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デフリンピック競技、記者が挑戦してみた!
デフリンピック成功へ共に。日本で初開催される「東京2025デフリンピック」開幕まで2カ月余り。耳の聞こえない・聞こえにくいアスリートは今、懸命なトレーニングを重ね、ろう者への理解促進にも汗を流す。記者は先月、都内のイベントでデフ競技の卓球と陸上を“体験”した。
■(卓球)打球を見極める集中力
耳栓にヘッドホンを重ねて装着すると、騒がしかった会場から音が消えた。卓球台の前に立つ。向き合う相手は、過去のデフ大会で銀3個、銅5個のメダルを獲得している卓球界のレジェンド・女子日本代表の亀澤理穂選手だ。
ルールは聞こえる人と同じ。ラリーなら少しはできるかもと臨んだが、甘くはなかった。ピンポン球がラケットや台に当たる音が全く聞こえないため、タイミングが取れない。目の情報のみで次の動きを判断することにも慣れておらず、ラケットに当てるだけで精いっぱいだった。
かつて亀澤選手は「目で判断する集中力が重要」と語っていたが、その意味を肌で感じた。
大会では、観戦者が競技をより楽しめるよう、試合映像上に打球音や歓声などを擬音語として表示する「ミルオト」が導入される方向だ。
■(陸上)スタート合図、ランプで
デフ陸上では、スタートを知らせるピストルや審判の声に代わって、光で合図を出す装置「スタートランプ」が使われる。「オン・ユア・マーク(位置について)」で赤色、「セット(用意)」で黄色、「ゴー(スタート)」で緑色と変わっていく。
特徴を理解し、実際にかがんで視線を下ろす。座った姿勢から、腰を上げ……。見逃すまいとランプに集中するあまり、飛び出した瞬間に転んでしまった。陸上経験者なのだが、まばたきを含め、体を動かすタイミングが難しかった。
1秒を争う陸上において、スタートダッシュが勝利のカギ。大会では号砲の瞬間を含め見逃せない場面が満載だ。
選手たちは「聞こえない中、アイコンタクトなどを使って闘う世界があることを知ってほしい」(デフバレーボール・中田美緒選手)、「会場で応援し、一緒に闘って」(デフサッカー・松元卓巳選手)、「ろう者や手話への理解を広げる大会に」(デフバレーボール・長谷山優美選手)と意気込む。
障がい者雇用の促進に向けた企業向けセミナーに登壇するなど、プレー以外でも「“誰もが個性を活かし力を発揮できる”共生社会の実現」をめざし奮闘している。
日本開催というまたとない機会。世界中の選手へエールを送りたい。
■公明、被災地の子ども招待も
デフリンピックについて公明党は、東京への誘致をはじめ、大会を契機とした聴覚障がいへの理解促進、異なる手話間の通訳充実などを推進してきた。
都議会公明党は、デフ大会について「多様性を認め合う社会への機運を高めるもの」と位置付け、都内や被災地の子どもたちの観戦招待もリード。能登半島地震で被災した石川県や、東日本大震災があった岩手、宮城、福島の各県から、保護者を含め約140人の子どもたちが招かれる。