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(被爆80年 パグウォッシュ会議第63回世界大会)核兵器廃絶へ今こそ対話を/39カ国の科学者ら議論/広島で20年ぶり3度目の開催

公明新聞2025年11月9日付 中国版

 核兵器廃絶をめざす科学者らの国際組織「パグウォッシュ会議」の第63回世界大会が1~5日、被爆80年の広島で開かれた。広島での開催は20年ぶり3度目。39カ国・地域から約190人が参加し、核軍縮などについて活発に議論した。開催を後押しした公明議員も会場を訪れ、関係者と懇談した。

■公明、大会開催を強力に後押し

 パグウォッシュ会議は、核戦争による人類絶滅の危険性を訴えた1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」を受け、57年にカナダ・パグウォッシュ村で第1回会議を開催したのが始まり。東西冷戦下の核軍縮や核不拡散に影響を与えたとされ、95年にノーベル平和賞を受賞した。

 開会式で、フセイン・シャハリスタニ会長は「科学者や市民は国境を越えて話し合い、政治的な分断を乗り越えることが可能だ」とあいさつした。

 続いて被爆者と市民との対話があり、被爆者の小倉桂子さんが自身の被爆体験を証言。「私たちは“悪”による惨状を繰り返してはならない。“悪”とは核兵器だ」と強調した。

 核兵器廃絶への道筋を探る討論では、ノーベル平和賞を受賞した4団体の代表者が出席。核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のルース・ミッチェル氏は、「人工知能(AI)など新技術が戦争の可能性を高める」と警鐘を鳴らした。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のティルマン・ラフ氏は、母国のオーストラリアや日本など“核の傘”の下にある国々が「核兵器禁止条約に参加することが重要だ」と述べた。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員らも登壇した。

 2日目は、核の脅威を減らすための科学者の役割をテーマに議論。登壇者は、科学的知見に基づいた政策の立案・執行を重視する必要性などを訴えた。

 3、4日目は非公開で開催。イスラエルのオルメルト元首相とパレスチナ自治政府のキドワ元外相による中東和平の今後を巡る対話などがあった。最終日には、核軍縮や平和への提言をまとめた「広島宣言」を採択し、閉幕した。

 一方、大会初日の開会式前には、公明党核廃絶推進委員長の谷合正明参院会長と地元県議、市議が、シャハリスタニ会長、カレン・ホールバーグ事務総長、鈴木達治郎執行委員長、稲垣知宏大会実行委員長と和やかに懇談した。シャハリスタニ会長は「公明党は核兵器廃絶へ長年努力してきた大事な政党であり、深く共感している」と述べ、谷合氏は「核兵器のない世界に向け、共に連携し前進していきたい」と語った。

■「広島宣言」で先制不使用訴え

 「広島宣言」では「核兵器保有国は核軍拡と近代化を進め、核拡散のリスクは高まり、『核のタブー』は明白な核威嚇の脅威にさらされている」と指摘し「いかなる状況下においても核兵器は二度と使用されてはならない」と強調。「先制不使用」政策を採用し、非核保有国に対して「消極的安全保障」を無条件に供与することを呼び掛けた。さらに「真の安全保障は武器や武力の行使ではなく、多国間主義、法の尊重、対話と正義、そして私たちが共有する人間性にこそある」と締めくくった。

 被爆80年の節目に広島で開催されたパグウォッシュ会議。その開催に向け、党広島県本部平和創出委員長の田中勝・広島市議ら公明議員は昨年5月以来、鈴木執行委員長や稲垣大会実行委員長と意見交換を重ね、行政との橋渡し役も務めた。さらに党県議団(栗原俊二団長)、広島市議会公明党(西田浩幹事長)は議会質問で広島開催を働き掛け、財政支援や関連イベントによる啓発なども粘り強く訴え続けてきた。