睡眠に関する悩みを抱える人が増加する中、厚生労働省の医道審議会は3月、医療法上、これまで診療科名として看板や広告に掲げられなかった「睡眠障害」の標榜を可能にする方針を示した。近く、正式決定する見通し。公明党が強力に推進した。背景には、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害の患者が、適切な診断・治療につながりにくい現状がある。 ■不眠症や無呼吸症候群など/適切な診断・治療で改善へ 「眠れない日が続く」「朝起きることができない」--。北九州市小倉北区の「有吉祐睡眠クリニック」(有吉祐院長)には、こうした悩みを抱える患者が1日に80~100人程度、訪れる。 最も多いのが、眠れない、夜中に目が覚めるといった症状によって日常生活に支障が生じる「不眠症」だ。うつ病などの精神疾患や糖尿病、発達障がいの影響で不眠に陥ることもあり、内科や精神科からの紹介で受診に至るケースが多い。 不眠症の患者は、他の医療機関で既に睡眠薬を処方されていることもあるが、同クリニックでは、依存性の少ない薬への切り替えや、カウンセリングを通じて考え方や行動を見直す「認知行動療法」を組み合わせた治療を行う。 不眠症に次いで多いのが、睡眠時無呼吸症候群の患者。検査を実施した上で、鼻に当てたマスクから空気を送り出す「持続陽圧呼吸療法」(CPAP)などの適切な使用で症状の改善を図る。 こうした専門的知見に基づく治療を進めることで、不眠症の患者が睡眠薬を服用しなくてよくなるなど、劇的に症状が改善することもある。 また、有吉院長によると、最近は起床困難を訴える起立性調整障害などの10代が増えており、患者全体の2割を占めるが、治療によって「学校に通えるようになった」という事例もあるという。 有吉院長は「睡眠障害の改善には、早期に適切な診断・治療につながることが重要だ。各地域で受診しやすい環境を整える必要がある」と語る。 ■「医師に相談」わずか14% 日本睡眠学会が2023年、男女3600人を対象に実施した調査では、「睡眠に課題を感じている人」が6割に上る一方、その中で「医師に相談した人」は14%にとどまる【グラフ参照】。 医療機関の受診につながらない要因の一つが、診療科名で受診先を判断できないことだ。 加えて、受診先が症状によって、呼吸器内科や精神科、耳鼻咽喉科、小児科など多岐にわたり、患者が「どこを受診すればいいか分からない」という状況に陥りやすい。 ■公明、専門家と連携し強力に推進 新たな診療科名「睡眠障害」は、パブリックコメント(意見公募)、学術団体の意見聴取を経て、6月上旬にも政令が改正・施行され、標榜開始となる。 具体的には、単独で掲げられる「内科」や「精神科」などと組み合わせて、「睡眠障害内科」といった形で看板などに掲げられる見込みだ。 公明党は日本睡眠学会の要請を踏まえ、24年4月の参院厚生労働委員会で、秋野公造氏が「診療科名として“睡眠科”といったものを標榜できるようにすることは重要ではないか」と提案。25年5月の参院予算委員会でも訴え、当時の石破茂首相から「標榜することによって適切な医療が受けられることには意義がある」との答弁を引き出していた。 秋野氏は「医療アクセス向上への大きな一歩だ。今後は、生活習慣病の予防・重症化予防などにもつながる“睡眠”の重要性を訴え、さらなる普及啓発を進めていきたい」と語る。 ■“入り口”を明確化、受診しやすく/日本睡眠学会 内村直尚理事長 睡眠障害や睡眠不足は日中の眠気や判断力の低下に加え、慢性化すれば肥満や高血圧など生活習慣病のリスクを高める。 診療科名への追加によって、診断・治療ができる医療機関が分かり、治療の“入り口”が明確になることで、こうしたリスクを抱える人が受診しやすくなる。 一方で、医療の質を担保することも重要だ。日本睡眠学会として、研修を通じた専門医の育成や診断・治療のガイドライン(指針)の改訂を進め、全国どこでも安心して治療を受けられる体制を整備していきたい。 公明党は秋野公造参院議員を中心に、睡眠の重要性を理解し、標榜の実現を政府に何度も働き掛けるなど尽力してくれた。 人生の3分の1を占める“睡眠”の質を向上させることは、生活の幸福度を高め、長寿にも直結する。今後も、国民の健康を守る取り組みを共に進めてほしい。