公明新聞電子版 詳細ページ

ピックアップ

給付付き税額控除とは/格差拡大防ぎ負担を軽減

公明新聞2026年2月3日付 3面

 減税と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」に注目が集まっている。勤労の促進や現役世代の負担軽減、格差拡大の抑制などを目的に欧米各国で既に導入されており、今回の衆院選では自民党や中道改革連合などが具体化を訴えている。どのような仕組みなのか、海外の事例や導入への課題などと合わせて解説する。

■(どんな仕組み)減税、現金支給の組合せ/中低所得層に絞った支援も可能

 給付付き税額控除とは、本来の所得税額から一定額を減税として差し引き、引き切れなかった分を現金給付で補う仕組みだ。1960年代初頭に米国の経済学者ミルトン・フリードマン氏が提唱した「負の所得税」がアイデアの源泉とされる。

 最大の特徴は、納税額が少なく、所得税減税では恩恵が十分に及ばない低所得層や、課税最低限以下の人にも給付の形で支援を届けられる点にある。

 具体的な支援のあり方は、本来の所得税の納税額によっって、①税額控除のみ②税額控除と現金給付の両方③現金給付のみ--に分かれる。

 例えば、5万円の給付付き税額控除が実施される場合、納税額が10万円の人は、税負担が5万円に減る。納税額が3万円の人は、控除額との差額2万円を現金で受け取れる。納税額がゼロの人は5万円が支給されるといった具合だ【イメージ参照】。

 この制度は、所得に関係なく同じ金額を配る一律給付と異なり、中低所得層に絞った重点的な支援や、働く意欲を高めるための所得連動型の控除額引き上げなど、目的に応じた柔軟な設計が可能だ。このため、より効果的な給付の実現につながると期待されている。

■(海外の事例)政策目的に応じて設計/米国は低所得者支え、就労を促進

 海外の導入国では、それぞれの政策目的に応じた制度が設計されている【表参照】。

 75年に世界で初めて給付付き税額控除を導入した米国では、低所得者への支援や就労促進を目的に、25~64歳の勤労者や、子どもを養育する勤労者を対象にした「勤労所得税額控除」、子育て世帯向けの「児童税額控除」を実施している。

 勤労所得の増加に応じて控除額を増やし、一定の所得範囲では頭打ちとした上で、より高所得になるほど給付・控除額を徐々に縮小させる仕組みだ。子どもの人数に応じて控除の度合いが変わり、子育て家庭の負担を軽減する役割も果たしている。

 一方、英国は「ユニバーサル・クレジット」と呼ばれる制度を2013年から導入している。1999年に給付付き税額控除をスタートさせたが、実務の煩雑さなどから、給付のみの現在の形態に切り替えた。

 子どもや住宅、雇用などに関する六つの給付・控除を統合した制度で、一定の要件を満たす18歳から年金受給開始前までの人を対象とする。

 勤労所得の増加に伴って給付が減るものの、一定の所得に達するまでは総収入が増えるよう設計されており、失業時には、職業訓練や求職活動を行うなどの要件もある。働く意欲を高めるとともに、失業対策としても成果を上げている。

 また、カナダでは勤労者向けの給付付き税額控除「勤労者手当」のほかに、低所得層ほど負担感が重くなりやすい消費税の「逆進性」の緩和を目的とした「GSTクレジット」が91年から実施されている。カナダ居住者を対象とした直接給付制度で、受取額は家族構成によって異なり、所得が一定額を超えると減少する。

■(国内の検討は)与野党4党で協議開始/行政のデジタル化など背景に

 日本では、2008年12月に閣議決定された持続可能な社会保障構築に関する「中期プログラム」に、所得再分配機能を強化する観点から給付付き税額控除の検討が盛り込まれ、その後、「社会保障と税の一体改革」を巡る議論の中でも度々、検討項目とされてきた。

 しかし、公平・公正な運用には所得や保有する資産の正確な把握が欠かせず、実務面でのハードルの高さも相まって、本格的な導入が見送られてきた経緯がある。

 ただ、近年はマイナンバー制度の定着をはじめ、マイナンバーにひも付ける公金受取口座の登録、行政事務のデジタル化が進み、導入に向けたインフラが整いつつある。

 こうした背景を踏まえ、自民、公明、立憲民主の3党は昨年9月の党首会談で、実現に向けた協議を進める方針で一致。同11月には日本維新の会も加わった4党による実務者協議が開始された。

 高市早苗首相は今年1月、有識者も交えた政府・超党派でつくる「国民会議」を同月内にも設置し、具体的な制度設計の検討を進める方針を示した。だが、同月23日の通常国会冒頭解散、総選挙により、会議の設置は先送りされた状態だ。

■(導入への課題)所得や資産の把握必要/制度設計、財源確保の議論も

 導入に向けた課題は少なくない。

 一つが、個人の所得や不動産、金融資産などをいかに正確に把握するかだ。これを欠けば、不正利用や過誤支給といった不公平を招く恐れがある。

 先行する米国やカナダは、給付や控除を受けるための「確定申告」が国民の間に定着し、英国では個人の所得情報を月単位で把握する国のシステムが整備されているなど、公平性を一定程度保つ仕組みが機能している。

 一方、日本は国民一人一人の所得や資産を一元的に把握する仕組みがまだ整っていない。現行のマイナンバー制度の活用が想定されているが、行政による資産情報の照会について、国民の理解と信頼を得る必要がある。

 具体的な制度設計にも慎重な検討を要する。

 政府は海外事例を踏まえ、中低所得層の負担軽減を目的とする考えを示している。ただ、対象者の所得水準の線引きをどうするかや、既存の税制や社会保障制度との整合性をいかに保つかなど、重要な論点がさまざまある。

 給付の実行に当たっては、実務を担う自治体との連携や継続的に実施できるインフラ整備が欠かせず、給付などに必要な財源の確保も避けて通れない。今後、政府と超党派での議論の活性化が期待されるが、制度の導入はしばらく先になるとみられている。