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政策の財源「生み出す」/国の資産など有効に活用/政府系ファンド創設へ議論開始

本日無料公明新聞2025年8月22日付 1面

■GPIF前最高投資責任者が講演

 公明党「日本版ソブリン・ウェルス・ファンド創設検討委員会」(委員長=上田勇参院議員)は21日、衆院第2議員会館で、先の参院選で掲げた重点政策を実現するため、初会合を開いた。会合では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の前最高投資責任者の植田栄治氏を招いて、政府系ファンドに関する海外の事例や、仕組みなどについて講演を聴き、活発に意見を交わした。

 政府系ファンドは、政策に必要な財源を「生み出す」観点から、国の資産などを効率的に運用する仕組み。6月に閣議決定した政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも、公明党の提案で、政府系ファンドを念頭に、政府などの公的部門が保有する資産について「有効活用の有用性を検討する」と盛り込まれた。

 会合の冒頭、上田委員長は、政府系ファンドの創設に対する国民の期待が大きいことを踏まえ「重要なテーマと捉え公約を実現していく」と強調。創設の意義を巡っては「今後、社会保障や教育など、いろいろな財政需要が大きくなる。しっかりと検討していきたい」と述べた。

 岡本政調会長は、日本の閉塞感を打破するため、政府が民間に対して新たな取り組みを推奨していることに言及し「まず国が未来を開く取り組みを始めるべきだ」と主張。政府系ファンドについては「日本と世界の経済成長に投資をして、そこから得る収益を国民に還元する仕組みだ。必ず実現したい」と語った。

 講演で植田氏は、北欧やアジア、中東など政府系ファンドを有する諸外国の事例を紹介。日本の財政状況については、毎年約30兆円の赤字国債を発行しているとし「一般会計予算の拡大が見込まれる中、税収のみに頼るのは厳しい」との見解を表明。長期的な政策の執行へ「補完的な財源を確保する意味で、政府系ファンドを設立することが大切だ」と強調した。

 出席議員からは、幅広い世代に恩恵が及ぶ仕組みの重要性などについて意見が上がった。

 同委員会では今後、各業界の有識者、他国の政府系ファンドの責任者らとの意見交換を通じて、制度設計に向けた検討を進めていく。

■「政府系ファンド」とは

 政府や政府系機関が将来の世代に向けた資金の確保などを目的に公的資産を運用するファンド。アジアや中東、北欧に多く見られ、主な原資は石油・ガスといった天然資源や中央銀行の外貨準備高。そのため、原油価格の高騰に伴い巨額の収入を得た中東国や貿易黒字の拡大で外貨準備高が大きく増えた中国など、国家の資産を運用する母体として設立するケースが目立つ。

 シンガポールでは、運用収益の最大半分を国の予算に充てることができ、その額は国家予算の約2割に上ることもある。