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(臨時国会)野党・公明どう臨む/西田幹事長にインタビュー
第219臨時国会が21日に召集され、日本維新の会が閣外協力する形で、自民党の高市早苗総裁を首相とする自維連立政権が発足しました。憲政史上初となる女性首相ですが、「政治とカネ」を巡る問題や長引く物価高騰など政治課題は山積みです。政治の信頼を回復し、国民生活を守るために、野党となった公明党は臨時国会にどう臨むのか、西田実仁幹事長に聞きました。
■(自維連立政権が発足)是々非々の姿勢で対峙
--自維連立政権が発足しました。
自民党との連立政権に区切りを付け、公明党が野党として再出発して臨む初の国会論戦が始まります。四半世紀近くにわたり、与党で積み重ねてきた知識・経験も踏まえた上で、どこまでも「国民のため」の視点で、是々非々で政権の施策を監視し、対峙していく決意です。
■衆院定数削減、与党だけで決定は乱暴
--自維連立政権合意は衆院定数の1割削減を掲げましたが。
公明党は定数削減の議論そのものには反対ではありませんが、選挙制度と一体で議論すべきとの考えです。選挙制度に関しては、これまで各党が参加する協議体で真摯に議論を重ねてきた経緯があります。これを無視し、民主主義の根幹に関わる話を与党2党だけで決定し、12月17日までの短い臨時国会で法改正をめざそうとするのは、あまりにも乱暴です。
多党化の時代にあって、価値観は多様化しています。小選挙区は民意を集約する一方、比例区は少数の意見にも配慮して民意を反映する制度です。報道されているような比例区だけを削減するものであれば、「身を切る」のではなく「民意を切る」ことであり、絶対に反対です。どうしても削減するのであれば、これまで堅持されてきた小選挙区と比例区の割合(3対2)で実施すべきです。
--自維政権は、国の根幹となる安全保障政策の見直しにも踏み込むようです。
日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、抑止力と外交の両輪で、国民の平和と安全を守る対応は必要です。抑止力だけを強め、そのバランスを崩すことは、真の安全保障にはつながりません。
公明党は、自公政権下で、専守防衛を堅持する観点から自民党と議論を慎重に積み重ね、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定を行ってきました。一方、自維政権合意では来年の通常国会で、防衛生産・技術基盤を強化する観点から、現在、輸出できる装備品を救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定している「5類型」のルールの撤廃方針を明記しました。これまでの平和国家としてのわが国の取り組みを変えかねない方向性であり、強く危惧しています。
このほか、自維政権合意には、いわゆる「副首都構想」の法制化も盛り込まれていますが、「過去に住民投票で2度否決された『大阪都構想』が前提となるのではないか」「副首都への税源移譲は問題ではないか」などの懸念を、政府・与党にぶつけていきたいと思います。
■(当面の政治課題)政治とカネ、献金規制強化へ法改正を/物価高対策、即効性ある「給付」必要
--当面の政治課題で急務は物価高対策です。
この5年間で給与総額は伸びましたが、食料品価格の伸び率は、それを大幅に上回っています。日銀の調査でも、体感温度の物価上昇率は10%に上り、国民は物価高に疲弊し、即効性のある物価高対策が必要です。
首相は所信表明演説で、ガソリン税の暫定税率の廃止や電気・ガス代の補助などの実施を明らかにしました。公明党も、すぐやるべき施策と考えますが、それだけでは、この物価高を乗り切るのには不十分です。自維政権合意では、飲食料品を「2年間に限り消費税の対象としない」ことも視野に法制化を検討すると明記されましたが、仮に実現したとしても、準備には長い時間が必要になります。
首相は所信表明演説で、現金給付を「実施しません」と明言しました。現場の苦しみが分かっていません。最も即効性のある給付を政府に求めたいと思います。
--「政治とカネ」を巡る問題も焦点です。
今の政治に国民が不信感を抱く根底にある「政治とカネ」の問題に決着をつける国会としていきたい。世論調査では、高支持率でスタートした新政権ですが、政治資金の不記載問題に関与した自民党議員の要職登用には厳しい視線が注がれています。
自維政権合意では、政治資金調達の扱いに関する協議体を今国会中に設置し、2027年9月までの「高市総裁の任期中に結論を得る」としました。これでは先送りです。所信表明演説にも、解決への具体策は一切ありません。
公明党は国民民主党と共に、企業・団体献金の受け手を政党本部と都道府県連に限定するなどの規制を強化する素案を既にまとめています。これを今国会で法案化するとともに、政治資金をチェックする第三者機関を設置する法案も提出し、各党の合意を得て早期に成立を期していきたい。
--社会保障改革は。
参院選で日本維新の会は、国民医療費の総額を4兆円削減し、現役世代の社会保険料の6万円引き下げを訴えていました。一方、高市首相は、診療報酬の引き上げに積極的な姿勢を示しています。維新が主張する、市販薬と成分が似る、いわゆる「OTC類似薬」の保険適用除外や病床数の適正化では賄いきれない部分は、高齢者の医療費負担を増やすことになるのではないか。政権に説明を求めたいと思います。
■(中道改革の党として)誰一人取り残さない社会に
--「公明党らしさ」を発揮した政策論戦は。
昨年の衆院選、今年の都議選と参院選での厳しい結果を受け、公明党は「責任ある中道改革勢力」の軸としての役割を果たすことを掲げ、再出発を誓いました。この公明党が考える中道改革がどういう輪郭なのか、社会保障や安全保障、エネルギー政策、教育、ジェンダー(社会的な性差)などの分野で柱を打ち立て、国会論戦で示していきます。
公明党は1964年11月17日、既成政党による不毛なイデオロギー対立の中で、「庶民、大衆の声を代弁する政党、政治家はいないのか」との“衆望”の下、結成された政党です。まさに「誰一人取り残さない社会」をつくるのが、公明党の原点です。その原点に立ち戻り、私たち議員一人一人が意識を変え、“公明党ここにあり”との気迫で国会論戦に挑んでいきたいと思います。