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(エンタメ&スポーツ)デフリンピック、21競技で熱戦
聴覚に障がいがあるアスリートの祭典「東京2025デフリンピック」が、きょうから開催される。日本では初、アジアでは2009年の台北大会に次いで2度目だ。今大会は、世界70~80カ国・地域から約3000人の選手が参加し、21競技で熱戦が繰り広げられる。
■男子円盤投、日本記録保持者の湯上に注目
身長183センチ、体重107キロ。筋骨隆々の肉体は、ギリシャ神話に登場するヘラクレスを想起させる。
男子円盤投で金メダルを狙う湯上剛輝は、生後間もなく先天性難聴と診断され、小学校6年時に人工内耳を装着する手術を受けた。
高校時代に投てき競技を始め、中京大学時代に円盤投で頭角を現した。
デフアスリートの中には、健常者の国際大会で活躍する選手も少なくない。湯上もその一人で、今年5月に韓国・亀尾市で行われたアジア選手権で銀メダル。9月の世界陸上東京大会にも出場した。
今年4月に米オクラホマでマークした64メートル48は日本記録。デフリンピックでは、虎視眈々と表彰台の真ん中を狙っている。
「自分が頑張ることで、誰かの背中を押せるなら、うれしい」と湯上。手話言語をベースに考案された「サインエール」が、“和製ヘラクレス”を後押しする。
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2022年、日本人男子として初めて「デフスポーツマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた選手がいる。競泳の茨隆太郎だ。デフリンピックには、09年台北大会から4大会連続で出場し、金5つを含め19個のメダルを胸に飾っている。
22年、ブラジルで行われたカシアス・ド・スル大会後、一度は引退を考えた茨だが、東京での開催が決まったことで現役を続けることに。「コーチや親、家族など、お世話になった人に恩返しがしたい」。今大会、得意とする200メートルと400メートルの個人メドレーでは、世界新記録での金メダル獲得を目標に掲げている。
■女子卓球、自国開催で/悲願の金なるか亀澤
卓球女子にも金メダル候補がいる。“ママアスリート”の亀澤理穂だ。彼女は09年台北大会以来、4大会連続でデフリンピックに出場し、銀3個、銅5個の8個のメダルを手にしている。
亀澤は、両親も兄もプレーする“卓球一家”。「5回目の出場となる今大会こそ、金メダルをめざしたい」。自国開催に、亀澤は並々ならぬ決意を示している。
家族に目を転じれば、娘の結莉ちゃんは6歳になった。卓球と子育てを両立してきた亀澤は、「金メダルを取って、(娘に)ありがとうを伝えたい」と語っている。娘も同じ思いでいるのではないか。
■期待大きい女子バレー
団体競技では、バレーボール女子に注目だ。13年のソフィア大会(ブルガリア)で銀、17年のサムスン大会(トルコ)で金と実績は十分。昨年6月に行われた世界選手権でも優勝し、デフリンピックに向け、弾みをつけた。
デフリンピックには公平性を期すため、試合中は全ての選手が補聴器や人工内耳を外さなければならない、というルールがある。
コンビネーションが何よりも重視されるバレーボールでは、手話によるサインに加え、選手間のアイコンタクトが重要視される。
身長で強豪国に劣る日本は、守備からの速攻を得意とする。東京での女子バレーボールの金メダルとなると、五輪とデフリンピックの違いはあれ、1964年の東京五輪以来となる。世界を驚愕させた“東洋の魔女”の再現なるか。