静岡市は今年度、県内初の「学びの多様化学校(不登校特例校)」を開校した。中学校の不登校生徒を対象に、市立末広中学校の分教室として同市葵区にある新通小学校の空き教室を活用し、中学1~3年生の計34人が学んでいる。始業時間を遅らせ、授業時間が通常より少ないのが特徴。不登校生徒の受け皿として期待されている。 ■安心して学べる環境を 「自分の子どもが同世代の子と話しているのを初めて見た」「子ども一人でバスに乗って登校できるようになった。奇跡です」。同校の教員によると、不登校を経験した生徒が安心して通えている姿に対し、保護者からは深い感謝が寄せられているという。 ■始業時間など柔軟に設定 学びの多様化学校は、文部科学省の指定を受けることで、不登校の子どもたちに合わせた柔軟なカリキュラムが実施できる。末広中学校分教室は年間総授業時数を850時間(通常は1015時間)、1授業を45分(通常は50分が一般的)に設定。始業時間は午前9時35分にしている。 ■対話式の独自教科で社会性育む 独自教科の「リフレクション」では、生徒間の対話を通して思いやりと多様性を尊重する姿勢を養っていく。例えば、少人数に分かれて「うれしいこと」「悲しいこと」の場面を紙に書いて、互いに見せ合う。人によって感じ方が違うことを認め合い、社会性を育むことをめざす。 市学びの多様化推進係長の松田裕樹さんは「始めたばかりだが、少しずつ生徒に他者を尊重する感覚が芽生えている。1年生がこれを3年間やり続けたとき、どのように成長するか楽しみ」と話す。 今年度の入学に対する申し込みには定員を超える応募があり、欠席日数などを踏まえた選考を経て1年生15人、2年生7人、3年生12人が入学。5月時点での出席率は7割ほどだという。ボードゲームや卓球を楽しめるスペース、1人でゆっくり過ごせる場もあり、生徒は各々のペースで人間関係を築きながら学びを進めている。 ◇ 公明党の山梨渉市議は2019年9月定例会で、東京都調布市が分教室型の不登校特例校を開校したと例示。公共建築物の一部を使うため、財政負担が少ないことを強調しながら、増え続ける不登校生徒を受け入れる場として不登校特例校の設置を求めた。22年9月、24年9月の定例会でも必要性を強調し、開校を要望した。 山梨市議はこのほど、末広中学校分教室で教員らと懇談した。教員は「1人でご飯を食べていた子が徐々に友達と食べるようになった」と、生徒が人間関係を構築している様子を紹介。「毎日来る子と、時々登校する子で学習の差が生まれてしまうので、それぞれの子に合わせて授業をすることが難しい」との声もあった。 山梨市議は「誰もが安心して学べる環境へ、これから出てくるさまざまな課題を下支えしていきたい」と応じていた。