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自維政権の安保論議に懸念広がる/平和国家の理念守れ/党安保部会長 石川博崇参院幹事長に聞く

本日無料公明新聞2025年12月14日付 1面

 台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を機に、日中関係の緊張が高まっています。こうした中、自維政権は、前政権下で公明党が行き過ぎを是正する「ブレーキ役」を果たしながら取り組んできた安全保障政策を見直そうとしています。「ブレーキ役不在」(11月21日付「朝日」)と指摘される自維政権の安保論議への懸念を、公明党安全保障部会長の石川博崇参院幹事長に聞きました。

■(首相答弁で日中緊張)重み自覚し冷静な対応を/収束へ対話機会模索せよ

 --中国軍機が自衛隊機に対しレーダー照射する問題が起きました。

 まず、このような極めて危険な行為は、誠に遺憾であり、日本政府が中国側に抗議したのは当然です。これ以上、事態がエスカレーションしないよう、冷静かつ毅然とした対応を政府に求めたいと思います。

 --日中関係の緊張の発端は先月、台湾有事を巡り高市首相が「(自衛の措置として武力行使が許される)存立危機事態になり得る」と国会答弁したことでした。

 極めて軽率な答弁だったと言わざるを得ません。歴代の首相は、存立危機事態の具体的な質問を受けても絶対に明言しませんでした。安全保障上の対応の手の内を明かすことにつながるからです。自衛隊の最高指揮官である首相は、その重みを自覚してもらいたい。

 この国会答弁後、公明党の斉藤鉄夫代表が提出した質問主意書に対し、政府は、存立危機事態に対する従来見解が「完全に維持」されているとした答弁書を閣議決定しました。この意義は大きいと言えます。政府は、存立危機事態の対応が、これまでと一切変わっていないことを、国際社会や国民に丁寧に発信し、説明を尽くすべきです。

 --経済関係も冷え込む中で収束の方法は。

 まず外交努力が第一であり、あらゆるレベルで対話の機会を粘り強く模索しなければなりません。政府間の交渉では折り合いが難しい場合、政党間や議員間の交流が異なる役割を担える可能性があります。公明党も、これまで培ってきた経験を生かし、主張すべきところは主張しつつ、日中の平和と安定のため、対話のチャンネル拡大を働き掛けたいと考えます。

■(安保3文書の改定)「なぜ今」国民に説明を/非核三原則の堅持明確に

 --自維政権連立合意は「安保3文書」【図参照】を前倒しで改定する方針を明記しています。

 3文書は安全保障政策の基本文書で、うち国家安全保障戦略や国家防衛戦略は向こう10年程度を見据えた内容です。自公政権下で公明党は、策定に際し、平和憲法の理念に基づき、国民の生命・財産を守るための冷静かつ緻密で現実的な議論を積み重ねてきました。

 直近では2022年、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、防衛力整備のため、3文書を改定したばかりです。自維政権はなぜ今、改定を前倒しする必要があるのか、国民に説明すべきです。

 特に大きな懸念は、日本維新の会が、憲法9条2項(戦力不保持)の削除による集団的自衛権行使の全面容認などを掲げていることです。平和国家としての歩みを逸脱する、軽々しい感情的な主張です。今後、与党内で冷静かつ現実的な協議ができるのか、危ぶむ声が相次いでいます。

 --非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)の見直しの検討も報じられています。

 非核三原則は、唯一の戦争被爆国・日本の国是です。公明党の国会質問にも、高市首相は見直しに含みを持たせた答弁に終始しています。見直されれば、平和国家の歩みが否定され、周辺諸国の緊張を高め、核開発の口実を与えかねません。引き続き堅持する方針を政権は明確にすべきです。

■(防衛装備の移転制限)「撤廃」なら歯止めを失い、武器輸出がなし崩し拡大も

 --防衛装備移転三原則に基づき、完成品の移転(輸出)は「5類型」【図参照】に限定されていますが。

 日本は、これまで平和憲法の範囲内で、完成品の移転は抑制的に運用してきましたが、同盟国などと共通の装備品を保有することは安全保障上、有益です。そこで公明党は自公政権下で、緻密で現実的な議論を自民と積み重ね、シーレーン(海上交通路)の安全確保が重要であると判断し、この5類型に限り認める「明確な歯止め」としてきました。

 --自維政権は連立合意で、この5類型の「撤廃」を掲げています。

 5類型を撤廃する方針には、平和国家としての基本理念が損なわれたり、世界の紛争が助長されることはないのか、などの疑念が絶えません。

 マスコミも「ひとたび歯止めがなくなれば、武器輸出がなし崩しに拡大しかねない」(12月3日付「毎日」)と指摘している通りです。

 自維政権は、撤廃しなければならない必要性や、仮に撤廃した場合、どこまで移転を緩和するのかを明らかにすべきです。決して与党内の協議だけで閣議決定するのではなく、国会論戦で野党にも論点を示すべきです。