高市政権が掲げる「積極財政」が歴史的な円安・金利上昇の一因となっていると、市場から厳しい目が向けられています。日本の政治・経済にどのような“異常事態”が起きているのか。経済指標の数字を用いて、まとめてみました。 ■「骨太ショック」広がる/市場は財政悪化、利上げ遅れに懸念 事の発端とされているのが、政府が6月30日に公表した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)原案。昨年度の骨太の方針に書かれていた「財政健全化」の文言が消え、「強い経済」の実現へ「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」と明記されました。 これで「政府が日銀の金融政策に圧力をかけるとの見方が金融市場で広がり」(7月11日付「朝日」)、利上げが遅れて物価高が加速しかねないとの懸念から長期金利が急上昇。“骨太ショック”と呼ばれる債券売りにつながったとみられます。 城内実経済財政政策担当相は7日の会見で「趣旨と異なり誤解」と述べ、文言修正の予定はないと強弁。ところが同日付の報道によると骨太の方針に「安定的な物価上昇の実現に資する」との表現を追加し、「『安定的な物価上昇』の実現に資する適切な金融政策運営が行われること……」とする修正案が明らかに。 それでも金利上昇に歯止めはかからず、長期金利は9日、一時2・9%と約30年ぶりの高水準に上昇。長期金利の上昇は、企業の借入金利や住宅ローン金利を押し上げ、経済に悪影響を与える恐れがあります。「日銀の金融政策が政府の意向に左右されて、物価高に利上げが追いつかなくなることへの懸念は消えていない」(9日付「日経」)のです。円相場も1日、一時1ドル=162円84銭と39年半ぶりの円安に。17日も162円台が続いています。 ■政府の対応「後手」 城内担当相は10日、骨太原案について「与党からの意見を踏まえ文案修正を調整している」と、修正する考えを明らかに。一連の対応について、ある政府高官は「後手だ」(14日付「日経」)と指摘。二転三転する政権の姿勢に、市場の不信感は高まるばかりです。 ■企業倒産(上半期)12年ぶりの伸び 企業倒産も増えています。東京商工リサーチが8日に発表した2026年上半期(1~6月)の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)は、前年同期比7・1%増の5346件と、5年連続で増加。上半期で5000件を超えるのは、14年(5073件)以来12年ぶりの事態です。 ■人手不足、物価高に中東情勢が追い打ち 要因とされるのは、円安による物価高が中小企業などの経営を圧迫したことです。全体のうち、従業員10人未満の倒産が9割を占めました。負債1億円未満が8割近くに上っています。 人手不足関連の倒産は37・7%増の237件と大幅に増加。特に人件費の高騰を理由とする倒産が急増しました。コスト上昇を十分に価格転嫁できない物価高関連の倒産は27・6%増の439件で、22年以降で最も多くなりました。 中東情勢が不透明な状況が続く中、物価高によるコスト上昇は続いており、秋以降も企業倒産はさらに増えていく可能性が指摘されています。 ■竹谷代表が党首討論で追及「家計の負担軽減せよ」 「円安による家計負担は年平均で約1万6000円に上ると試算されている」「予備費を直ちに使って家計の負担軽減、中小企業を支援すべきだ」 15日の党首討論で公明党の竹谷とし子代表は、高市政権が掲げる「積極財政」の恩恵を受けられない生活者や中小企業などの“目の前の一人”に光を当てた支援の早期実行を訴えました。 これに対して、高市早苗首相は「適切な物価対策はこれまでも打ってきた。これからも打っていく」などと答弁しましたが、具体策を示しませんでした。 討論後、竹谷代表は「将来の経済成長に向けた説明のみで、目の前で苦労している生活者や中小企業に対する視点も具体策も全く示されなかった」との認識を示しました。 ■予算委集中審議、首相の出席時間が過去5年で最短/「国会軽視」の批判続出 今国会では、高市首相が出席する予算委員会集中審議が歴代首相と比べて著しく少なく、「国会軽視だ」と批判されています。実際、衆参両院の合計は32時間36分(17日時点)にとどまり、過去5年で最短。2025年(石破茂首相)は90時間6分、24年(岸田文雄首相)は73時間46分でした(共に通常国会)。 国会で高市首相が厳しく追及されているのは、昨年の自民党総裁選で高市陣営が他候補を中傷する動画をSNSに投稿したとされる疑惑です。 JNN(TBS系)の世論調査(7月)では、高市首相の対応について納得できないと答えた人が51%。共同通信社の調査(6月)でも49.7%が「説明は不十分だ」と回答するなど、「政権運営への疑問に答えず一方的に持論を展開するだけでは、説明責任を果たしたとはいえない」(16日付「毎日」)のは明白です。