ひとり親世帯が困窮する要因として、離婚後の養育費の不払いが指摘されている。4月施行の改正民法では、離婚時に取り決めがなくても暫定的に請求できる「法定養育費」が創設されるなど、養育費に関するルールが見直された。その内容などを紹介し、早稲田大学の棚村政行名誉教授に話を聞いた。 「元夫からの養育費は諦めている……」。こうした切実な声が、公明党の地方議員に寄せられることは少なくない。養育費は子どもが自立するまでの生活や教育、医療などに必要な費用だ。離婚の際に父母が話し合いで分担を取り決めるよう、民法で定められている。 ただ、国の調査(2021年度)によると、養育費を受け取っている割合は、母子世帯で28・1%、父子世帯で8・7%にすぎない。そもそも、養育費の取り決めをしている割合は、母子世帯で46・7%、父子世帯で28・3%にとどまる。 その背景には「相手と関わりたくない」「支払い能力がない」といった理由のほか、DV(配偶者からの暴力)を受けて話し合いが困難なケースなどが指摘されている。さまざまな事情から養育費が支払われず、ひとり親世帯が困窮する一因にもなっている。 ■離婚時の取り決めなくても「月2万円」請求可能に こうした状況を改善するため、今年4月以降の離婚については、養育費の取り決めがなくても、同居親が別居親に対し、子ども1人当たり月額2万円の「法定養育費」を暫定的に請求できるようになった。支払いに応じない場合、地方裁判所(地裁)に別居親の財産を差し押さえる手続きを申し立てることができる。 ■優先回収へ「先取特権」 通常の養育費についても、不払いの場合は、差し押さえ手続きを申し立てることができる。ただ、差し押さえに当たっては、公証役場に出向いて作成する公正証書や、家庭裁判所での調停を経て作成される調停調書などの公文書「債務名義」で養育費の取り決めを行う必要があり、手続き負担から“泣き寝入り”するケースも多かった。 そこで、改正民法では、今年4月以降分の養育費について、他の債権者より優先して差し押さえて回収できる「先取特権」が付与され、「債務名義」がなくても父母間の取り決め文書のみで差し押さえ手続きを申し立てできる。上限額は子ども1人当たり月額8万円。法務省の資料では、文書が裏付けとして十分かは裁判所が判断するが「メール、SNSのやりとりなども証拠になり得ると考えられる」としている。 ■不払い→3カ月立て替え/公明推進でさいたま市 養育費の不払い問題を巡って公明党は、子どもの利益を最優先に確保する観点から、今回の法改正も推進してきた。 党地方議員の訴えを受けて、独自の支援策を打ち出す自治体もある。例えば、さいたま市では24年度から、別居親に養育費の支払いを働き掛け、不払いの場合、市が最大3カ月間、子ども1人当たり月額5万円を上限に立て替える事業を実施している。市の担当者によると、24年度は申し込みがあった24人のうち、17人が立て替えに至った。 ■国の事業、活用する自治体は約3割 国はこれまで、養育費支払いの責務を法律に定め、差し押さえ手続きの改善や相談機関の創設・拡充など、養育費の確保に向けた施策を実施してきた。離婚前後の家庭支援に取り組む都道府県や市(特別区を含む)、福祉事務所を設置する町村に対し、費用の2分の1を補助する事業を実施している。ただ、24年度に国の補助を受けて支援を実施した自治体は、全体の約3割にとどまっている。 ■子の生活支える安全網/早稲田大学 棚村政行名誉教授 養育費の受給率が低い中、父母の間で正式な取り決めがされるまで請求できる法定養育費は、子どもの最低限の生活を守るセーフティーネット(安全網)としての意義がある。あくまでも暫定的な措置であり、子の年齢や父母の収入などを踏まえ、適正な金額の正式な養育費を取り決めることが望ましい。 不払いの際に、ひとり親が単独で差し押さえの手続きを行うのは大変な労力だ。国の支援事業は拡充されてきたが、活用自治体はまだ少ない。 また、こども家庭庁、法務省、各自治体など、行政の縦割りによって必要な情報が当事者に届いていない状況もある。アプリなど、必要な情報をワンストップ(1カ所)で得られる仕組みの整備も必要だ。 ■支援充実へ地方議員に期待 公明党がこれまで力を入れてきた子どもの貧困対策や、女性・家族支援の充実などは今後も大切な政策分野となる。住民に身近な地方議員が多い公明党には、引き続きしっかり取り組んでほしい。