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「まるでカフェみたい」/多様な機能の図書館へ/東京・清瀬市
東京都清瀬市の駅前図書館が、今年度からリニューアルオープンし、ドリンクを飲みながら読書を楽しめる空間として「優雅な気分で、まるでカフェみたい!」などと好評を博している。誰もが24時間いつでも利用できる図書の宅配サービスも全国に先駆けて取り入れており、さまざまな事情で足が遠のいている利用者の増加へ“攻め”の図書館運営に挑んでいる。
■自販機設置、ドリンク可
「カフェみたいに、だらだらできて最高!」。本が大好きという30代女性は、これまで読書の時に駅前のカフェを利用していたが、今では駅前図書館がお気に入りの場所に。「手頃にコーヒーが飲め、好きなだけ本を静かに読める。こんなところは他にない」と太鼓判を押す。
4月に一新した館内には、100円前後でコーヒーやココアを提供する自動販売機を設置。サイドテーブル付きのソファ席に加え、窓際にはハイチェアが並ぶカウンター席を用意した。平日でも座席はほぼ満席で、多くの人が購入・持参したドリンクを片手に読書や勉強といった自分の時間を過ごしていた。
■本の無料宅配サービスも
一方、貸し出しから返却まで誰でも無料で利用できる宅配サービス「おうち図書館」もスタート。市立図書館のホームページ上で予約し、早くて翌日には専用バッグに入った状態で自宅に届く。届け先は市内限定で市民が対象。専用サイトから自宅集荷やコンビニへの持ち込みなど発送方法を選び、専用バッグに入れて返却する。
「本は図書館で触れながら直接選びたい」というニーズが今も高いものの、「おうち図書館」による貸出者数は開始3カ月で全体の約17%に。子育て世帯や社会人など広い世代に受け入れられつつある。市内在住の50代女性は「何回も利用した。家に届いて、コンビニに返せるのは便利だ」と語った。
清瀬市が新たな試みに踏み出した背景には、利用者の減少がある。2015年度に比べて23年度の貸し出し者数は新型コロナの影響もあり、約8割に。3月末で市内にある六つの図書館のうち、四つを閉館し、その財源を「おうち図書館」に充てた。市立図書館の山口由希館長は「図書館に訪れることが困難な人をはじめ、少しでも多くの人に図書館サービスが届いてほしい」と新事業に懸ける思いを述べた。
市は閉館した図書館の跡地を児童館のような子どもの居場所とするほか、26年2月をめざし、「南部図書館」を児童館と一体になった複合施設として整備する計画を進めている。
清瀬市議会公明党は13年9月定例会以降、ブックカフェ化を提案するなど図書館の多様な機能の充実を重ねて訴えていた。さらに、図書館の再編に当たっても、閉館する図書館が市民の交流の場となっていたことを踏まえ、市民の居場所としての存続を求めていた。