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ヒロシマから平和構築人材/国連と連携した外務省の育成事業/修了生、国際機関で活躍
外務省の平和構築・開発分野の人材育成事業が20年近く続いている。平和原点の地・ヒロシマで2007年度に試行事業が始まり、09年度から本格実施。15年度からは「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」(以下、育成事業)へと発展している。現在、広島大学が業務受託し、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所と連携して運営している。今月7日から13日まで行われた「ミッドキャリア・コース」の研修を取材した。
「あなたたちは影響力のある人たちだ。どうか多くの人にヒロシマで起きたことを伝えてほしい。そして、よりよき道を見つけてほしい」
被爆者である小倉桂子さんの言葉に熱がこもる。世界10カ国から集まった研修員は真剣な表情で耳を傾けていた。
7日から広島市内で始まった研修には、日本人8人、インドやオーストリアなど海外出身者9人が参加。30~40歳代。国際機関の本部やウクライナなど紛争地で働く。
最初の2日間は、広島平和記念資料館を見学し、小倉さんと交流したほか、ユニタール広島事務所の初代所長を務めたナスリーン・アジミ氏の案内で平和記念公園内を回り、ヒロシマの戦後復興の歩みを学んだ。
その後一行は、広島大学の東広島キャンパスに移動。寝食を共にしながら、5日間にわたり、リーダーシップやマネジメントに関する講義、グループワークを通した切磋琢磨の研修を重ねた。
■世界での人脈形成
このミッドキャリア・コースは15年度に新設された。関連分野で7年以上の実務経験を積み、さらなるキャリアアップをめざす中堅クラスが対象。1週間の国内研修で、幹部登用に求められるスキルの習得を図る。
一方、「プライマリー・コース」も用意されており、これから平和構築・開発分野でのキャリア構築をめざす人が対象。約4週間の国内研修を受ける。このうち日本人の研修生は1年間、海外に派遣され実務経験を積む。国際機関などへの就職に向けて、応募書類作成や面接の指導も受けられる。
両コースとも定員は、日本人と外国人が約10人ずつの計20人程度。「半分を海外出身者にすることで、日本人参加者に世界での人脈形成のきっかけをつくる狙いがある」(外務省担当者)。
育成事業を通じて、国際機関へと羽ばたく人材は着実に増えている。外務省によると、プライマリーとミッドキャリアの両コース合わせて、これまで延べ411人の日本人が研修に参加。そのうち半数以上が国際機関で活躍している。外務省やNGO、学術機関などに所属する人も含めると、日本人修了生の7割以上が平和構築・開発の関連分野で働いているという。
■公明、創設・拡充を後押し
公明党は05年の衆院選マニフェストで国際貢献の専門家1万人の育成を掲げ、08年には事業の定員増を政府に提言するなど、その創設・拡充を後押ししてきた。公明党が昨年発表した平和創出ビジョンには「核軍縮・平和構築の専門家や若手リーダーの育成を支援する」ことを掲げている。
谷合正明・党平和創出ビジョン推進委員長(参院会長)は「世界が力による支配へと傾き、自国ファーストが強まる中で、各国の国際協力分野への支援が削減されている。ここで日本が平和の旗を降ろしてはならない。人材育成を含めた国際協調の取り組みを、今後も後押ししていく」と語っていた。
■(今年度「ミッドキャリア・コース」日本人参加者の声)
■ユニセフ・スーダン事務所勤務の女性
米国大学院を卒業後、日本の政府機関で海外勤務しましたが、「もっと現場に近いところで働きたい」との思いが募り、17年度のプライマリー・コースに参加。ユニセフ(国連児童基金)に入職しました。今の勤務地は、内戦で世界最大の人道危機が起きているスーダンです。車で片道3日間かけて現場へ行き、健康や栄養面などの緊急支援を行っています。
研修を通して、管理職をめざすには、自分らしさを生かしたリーダーシップを探求すること、コミュニケーションスキルを磨き、業界でのネットワークを活用することを学びました。このコースに背中を押してもらえました。
■国際労働機関(ILO)・駐日事務所勤務の男性
日本で弁護士となり、米国のロースクールに進んだ後、国際労働機関(ILO)の駐日事務所に入りました。現在は「ビジネスと人権」の専門家として、政府や経済団体、労働組合などへ助言を行っています。今の仕事にやりがいを感じていますが、海外勤務で自分の知見を試したいとの思いもあります。今後の進路を考えるヒントになればとミッドキャリア・コースに参加しました。
研修では、国際機関の世界中のオフィスで活躍する参加者と一緒に議論を重ね、リーダーシップのあり方を実践的に学べたのはとても刺激的でした。国内外の人権擁護に貢献できるよう、さらに力を付けていきたいと決意しています。