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(主張)原爆の日/重み増す「核は非人道的」の訴え
広島はきょう6日、長崎は9日が80回目の「原爆の日」となる。
昨年12月、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞した。「核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通して示した」と高く評価されたからだ。「核は非人道的」との訴えが世界に広がった証左である。
ところが今、核使用の脅威は高まっている。私たちは、これとどう向き合うかが問われている。
この脅威は2022年のロシアによるウクライナ侵略が契機になっている。これ以降、ロシアのプーチン大統領が核による威嚇を繰り返しているからだ。
特に、昨年3月の「主権と独立の維持のために、あらゆる兵器を使う」とのプーチン大統領の主張には背筋が凍った。しかし、こうした考えは核保有国に共通の論理である。
例えば米国は、1961年に核は違法と宣言した国連総会決議に対し「国連憲章は自衛権行使のために使用される兵器の種類について、いかなる制限も課していない」などと主張した。
また、国際司法裁判所は「核の威嚇・使用は国際法上許されるか」との国連総会からの諮問に対し、96年に、一般的には国際人道法の原則に反するが、国家存亡の危機に際しての自衛目的の場合は「合法か違法か明確な結論を出すことはできない」とする勧告的意見を示した。核保有国はこれを“核は絶対悪”に対する反論の根拠としている。
しかし、国家を守るためなら「どのような手段も許される」わけではない。これが国際法の理念であり、非人道的兵器はこれまでも制限・禁止されてきた。
核戦争を阻止する核抑止論の是非だけを議論すると“国家の安全”だけが独り歩きをし「合法か違法か」の迷路にはまる。そこを乗り越えるのが核の非人道性の認識である。
大量殺りく、世代を超える健康被害、環境破壊を招く核は、被爆者が訴えるように人類とは共存できない兵器だ。今再び、核の非人道性の訴えを広げたい。