■現役町会長、命守る政策を設計 2011年から中野区議を務める小林善一(66)は、地域を歩きに歩く“お巡りさん”“御用聞き”に徹する。人々は親しみやすさのままに、彼をこう呼ぶ。「善ちゃん」「善さん」 * 怒濤の10月。街頭消火器の前で膝をつき、使用期限を確認する姿があった。身にまとう紫色のジャンパーには「上町町会」の文字。2000世帯からなる町会の会長として、7年目を迎えた。就任時には「これほど大きな町会の会長を担う議員はいない」と党内で評された。 議員活動と両立できるか心配もあったが、「仕事を確実にやり遂げてくれる」との周囲の信頼と期待に応えようと奮闘。餅つきや花見、祭りといったイベントの企画運営、避難所の備え、防災備品の点検、防犯パトロールなどに汗を流す。ただただ、「地域発展の推進力に」と。 町会活動を区政に生かせることも少なくない。防災訓練の際、初期消火に使うポンプが重く、操作も難しいとの問題意識を持った。「女性や中学生でも使いやすいものはないか」。懸命に情報を集め、消火栓とホースに簡単に接続して放水できる軽量な機材「スタンドパイプ」にたどり着いた。 12年当時、あまり知られていなかったものの、区側に重要性を必死で説き、議会でも提案した結果、13年に初導入。今では区内全107町会に1台以上、各公園や防災広場に計200台超が設置されるまで大きく広がった。 * 区議になる前には、1級建築士の試験を突破し、建築設計事務所で美術館、博物館といった建造物の図面を描いてきた経歴を持つ。世界的なデザイナー・草間彌生氏の作品を数多く展示する松本市美術館(長野県)は、優れた芸術活動を表彰する「日本芸術院賞」に輝いた。松本清張記念館(北九州市)も手掛けた。地元では、JR中野駅北口の公衆トイレにも深く携わっている。 建築の仕事は一切終わりと思って議員活動を始めたが、「これほど役立つ資格と知識と経験はなかった」。中でも、約500人を収容する小ホールなどを備えた区の複合施設「なかのZERO」が17年3月に大規模改修される前のこと。図面段階で小林は「ホール階に行くエレベーターがない」ことを見抜いた。高齢者を含め「幅広い世代が使用する施設だから付けるべきだ」と迫ったが、区側は「構造上できない」とらちが明かない。 ならばと、職員と図面に目をこらして「この場所なら絶対に付けられる」と具体的に提案し、区長に直談判。「総務部長、やろうよ」との言葉を区長から引き出し、2台のエレベーターが備え付けられた。 小林と30年近い交流がある設計事務所の社長は「仕事は完全に遂行する。どんな小さなこともこぼさない。共感力が高く、政治家にはなかなかいない珍しい人」と信頼する。 * 夜、くたくたの体で帰宅する。食事をしようとした瞬間、電話が鳴る。「善さん、今すぐ来てください」と。帰ってきて、冷たくなったご飯を食べることもある。救急車や消防車のサイレンが聞こえれば、現場へ飛び出す。「公明党の議員は、24時間、気が休まらないよね。みんなたぶん、そうだと思いますよ」。物静かに語る一言一言に、誇りがにじんだ。(文中敬称略。随時掲載) ■取材後記 小林議員は毎朝、党創立者の“民衆とともに歩め”との指針を刻み直す。今月、公明党は自民党との連立政権に区切りをつけ、新たな一歩を踏み出した。同じ町会で、草創からの党員・小谷野典子さんは強く願う。「立場が変わっても『大衆の党』でいて!」(鼓) ご感想はこちらへ▼ https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScISqYfsag1Ucx-ozilcsffUns-WaRk8Mq_22-_YYkiFkK_Ig/viewform