入荷に2週間近くかかる」。同社の目黒啓三代表取締役は窮状を吐露します。 ■(建設)防水材が手に入らず工事がストップ 入荷が困難な材料は、シンナーや塗料、養生材などさまざま。流通が目詰まりしている上、価格も高騰しています。中でも、特に不足しているのが防水材だといいます。 「約2カ月前からほとんど手に入らない。その影響で、マンション屋上での防水工事が完全にストップしており、再開のめどが立たない」と語る目黒さん。外装工事が終わっていても防水工事へ進めず完工できないため、「完工後に支払われる費用がいつまでたっても入らず、金銭的にも厳しい状況が続いている」。 同社の営業部長で、全国建設労働組合総連合東京都連合会の執行委員長も務める山本享さんは訴えます。「建設業界では、この状況があと1カ月以上長引けば、倒産など死活問題になる業者が増えてくるだろう。国には必要な手を一刻も早く打ってもらいたい」 ■(病院)相次ぐ値上げを価格転嫁できず ナフサ危機の影響は医療現場にも及びます。「人工透析に不可欠なダイアライザー(人工腎臓)の膜や透析回路のチューブなど、病院では石油由来の使い捨て製品が多い」と話すのは全日本病院協会の神野正博会長です。現在は卸売業者からの供給を確保できているものの、相次ぐ値上げに危機感をあらわにします。 「医療サービスは公定価格のため、物価高騰の影響を価格に転嫁できない。このままでは、病院の経営努力だけでは立ち行かなくなる」と神野会長。ただでさえ、物価・人件費の高騰が経営を圧迫する中、このままナフサ危機が続き、万が一にも病院が休止に追い込まれてしまえば、患者が路頭に迷う事態になりかねません。 そんなことには絶対させまいと、神野会長は力を込めます。「物価変動に機動的に対応できるよう、診療報酬を適切に改定できる仕組みの整備が急務だ」 ■政府「供給できる」と言うが… 「ナフサは中東以外からの代替調達が、従来の8割超まで回復しております」「ナフサ由来の石油製品は、年を越えて供給継続が可能」--。 高市早苗首相は25日の記者会見でこう強弁しました。しかし、実際はどうでしょうか。 ■企業から不安の声「原料来ず作れない」 日本商工会議所(日商)の小林健会頭は同日に行われた会見で、企業の間に広がるナフサの供給不安に関し、日商への相談件数が、通常時の月平均約500件から、5月の大型連休明け以降は約1000件へ急増したと指摘。「製品の注文があっても、原料が来ないため作れない」といった不安の声が寄せられていると明かしました。 ■読売新聞の世論調査「納得せず」6割超 読売新聞の世論調査(5月22~24日)では、ナフサの供給に問題はないとの政府説明に「納得できない」は64%と、「納得できる」の25%を上回っています。政府の説明に「納得できない」は、内閣支持層でも57%と半数を超えています。