全国でクマ被害が止まらない。国は人の生活圏で「出没したクマを確実かつ迅速に排除」し、周辺地域では「出没を防止するための捕獲等を強化」する方針。そうした対策の最前線に立つのがハンターだが、各地で「高齢化と担い手不足」に直面している。確保・育成に向けた自治体の取り組みを追った。 ■養成拠点を整備・強化/兵庫県 ライフル銃を構えるハンターの鋭い眼光の先に、イノシシを模した標的が左右から現れた。「ドン!」。目前で打ち上げ花火が上がったかのような発砲音とともに、火薬のにおいが立ち込めた。 これは兵庫県三木市にある県立総合射撃場で行われた射撃練習の模様だ。有害野生鳥獣の深刻な被害を防ぐため、ハンターの養成拠点として2024年に開設。県議会公明党が後押しした。 ■実技、座学など研修を1カ所で 敷地面積は、西日本最大級の約80ヘクタール。甲子園球場約21個分に相当する。狩猟効率向上につながる専用射場などの射撃スペース計6面と、森林約68ヘクタールに広がるわな猟の実習エリアを備える。子どもなど幅広い人にも利用してもらおうと、銃の所持許可が無くても使えるビームライフルでの射撃体験もできる。毎月訪れるという県内在住の女性は「広く、きれいなことに加え、更衣室が男女別で用意されているなど、女性も使いやすい」と笑顔を見せた。 同射撃場には、講習会が開ける会議室や捕獲個体の解体処理が可能な処理加工室もあり、「実技」や、狩猟のルールやマナーを学ぶ「座学」、「処理加工」の研修を1カ所で行える。 ■若年層の狩猟デビュー後押しも 県は今年度から新たに、若年層の狩猟免許取得や狩猟デビューを後押しするプロジェクトも始めた。今後、免許取得の手続きや、現場での注意点などを集約したポータルサイトを開設し、初心者が手軽に情報を得られる環境を整える。 さらに、同射撃場では、実践的な悩みに寄り添う相談窓口を新設するほか、猟場での捕獲から解体処理までの流れを体験できる「狩猟デビュー研修」を実施する予定だ。 県の担当者は「利用者数は想定していた年5000人を大きく超えている」と手応えを語り、「技術の向上にとどまらず、免許取得から実戦デビューまでを切れ目なく支えることで、地域を守る次世代の担い手をしっかりと育てていきたい」と意欲を示す。 ■初心者講習や費用支援/鳥取県 狩猟免許を取得したものの「何から始めたらいいか分からない」と悩む初心者を対象に、講習会を16年度から開き、成果を上げているのが鳥取県だ。 基本技術や安全管理の座学と、射撃練習や山歩き、解体の実習などを10回程度のカリキュラムとして用意。これまで385人が受講し、「現役ハンターからの指導があり、参考になった」などと好評を博している。 ほかにも同県は15年度から、免許取得から3年以内の人を対象に、狩猟者登録にかかる諸費用を県が負担する支援制度も実施している。 ■登録者が9年で118人増える 県内の狩猟登録者の延べ人数は、1406人(16年度)から、1524人(25年度)へと増加しており、県の担当者は「意欲ある若者や未経験者の参入が増えている」と実感を語る。 ■公明の主張反映し、地域での対策に交付金 公明党は環境部会などが中心となり、相次ぐクマの出没を踏まえ、ハンターの養成などを含めた対策の強化を政府に繰り返し要求。昨年11月公表の「対策パッケージ」に反映された。この中では、人材育成など地域で対策に取り組む自治体へ、交付金などによる速やかな支援を実施することが示されている。 さらに先月20日には、中道改革連合、立憲民主、公明の3党が、環境・農林水産部会の合同会議を開き、ハンター確保へ向けた施策の充実などを政府へ要望した。 3党合同環境部会座長の輿水恵一衆院議員(中道)は「有害鳥獣捕獲は、猟友会などに支えられているのが実情だ。こうした人材の裾野を広げていくため、育成に向けた各地の先進例を参考に自治体での取り組みが進むよう、国による支援充実を求めていきたい」と強調。また、「ハンターの活動中の事故に対する補償の充実や、個体数などの実態調査も着実に進める必要がある。スピード感を持って施策の強化に取り組む」と語る。